第12節「期末テスト」
十戦目
苗字VSアクア
今の所視界にアクアの姿は見つからない。
……背景に溶け込んで姿を隠しているのか。
「!」
響く金属音。
何事だと思い振り返ると、そこには聖剣を取りだし攻撃を受け止めていたマーリンと、水で出来た剣を振り下ろしていたアクアが。
「!へぇ、まさか気付かれてたとは」
「ふふん、いくつ死線を超えてきたと思っているんだいッ!」
アクアが持っていた剣が吹き飛ばされ、水と化して消える。
……流石筋力B。片腕だけで吹き飛ばしちゃったよ。まあ向こうも片腕だったけど。
「さ、マスター。手筈通りに」
「うん。___擬態、”ジャンヌ・ダルク”!」
擬態に成功し前を見ると、アクアは自分の目の前に少々の水を生成したとおもえば、水を鋭い針のように変形させこちらに飛ばしてきた。
黒い剣を顕現させ、飛んできたものを全て弾く。
「はあああッ!!!」
一気に距離をつめ、懐へ入る。
狙うは足下。……そう、火をぶつけるのだ。
「ははっ、効かない効かない!」
「……想定内!」
剣を再び振り下ろし炎を飛ばそうとした瞬間
「!!」
「知ってるだろ? 僕が身体を自在に液状化させられるのも」
剣に刺さるアクアの身体。
まさか自ら剣に刺さりにくるなんて思わないじゃない……!
「っ、くッ!!」
「動揺しちゃって。敵は個性をただぶつける奴ばかりじゃないよ。こうやって心理的に攻撃を向けてくる者もいる」
魔力を剣へと流し、炎を発生させたが一瞬にして消されてしまう。
……この程度じゃ全部消されてしまうか。なら!
「キャスター!!」
「はいはい。___こういう所でどうかな?」
花弁が私の周りを漂う。
……マーリンによる強化魔術だ。彼のサポートは本当に素晴らしいのだ。
アクアから強力な威力の水が放射される。
共通認識として、水は炎に勝てないって言われているけれど……。
「これでどう?!」
___火だって水に勝てるんだよ!!
突き出した手から放たれた炎は、自分が思っている以上の威力が放出された。
その炎は水をあっという間に蒸発させ、アクアに直撃した。
「……」
静寂。
蒸気が辺りに漂う。
……これくらいでダウンするような人ではない事を私は知っている。
「……!!」
鋭い敵意。
咄嗟に反応し、旗で防御する。
「楽しくなってきたよ___フェイ!!」
蒸気が晴れ現れたのは、今まで見た事の無い好戦的な表情を浮べたアクアだった。
相手から視線を逸らさず、私は先程マーリンに話した策を思い浮かべていた。
アクアを無力化する為、私が考えた策。
それは『アクアの水分を奪う』という策だ。
アクアの個性の源は自身の水分。
私の個性の源が魔力であるのと同じで、必ず限度というものがある。
その水分を奪うためにはどうすればいいか。……そう、燃やせばいい。
火はありとあらゆるものを燃やし尽くす。水だって燃やせる。表現はちょっと違うけどね。
しかし……
「くッ!!」
「どうした?僕はまだこんなに元気だよ?」
いつになったらその限度が来る?
マーリンの力を借りて何度も強化された炎を浴びせているが、いつまでたってもその時がこない。
「……!マスター、一度引くんだ」
「……分かった」
マーリンからの援護攻撃により土煙が立ち、アクアの視界を奪う。
その隙にマーリンの元へと後退する。
「……何かあった?」
「君も気になっているだろう事が分かったんだよ」
「それって、アクアの個性の話?」
マーリンは私の言葉にコクリと頷いた。
なんと、アクアが一向に隙を見せない理由が分かったらしい。
マーリンはアクアの攻撃をバリアで防ぎながら話し始めた。
「先程、アクアの個性が彼の水分で成り立っていると言ったね」
「うん」
「これはこの場所をどうにかしないと勝ち目がないよ」
「どうして?」
「周りを見てご覧?」
マーリンに言われた通り、周りを見渡す。
辺りは特に変わらず水地が広がっている。
……ひろがって?
「!!まさか!」
「その通り。この水辺がある限り、彼は無敵だ」
「そういう事か……!」
水がどこかに存在する限り、アクアを倒す事はできない。
……一体どうしたら?
「! ねぇ、キャスター」
「なんだいマスター」
マーリンが首だけをこちらに向けて私を見る。
……マーリンのお得意な”アレ”を使えば、この状況を打開出来るかもしれない!
「……先程言った言葉を訂正しよう。君は私達をよく見ているよ」
「当然。___みんなを理解し扱えてこそ、マスターだからね!」
チャンスは一回きり。
……外せばこの演習試験、不合格になるだろう。
「キャスター……用意はいい?」
「勿論」
今の状態ではアクアを無力化する事ができない。
……この一瞬だけでいい。
ジャンヌ、貴女の”全ての力”借りるよ!
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2022/2/16
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