スキ、キス、スキ?の微妙に続き。





あれから奥村燐の面白さの味を占めた僕は、すっかり彼を僕の玩具の内の一つとして楽しんでいた。
さて、今日は何して遊びましょうか。
まずは僕の夢を詰めたリュックを背負って、燐の所に向かいましょう。





可愛い






「っだー!お前今日もまた来たのかよ!」
「暇です、だから遊びましょう」
「だからな、俺は遊んでる暇なんて」
「お菓子をたくさん持ってきました」
「よし、しょうがねぇな。遊んでやろう」


ここでリュックを降ろし、チャックを開けて思い切り逆さまにした。中からは、僕が詰めたチョコやら飴やらポテチの袋やら…ありとあらゆる種類のお菓子が音を立てて落ちる。


「おま、深夜のお菓子パーティーでも開くつもりかよ」
「燐が何が好きなのか分からないので、ありとあらゆるパターンのお菓子を持ってきてみました。さ、食べましょう」


ポテトチップスの袋を掴んで口を開け、燐に差し出す。何だかんだ言いつつも、手を伸ばしてきた燐にちょっとした意地悪をすべく、もう少しで手が袋の中に入る間際で前に出したポテトチップスの位置を左にズラしてみる。
燐はムッとした表情で一瞬こっちを見て、もう一度手を伸ばす。今度はポテトチップスの位置を先刻とは逆の方へ移動させた。


「おい」
「何です?」
「お前俺にお菓子食わせる気、無いだろ」
「そんな事はありませんよ。ホラ」
「んぐっ!」


燐の代わりに僕が袋に手を入れて、チップスを一枚掴む。それを燐の口へと押しつけた。拒否権はもちろん、彼には無いので無理矢理にそれを押しつける。抵抗できないと分かったのか、燐は素直に受け入れて食べ始めた。暫く口をもごもごさせると喉を上下させて飲み込んだ。


「さて、無事ポテチを食べられたとこで次に行きましょう。燐はどれが食べたいですか?」
「んー…そうだな…」


がさごそと僕が持ってきたお菓子の山を漁る燐は、めぼしいものを見つけたのか急に表情が笑顔になった。燐が手にしていたモノは、中心部に穴の開いた丸いラムネ(六個入り)


「ラムネですか」
「ふふーん、これは普通のラムネじゃないんだぜ」


燐は一つラムネを取り出す。口に運ぶものの食べたりはせず、表面部分を僕の方に向けて上下の唇で挟む。軽く息を吸って吐くと面白い事に、ピューピュー、と音が出た。


「そのラムネの穴は音を出すためにあったんですね」
「いや、音を出すためかは知んねーけど音がでる面白お菓子。知らなかっただろ?」
「はい、音がでるなんて思いもしませんでした」


僕も燐の真似をして、ラムネを唇で挟んで息を吹きかけてみる。同じようにラムネからはちゃんと音が出た。


「これは凄い、今夜兄上に自慢してみます」
「おう、しとけしとけ」


得意げに笑う燐は、今度はポッキーへと手を伸ばしていた。欲張りにも、三本一気に口に入れてボリボリ食べ始める。手を使わずに口だけを動かして食べる燐を見て、僕はある事を思い出した。


「そういえば、ポッキーにまつわるキスの話しって知ってますか?」
「んあ?」
「ポッキーゲームは分かります?」
「おう」
「ポッキーゲームでポッキーを折らずに食べ切れた人は、キスが上手いそうです」
「ふぅん」


さほど興味が無いのか、燐はまたポッキーを食べ始めた。食べ途中のそれを右手で奪い顔を近づける。


「してみませんか、僕とポッキーゲーム」
「はっ?!」


奪い取ったポッキーを口に含んで燐の代わりに食べきり、新たに一本ポッキーを取り出す。そのままポッキーはどうもせずに、判断を燐に任せてみる。


「ばっ、ばっかじゃねーの。そんなのするかっての」
「そうですか、それは残念です。では、燐が自信がついたであろう頃に、また誘ってみます」
「ん?今何て言った?」
「残念です」
「じゃない、その後」
「あぁ、燐が自信のついた頃に、ですか?」
「誰が自信無いって言った」
「言わなくても話の流れ的にそう捉えられます。自信が無いからしない、違いますか?」
「んだと…?」


僕の言葉選びにまんまと引っかかった燐は、食ってかかってきた。本当に彼は扱いやすくて助かる。


「さっさとポッキーくわえろ。燐様の濃厚なキッスでメロメロにしてやる」
「そうですか、楽しみにしています」


言われたとおりポッキーをくわえて待機。燐は僕がくわえている反対側の、ようするに彼が口にするカ所をまじまじと見つめたまま動かない。両手は拳をつくり、強く握りしめている。


「い、行くぞ」
「はい。いつでも」


燐の喉が上下する。口の中に溜まりに溜まった唾液を飲み込んだのだろう。そしてポッキーを口に入れ、ゆっくりと食べ始めた。
そのまま順調に行ってると思われたが、中間部まで来た所で折れてしまった。


「あーあ、折っちゃいましたね。という事は、燐はキスが下手という事になりますね」
「なっ?!も、もっかいだ!」
「何回やっても結果は同じだと思いますけど」


慌てる燐にチャンスを与えるべく、ポッキーをもう一本取り出し口に運ぶ。再び、燐の口がチョコ部分に触れる。そして徐々に僕たちの距離が近くなる。先程中間部で折れてしまった中間地点も難なく通過。
三センチ、二センチ…一センチ。
あと数ミリと迫った所で、僕は自らポッキーをかみ砕き燐の後頭部に手を回して強引に口づける。唇をこじ開け、舌で彼の舌を絡めとると、ほんのりチョコの味が口の中で広がった。


「?!」
「ん、いい加減僕もチョコ部分が食べたいですよ。持ち手の部分をくわえてる僕の身にもなって下さい」
「だからって、お、おま…!」
「そういえば燐、ポッキーゲームでポッキーを折らずに食べられたらキスが上手い何て話はありません。さくらんぼのヘタを口の中で結べたら、って話はありますけどね」


「もっとも、僕は口の中で結べますけどね」と、付け加えた。今度はさくらんぼの挑発に乗った燐は、「さくらんぼ買ってくる」とだけ言い残して、勢いよく部屋から出て行ってしまった。

今日はまだもう少し、燐で遊べそうです。





- end -



リクエスト:アマイモンが燐をいじめたくて仕方が無い
2011.07.12

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