第12節「期末テスト」



「ふむ、なるほど」


呼び出しておいて、まだ呼び出した理由を話していなかったため、マーリンに試験内容を伝えた。
そして、その試験内容で彼をペアにしたいことを伝えた。


「急に呼び出してごめんね。もう確定されちゃったから断る事出来ないんだけど……」

「構わないさ。君のお願いは何でも聞くとも」


ニコリと笑みを向け了承をしてくれたマーリン。
期末テストの内容を説明した所で、やることがないのでモニタールームに行くことした。
私達の番は10戦目。峰田君と瀬呂君ペアの後で……いーちゃんとかっちゃんペアの前だ。なので試験まで暫く時間がある。

まさかあの二人がペアだと発表された時は驚いたよ。
でも本人達にはそれプラスに驚きな事が1つある。……それは対戦相手がオールマイト先生だと言う事だ。
まさかのNo.1ヒーローが相手なのだ。
だから少しでも協力する事を考えて欲しかったのだが……。


「……心配かい?彼らが」

「あはは……。バレバレだった?」

「君はあの子達をよく見てるからねぇ」

「幼馴染だもの。……三人仲良くしたいじゃない」

「でも肝心の彼があんなだと……ねぇ?」


思い出すのは数日前…期末前の出来事。



『個性の使い方、ちょっと分かってきたか知らねーけどよォ……。テメェはつくづく俺の神経逆なでするなァ……!』

『体育祭みてェな半端な結果はいらねぇ。次の期末なら、否が応でも優劣が付く。___完膚無きまでに差付けて、テメェぶち殺してやる!!』



この言葉はいーちゃんと焦凍君に向けてかっちゃんが言い放った言葉だ。
一番この言葉を向けられているのは、いーちゃんで間違いない。
……私に向けられなかったと言う事は、“そう言う事”なのだろう。


「所で策はあるのかい?」

「残念ながら全く……。だからクラスメイトの試験を見て少しでも参考にしようと思ってる」

「そうかい。ヒーローという立場を考慮しなくて良いのなら、私が考えてもいいけど」

「いや、私が考えるよ。これもヒーローとして必要な知識だから。……サーヴァントの力は簡単に人を殺せるし、下手したらヴィランより街を破壊してしまうからね」

「なら君の判断に委ねることにしよう。前世むかしのようにね」

「久しぶりにちゃんとした指揮をするとなると……場違いなの分かっててもちょっと楽しみになっちゃうね」


マーリンと話していたらあっという間にモニタールームの前に着いてしまった。
しゅん、と音を立て近未来的なドアが開く。


「あ、名前ちゃん」

「やっほー、いーちゃん」


そこには私の幼馴染の一人、いーちゃんがそこにいた。


「やあやあ緑谷君、久しぶりだね〜。私の事、覚えてるかい?」

「…………あぁっ!?あの時の!?」


いーちゃんはマーリンをじーっと見つめた後、思い出したのか大声を上げた。
前に何となくでしか覚えてないって言ってたもんね。


「いーちゃん、キャスターの事あんまり覚えてなかったらしいよ」

「名前ちゃん!?」

「別になんとも思ってないよ。……別に男に好かれても嬉しくないし」

「は、はぁ……?」


マーリンの態度に完全に戸惑っているいーちゃん。
覚えてなかった事を申し訳ないと思っていたようだけど、人間関わりが無くなれば忘れる者だ。強烈に記憶に残っていない限り、ね。


「気にしなくていいよ。彼、女好きなんだよ」

「心外だなぁ。こんなにもマスター一筋なのに」

「どうだか」

「うぅ……マスターが冷たい……っ」


前世でカルデアに召喚されたマーリンと関わりの深い人物に聞いた話なのだが、所謂そう言う事で結構色々やらかしているらしい。
遠くで小さくなってシクシクと泣いてる(フリ)マーリンは放っておいて、みんなの試験を見学しよう。どうせそのうち復活するだろうし。


「ね、ねぇ名前ちゃん……いいの?」

「いいのいいの、あれ嘘泣きだから」

「え」


前にマーリンが言っていたのだが、彼は感情というものが分からないらしい。
彼が見せている感情は“夢”で取得したものの一部でしかない。
だから、あーやって泣いているフリをしているだけだ……と、思う。

心の優しいいーちゃんはマーリンを気にしているのか、あたふたとしている。
……あーもう、いつまでくだらない茶番やるつもり!?


「いつまでも泣かないでくれる? 恥ずかしいから」

「……こんな状態じゃなければ、今すぐにでも……」

「?何ブツブツ言ってるの?」

「マスターが冷たいのがいけないんだーっ!」

「自覚があるなら日頃の行いを改めなさい!?ほら行くよ!」


何かブツブツ言っていたみたいだが、声量が小さすぎて聞き取れなかった。
まあどうせくだらない事を言っていただけだろうし、気にしなくてもいいか。


「この世界で僕は死んだ事になっているのか、いけないねぇ……。つまり、元の世界・・・・と離れてしまった今この状況は、あの子と共にアヴァロンへ帰れないという事じゃないか。はぁ……感情というものが分からないはずなのに、どうしてこんなにも彼女のことで悩んでしまうのか……」


また何かを呟いていたマーリンの声を、背中を向けていた私は聞き取る事がなかった。





2022/2/4

加筆修正
2023/01/21


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