正十字学園に通う生徒は皆、寮生活だ。実家みたいに個人個人に部屋が設けられている訳では無く、生徒複数人で一つの部屋を共有していた。
もっとも、訳あり生徒な奥村燐を兄として持つ僕は、特別に僕達だけ寮棟自体が一般の生徒とは別だった。
たまに兄さんは夜中にクロを連れて、遊びに行く。そうなると部屋には僕一人。その隙を狙って、恋人の…志摩くんが部屋に訪れる事は珍しくなかった。


夜もふけた頃。兄さんが出掛けたのをメールで志摩くんに教えると、彼は直ぐにやって来た。そしていつも通り二人でベッドに乗り上げてイチャつく。
最初は触れるだけの口付け。それが段々と深まり舌を絡め合う。
角度を変えて口付けながら、ゆっくりとベッドへ押し倒される。
自然な流れで僕の太股に跨がる志摩くんは、身を屈めて僕の唇から首筋、胸へと唇を移動させた。
必要以上に胸の飾りを舌で転がしつつ、右手は僕の中心部をズボンの上から撫でたり引っ掻いたりする。
その刺激がもどかしく感じ始めると堪らず膝と膝を擦り合わせ、志摩くんの手を足で挟み込む形にしてしまう。
志摩くんの中ではこの足の動きが目印なのか、膝を擦り合わせ始めると僕のベルトを外しズボンを脱がしに掛かる。
器用にベルトが外され、下着と一緒にズボンを半端な位置までずり下ろされた。
いつもだったらこのまま直接僕のに触れるはず。しかし今日は違っていた…。





です、僕の人が態です。





「あんな先生、今日は是非とも試したい事があるんですけども…」
「試したい事?」


聞き返すと志摩くんは自分のお尻ポケットに手を入れて、直ぐに何かを取り出した。
手にしていたのは剃刀。世間的に凶器とされるそれを握る志摩くんに、僕の顔は青ざめた。


「流血沙汰プレイは少し…いや、かなり遠慮したいんですが…」
「え?…っあ!違いますて!そういう生命に関わるもんとちゃいます!」


更に志摩くんはポケットから小さなビニル製の袋も出した。よく街中で配ってる、シャンプーだとか化粧水のサンプルの様な。そんなやつだ。それの口を破って開けると、手の平らに中身を全部出した。見た感じ、白くトロみを帯びた液体。そして、あろう事か液体を乗せた手の平を僕の股間へと擦り付けてきた。


「……?!」
「大事な先生に怪我させたらあきまへんからなぁ。ちゃんと前準備をですね…あ、この塗りたくってるのは乳液ですから安心してください。変なもんじゃないです」


液体の正体が分かったとこでペタペタと乳液を擦り込ませてくる。嗚呼、妙な感触で気持ちが悪い。……この変な刺激にすら反応するのか、ほんのり勃ち始めた自分の性器が憎い。これは僕のせいじゃない。志摩くんが悪い。


「こんなもんですかね」
「一体何する気なんですか…!」
「んー…センセ、怪我したくなかったら大人しくしててくださいねー」


そう告げると志摩くんは剃刀をのキャップを外した。剥き出しになった刃の向こう側で、にんまりと笑う恋人の表情がもはや僕には凶器だった。
何がそんなに楽しいのか、鼻歌を奏でる彼は剃刀の刃を、ぴとっと僕の下腹部に宛がった。


(……!ま、まさか!)


予感的中。
剃刀は僕の下の毛の一部を剃り落とした。


「な、な……!」
「おっと動かんでくださいよ。手元狂って先生の息子を、すーっぱりとやっちゃうかもしれませんしね」
「っ…」


志摩くんが今やろうとしている事は困る。でも僕の大事な部分に刃が食い込むのはもっと困る。半ば無理矢理な束縛に僕は怪我をしないよう、じっとしているしかなかった。


「そうそう、そのままじっとしてて下さいねー」
「後で覚えて、ろ…!」
「えー?そんなん言われましても」


困りますよ、と笑い飛ばす志摩くんに心底イラッとした。
「何で君が困るんだ。困ってるのは僕だ!」凄くこれを声を大にして言いたかった。





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2011.06.10


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