第5節「轟焦凍」



2日間の休日が明け、登校日



「大丈夫かい、マスター」

「う、うん……」



思っていたより人が多く、今日の護衛として来てくれたアーサーとは密着する形になっていた。
壁側に私を寄せ、守るように包み込まれているのだが如何せん顔が良い為、直視されると困る。すっごく困る。

しかし、移動中もそうだったけど他校生の視線が痛い。特に女子。
アーサーは現代に溶け込めるよう、武装状態ではなく現代風の服装へ姿を変えている。やはり、イケメンは何を着ても似合うんだね……。



「君、雄英の苗字さんだよね!」

「見てたよー!可愛いのに、戦ってる姿がかっこよくて惚れ惚れしちゃった!」

「あ、ありがとうございます……?」



これも、今日登校中に多くあった事だ。
体育祭が全国中継と言う事もあり、当然あの試合を見ている人は多くいるわけで。だって雄英体育祭ってオリンピック並みの人気なんでしょ?

そうそう、私の体育祭の成績なんだけどベスト4らしい。
本来なら常闇君と試合をして、ベスト3の座を奪い合うはずだったんだけど、私が轟君との試合の後、体育祭終盤程まで目を覚まさなかった為、常闇君が3位に上がったそうだ。

できれば叩き起こして欲しかったんだけど、そのことを言ったら四郎に怒られた。
「もっと自分を大事にして下さいよ……っ」と言っていた四郎の綺麗な瞳に涙がうっすらと溜まっていたので何故か罪悪感を感じてしまった。
普段大人びているけど、確か四郎って17歳没なんだよね?生前の私と比べたら年下なのか……。



「ナマエ?」

「ひゃい!?」



この視線から何とか意識を逸らしたくて、別の事を考えてたのに!!
そう思っていると、近くにいた乗客の人がニコニコしながら話しかけてきた。



「その金髪のにーちゃんは彼氏かい!?」

「ち、違います!」

「雄英生徒の恋愛事情!気になるわね!!」



遂にアーサーについて話を振られてしまった……。
周りから「大学生かな!?」やら「外国の人かな? かっこいい……!」と聞こえる。なるほど、アーサーは大学生に見えるのか……って現実から逃げるんじゃない、私。
……彼は何と答えるのだろうか。って、何気になってるんだ私!
確かにアーサーは私が初めて契約したサーヴァントだし、仲が悪いとは思ってないけど……!



「じゃあにーちゃんはどう思ってるんだい!?」

「……いずれ、そのような関係になれたら良いですね」

「え、あ……っ、セイバーっ!!」



アーサーの回答に思わず彼の名を言いそうになった。
結局、同じ車両に乗っていた乗客の人にからかわれながら学校まで乗車するはめに……。
下車したときの私の顔は酷かったと思う……。
見てないからわからないけど。



***



アーサーと気まずい空気になって……という事は無く、普段通りに会話しながら登校。
騎士王の名は伊達じゃないね!

途中から雨が降り始め、持ってきていた傘に二人で入る。大きめな傘だったのが幸いにも助かった。……まぁ、途中ですれ違った恐らく体育祭視聴者(知らない人)にからかわれてしまったけど。

だってアーサー否定しないんだもん!!キラキラスマイルも見せるし!!
あぁ、変な噂が立たない事を祈るしかない……。



「苗字ー!おっはよー!!」

「わっ、三奈ちゃん!お、おはよ」



教室に入った瞬間、三奈ちゃんに抱きつかれる。何か段々スキンシップが上がってきてる気がする。
私の後ろから入ってきたアーサーを見て、三奈ちゃんがあっ!!と声をあげる。



「別のイケメンだ!!!」

「別のイケメンって……」

「だって、いっつも美人かイケメンしか連れてないじゃん」



確かに彼らは顔が良い。いや、サーヴァントってうちのサーヴァントに限らず顔が良い人ばかりなんだよなぁ……。
なーんて事は言えず、そうだね〜…と適当に返しておく。



「ケロ、あの人何処かで見覚えがあるわ」

「え、梅雨ちゃんどこで見かけたの!?」



梅雨ちゃんの発言に透ちゃんが反応する。

サーヴァントのみんなに特に行動制限は掛けていない。だから私がこうして学校に行っている間は好きな場所に出かけていたり、家で過ごしていたりとそれぞれだ。因みに家にほとんどいないのはギルである。やっぱりアーチャーだからなのかしら。



「街とかじゃなくて……学校だったわ」

「……あ、分かったかも」



悩む梅雨ちゃんに私はある事を思いついた。確か梅雨ちゃんって私と同じ試験会場だったよね?



「梅雨ちゃん、見かけた場所は試験会場じゃない?」

「試験会場?」

「うん。試験の時、私彼に擬態してたの」



ね?と同意を求めるとアーサーは頷いてくれた。
梅雨ちゃんは私とアーサーを交互に見た後口を開いた。



「そうね、そうだわ。金髪の姿だったわ」

「凄いね梅雨ちゃん。まさか擬態主のサーヴァントを見抜いちゃうなんて」

「見抜いたというより、既視感を感じただけよ」



今度、誰に擬態しているかっていうゲームして見ようかな。
髪色なら結構被ってる子多いし、面白くなると思うな〜。





2021/07/25


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