第2節「林間合宿 前編」


※微裏表現あり



カルナは私を部屋へ運んだ後、私の荷物を取りにバスへ向かった。
自分が寝る分の布団を取り出す。
……布団を出すだけならいいかな。端に寄せておけば邪魔にもならないだろうし。
そう思って他の人の分の布団も取り出す。


「マスター、荷物を持ってきた」

「ありがとう、カルナ」


カルナから荷物を受け取り、着替える用に持ってきた私服の1セットを取り出す。
先程、相澤先生から着替えておけと言われたのだ。
後で目が覚めたらみんなの分を下ろして置こう。


「カルナ、着替えるから外に……」


出て欲しいな、とカルナの方を振り返りながら言っていた言葉は最後まで続かなかった。


「!?」


間近にあるカルナの綺麗な顔に自分の言葉が最後まで続かなかった理由が分かった。
……カルナにキスされているから、最後まで言えなかったのか。


「……口を開けろ」

「っは……んむ」


さっきより口を開ければ、カルナの舌が侵入してくる。
ふたりっきりの空間に水音と私達の息遣いがはっきりと聞こえ、ここがどんな場所か分かっているから、いつクラスメイトが、女子達が戻ってくるか分からないからこそ背徳感が増す。

無意識に身体が逃げようとすると、カルナが距離を詰めてきた。
後頭部は彼の手で抑えられ、まるで「逃がさない」と言われている様な視線が私を見下ろす。


「んっ、……はぁ」

「っは。……あむ」


自分の背後にたる自分で敷いた布団へゆっくりと押し倒される。
角度を変えながら口付けされ、息継ぎの間がない。

まずい。
ここで止めないと、これ以上をされる可能性がある。

カルナは私の為を思ってやってくれている。彼は良くも悪くもマスターである私に忠実だ。だから私の魔力が一定まで回復するまでこの行為を続けるだろう。

もしそうなれば……流石にそれは誤魔化せない。
後処理をしたとしても、換気が間に合うとは思えない。


「んんぅ……っ、なが、い……」

「!……すまない、マスター」


力の抜けた手でカルナの胸を押し、限界だとアピールするも夢中になっているのか気付いて貰えず。
何とか限界だと伝えると我に返ったようにハッとした表情をした後、シュンとした表情を浮べながら謝罪を口にした。
……私はカルナのこの表情に弱い。


「そんな顔しないでよ。……私の為にやってくれたんだよね? ありがとう」

「……あぁ」


慰めるよう目の前の綺麗な顔にそっと手を添えると、私の手を優しく握り返しこちらを見て儚げに微笑んだ。

いまだに思う。
全てにおいて綺麗が似合うこの英雄が私の声に応じてくれたのか、と。
そんな事聞いても、彼は愚問だと答えるんだろうけど。


「……眠いのか」

「うん。……カルナ、みんなが帰って来る前に起こしてくれないかな……」

「承知した」


段々と意識が薄れていく中、優しい温もりに包まれた気がした。





2022/2/17


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