あかん鬱すぎる。何で自分だけがこない盛り下がっているんやろう。今の俺は将来に希望を見出だせない不幸者…世界一の不幸者と言っても過言じゃないぐらいやわ。と、憂鬱を一息で言ってしまえそうな程、志摩は将来に不安にを抱えていた。

高校三年生の夏休み。これからの人生をどうするか、自分の将来を大体の人間は此処で一度立ち止まって決めるのではないのだろうか。
今、絶賛負のスパイラルに陥っている少年、志摩も将来の事について悩んでいた。

志摩は絵を描くのが幼い頃から好きだった。夢に夢を見ていた幼き日は、漫画家になりたいと思っていた。だが、一年、また一年と時を刻む内に夢だけでは生きていけない、生きていくにはちゃんと収入のある職に就かなくてはならない…その事実を知ってしまった。

しかし絵を描く事は辞めたくなかった志摩は、高校入学と同時に美術の予備校に通い始めた。予備校に通いながら将来をゆっくり決めればいい、そう考えていた。


(そうや…あの時、二年前の俺の考えは浅はかやったんや…)


いざ、高校生活と予備校に通う日々が始まってみたら、将来を考える暇なんて微塵も無かった。大変なのは予備校の方で、膨大な量の課題に他の生徒達のレベルの高さ。自分の好きな「絵を描く事」は、如何に趣味程度のものだったんだ、と入って直ぐに恥ずかしい思いをした。
それからというものの、「他の生徒には負けへん」と闘志をひそかに燃やし、絵に打ち込んだ。


そして気付いたら高校三年生の夏休みまで来てしまった。


(ほんま俺は今まで何してたんや…俺は絵関係の仕事をしたいんか?いや、絵でやってけるのは一部の才能持つ人間だけや。俺には到底、絵を一生の仕事にできる訳あらへん)


頭では分かっているが実際のところ、志摩にはやりたい仕事がこれといってある訳では無い。だからどうしたらいいのか分からず、予備校にダラダラと目的を持たずして通う日が続いていた。


(予備校に通ってる奴らはみんな美大目指してるのばっかりやしなぁ…俺も美大に通えばいいんやろか…)


結局今日も答えは出る事なく、志摩は予備校で使っている大きなショルダーバッグを携え、いつも予備校帰りに寄るカフェへと足をはこんだ。





- end -



2011.07.30


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