夜も大分耽り真夜中。 寝付けない。ただそれだけの理由でリヴァイは車を出して恋人、エレンの住むマンションへと向かった。 車窓からの景色に一切の興味は示さず、幾度となく通った道を淡々と過ぎる。ちらりと車内時計に目をやると、その時間は間もなく三時。 (エレンのやつ寝てるか…それとも、) 目的のマンションが見えてきたとこで思考を遮断。考えても仕方がない。何故ならリヴァイにとって、「起きてたら上がり込む。寝てても上がり込む」最終的に同じ答えしかないのだ。 駐車場に車を止め、鍵を掛ける。肌を刺す寒気に動じる事はしなかったが、キーケースを握ったままポケットに両手を突っ込んだ。淡々と階段を上る。そして目的としていたドアの前で足を止め、忍ばせていた右手を出して呼び鈴を鳴らした。 「……」 応答は無い。 「俺の呼び出しに出ないとは良い度胸だ…」と心中で舌打ちし、先程仕舞い込んだキーケースを取り出す。そしてエレンの部屋の合鍵を差し込んだ。 静かに扉を開けると、直ぐ目に飛び込んできた光景に一瞬固まった。 「…っの、馬鹿が」 リヴァイがそう口にするのは無理もない。部屋の主はあろう事か玄関先で地面に這いつくばった形で熟睡していたのだ。しかも、靴を履いたまま。 「おい、起きろ。寝るならベッドに行け。玄関で寝るな」 「……」 (完全に熟睡してやがる…) 座り込み、眠る恋人の前髪を掴んで呼び掛けるが一切の反応を示さない。そこでリヴァイが気付いたのは、気持ち良さそうに眠るその顔がほんのり赤く染まっている事だ。 「…くそ、誰だこいつに酒飲ましたのは」 リヴァイは溜め息一つ吐き出すと、靴を脱がせてから己の肩にエレンの左腕を回して立ち上がる 。自分より何センチも高い身長の恋人に押し潰されそうになりながらも、何とかベッドまでたどり着くと勢い任せと言わんばかりに乱暴に放り投げた。 「手間掛けさせやがって…」 「…リ、ヴァイ…さ…?」 投げ飛ばされた衝撃で起きたのか、エレンが目を開けた。しかしまだ半分夢の中なのか、その焦点は定まっていなかった。 「玄関で寝る奴があるか。それともベッドと床の違いが分からないぐらい馬……っちょ、なっ…!」 説教を垂れ込もうとしたその瞬間、右手を掴まれて物凄い勢いでベッドへと引きずり込まれた。逃げようともがいても背中にがっちり両腕を回されてしまったからには身動き一つできない。 「この酔っ払い!離せ!」 「んー…リヴァイさんの匂いがするー…」 エレンはリヴァイに回していた腕に更に力を込め、首筋へと顔をうずめた。愛しの人の匂いに安心したのか、ふにゃりと笑みを溢し、ふふ、と声を上げた。 「離せ!」 「リヴァイさぁーん、好きです、好き」 「…ッ?!」 ちゅっ、と目の前のあった露な額にエレンは唇を寄せた。普段され慣れないその行為にリヴァイは思わず身震いをした。 「いい加減にしないとお前…!」 「……」 「……おい」 「……」 「……」 暫くの沈黙。 しかしそれを先に破ったのはエレンの寝息であった。規則正しく発せられるその寝息に、リヴァイは盛大な溜め息を吐き出した。 (まさか酔っ払っているとは誤算だった…でもまぁ…) お酒が入ってる事もあってか、いつもより高いエレンの体温が心地良い事に、場が静まってから気付く。だが、それだけではない。耳にダイレクトに伝わる相手の鼓動が何だか妙に安心できた。 (今日はこのまま眠ってやるか…) 愛する者の腕の中で眠るのもたまには悪くない、そう思いリヴァイはゆっくりと瞼を閉じた。 酒は飲んでも、 (ん、あれ…。朝?………え?!り、りりりリヴァイさん?!) (うるせぇ…まだ眠い…。黙ってろ…) (は、はいっ!) 2011.12.17 |