世に言うゴールデンウィーク真っ最中。真面目な雪男は休みの日も怠る事無く机に向かって勤勉に励む。その後ろで床に寝っ転がる燐は仰向けになり、携帯を弄っていた。


「雪男!大変だ!」
「何」


急に勢いよく起き上がる燐に、もう慣れてしまっているのか、雪男は振り向く事もせず声だけで反応を示した。燐は反動をつけて立ち上がると、雪男に近寄って先程まで自分が見ていた携帯の画面を見せた。携帯の画面に映るはアイスの画像。


「雪男、今サーティーアイスがGWフェアで30%オフだから食いに行くぞ!」



◇ ◇ ◇



それぞれにお目当てのアイスを買った二人は仲良くアイスを食べながら家までの帰り道を歩いていた。


「んー!美味いっ!」
「兄さん、そんなに急いで食べると噎せ…」
「んぐ?!っげほ、ごほっ!」
「ホラ言わんこっちゃない」
「っはぁ、美味しすぎてつい掻き込んじまった…」


燐は呼吸が落ち着くと、またアイスを一気に食べ始める。そんな燐の様子に溜め息をつく雪男だったが、溶けてしまう前に、と自分もアイスを一口ずつ堪能しながら食べていった。


「そういや雪男は何味を頼んだんだ?」
「僕?バニラとラブポーションサーティーだよ。一口食べる?」
「おっ、じゃあそのラブなんちゃらの方食いたい!」
「はい、じゃあ口開けて」


素直に口を開けてアイスを待つ燐の目は完全に雪男のアイスにくぎ付けだった。「これ、尻尾が露出してたらきっと、面白いぐらい左右にパタパタしてたんだろうなぁ」なんてぼんやりと思いつつ、スプーンにアイスを一口より多めに乗せた。
そのまま燐にあげるのかと思いきや自らが口に含み、燐の唇に口付けた。そして口内に流し込む様、アイスを移す。
暫く続く口付けに息苦しさを感じ、思わずアイスと唾液を飲み込むと、それを待っていたかのか漸く雪男の唇が離れた。


「おおおおまっ!何して?!」
「何って…食べたかったんでしょ、ラブポーションサーティー」


「知ってる?ラブポーションって恋の媚薬…つまりは惚れ薬って意味なんだよ」なんてアイスの説明をいつもと変わらぬ調子でする雪男だったが、今さっきの口移しに動揺を隠せない燐を目にして意味を理解してないと思ったのか「要するに、」と言葉を続けた。


「兄さんには今、僕に恋しちゃう魔法がかかったんだよ」


クスリと笑いもう一度、雪男は燐の唇に魔法をかけた。





- end -



サーティワンアイスクリームの、「ラブポーションサーティーワン」が元ネタ。
ラブポーション=恋の媚薬、だそうです。
2011.05.04

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