正座をしたピンク髪の少年、志摩と椅子に座り足を組む眼鏡の少年、雪男。二人は生徒と教師の関係と同時に、恋人同士であった。
今日は唐突に、志摩は真剣な表情で雪男の部屋を訪れていた。


「えっと…志摩くんは馬鹿なんでしょうか」
「はい、重々承知でございます。なのでお願いします。素股を…」
「いえ、だからそういうのはちょっと…」


先程からこの会話が何度繰り広げられた事か。正直、雪男は「本当に志摩はどこかおかしくなってしまったのではないか」と心配していたが口には出さないでいた。
何故なら事を穏便に収めたいから。余り感情的な面を人様に見せたくない雪男は、感情を抑えようと必死だった。


「そもそも何で嫌なんですか。理由があるなら教えてください。正統な理由なら俺も諦める事できます」
「理由って…」


『君のそんな変な性癖に付き合うのには僕は耐えられない!』


(何て言ったら志摩くんの存在理由までを否定してしまう気がする…)


雪男は考えた。いかにこの状況を上手く切り抜けるかを。しかし良い言葉が見つかる前に、志摩に先手を取らせてしまった。


「直ぐに理由言えないんやったら、別にこれと言った決定的な否定理由は無いって事ですよね」
「えっと…」
「それともあれですか。俺自身が嫌になったんやないですか」
「そ、それは無い!本当に!」
「せやったら、俺の要望…聞いてもらえませんやろか…」
「……」
「先生、」


瞬間、雪男の下唇を志摩がペロリと舐める。「分かりました。少しだけですよ」と許しを出してしまった雪男は、なんて自分は彼に弱いのだろう。そう思った。





◇ ◇ ◇





壁に手をついて刺激に耐える雪男の背に被さり、志摩は雪男の太股をじっくり味わう。「少しだけって約束したのに!」なんて嘆いても今さら遅い。壁に体を向けられては自ら動く事はできず、志摩にされるがままに翻弄される。
中心部は左手によってトロトロにされ、首筋は舌に舐め上げられ、太股に至っては志摩自身を挟み込んでいるのだ。
初めての状況と、いつもの熱が疼く刺激とが混じり合い、情報処理が追いつかない雪男は今にも泣きだしそうだった。


「先生、太股を使われる気分はいかがですか?今日は中に入ってないんで喋れますよね?」
「ん、最悪っ…!」
「そーですか、じゃあ…こんなんしたらもっと最悪ですか?」


言い終わると同時に、雪男の肩を掴みくるりと反転させる。予想以上に蕩けた雪男の表情に志摩はごくりと唾液を飲み込んだ。


「あは、せんせ中に入れてへんのにめっちゃエロい顔しとる」


けらけらと笑いながら茶化す志摩に、雪男は羞恥を感じ頬から耳まで赤色に染め上げた。そんな反応が面白かったのか、雪男の太股を撫で上げ志摩は更に言葉を続けた。


「先生の太股、ぐっちゃぐちゃに濡れてますね」
「誰の、せいですか」
「俺ですよね。そんな拗ねんといて」


眉間にシワを刻ませて睨み付けてくる相手がこれ以上拗ねてしまわぬよう「そんな怖い顔をしてもそそられるだけですよ」といった、からかいは言わず、代わりにちゅっと額に唇を寄せた。


「続き、してええですか?」


ふざけた様子無く、至って真剣に、誠実に。真っ直ぐ見据えて尋ねた。先程と打って変わって真面目な志摩に動揺を隠しきれなくなり、雪男は下を向いた。


「続きするなら、ちゃんといつも通り……が良い、です」


恥じらいながらもしっかりとした口調で言葉を紡ぐ雪男にいとおしさを感じた志摩は、ぎゅっと彼を抱き締め、今度は少しだけ背伸びをして少しだけ高い位置にある唇にキスをする。


雪男は、嗚呼やっぱり僕は志摩くんに甘い、と思いつつ両腕を彼の背中へと回した。





- end -



2011.05.27


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