第7節「ヒーロー殺しステイン」
辺りで爆音が轟く中、建物の屋上を飛び移る影あり。
その軽やかな動きの正体は、とある英霊に擬態した名前だ。
色素の薄い髪が月の光に反射する。
「確かこの辺りだったはず……!」
名前は先程緑谷から送られた位置情報を頭の中で浮べながら、辺りを見渡す。
爆音やら燃える音、サイレンの音で聞こえづらいが、微かに人の声が聞こえる。
その声を名前は逃さなかった。
「……!いーちゃんに飯田君、焦凍君まで……!」
声が聞こえた場所へ名前が向かうと、そこにはクラスメートである緑谷、飯田、轟が。
奥にはプロヒーローである『ネイティブ』の姿も確認出来る。
対峙しているのは敵で間違いないだろう。轟が炎を纏わせているのがその証拠だ。
緑谷、飯田、ネイティブは地に伏せており、立っているのは轟のみだ。
やはり緑谷から送られたメッセージはSOSで間違いなかったようだ。
「……!」
敵の手元が一瞬光ったのを名前は見逃さなかった。
名前は咄嗟に腰に装備しているナイフへ手を伸ばし、そのまま落下していった。
飛び込んでいくは敵と轟の間。
「っ!!」
___響く金属音。
その金属音の発生源は敵と名前の両者が持つ刃物からだ。
「名前……!?」
「名前、ちゃん……?」
「苗字君……?」
「何かと思って来てみたら……。来て正解だったよ……!」
自分の後ろにいるクラスメートにそう声を掛けながら、名前は敵が持つ刀を弾く。
敵は飛び上がって後退したのを確認した後、名前は後ろを振り返った。
「___応援に来たよ!」
色素の薄い髪が振り返った衝撃で揺れる。
月の光で照らされた瞳はペリドットのような輝きを放っていた。
「俺の刀を弾くとは……面白い」
敵の声に反応し、名前はナイフを構えて相手を睨む。
名前は月の光で姿が見えた敵を見て、少し目を見開く。
「貴方まさか……ヒーロー殺し?」
「如何にも。その姿……英霊に擬態しているのか。彼奴が言っていただけあるな」
「!」
ステインが放った言葉に名前は驚きの反応を見せる。
そしてある可能性を思い浮かべた。
「まさか、敵連合と何か関わりがあるの?」
「どうかな」
名前の質問に答える気はないようだ。
ステインは落下してくる刀をキャッチし、それを構えながら名前へ接近した。
2021/12/10
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