爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第6話


モニタールームに移動して講評の時間がやってきた。憂は無理やり引き剥がした足がじんじんと痛むのを感じていた。

「もちろん、今回のベストは轟少年だ。仲間を巻き込まず核兵器にもダメージを与えず、尚且つ敵も弱体化したことは素晴らしい」

そうオールマイトが言った。分かっていたことだったが、憂は悔しかった。本気を出すといった友人を勝たせてやりたかったと思った。

「爆豪少女もガッツがあって良かったぞ!あの状況でなかなか出来ることじゃない!敵らしい不意打ちも良かったぞ!」
「…ありがとうございます」

礼をすると、次のチームの番になった。憂はまだ先ほどのことを考えて悔しげに唇を噛んでいた。すると、おい、と声がかかった。

「足、大丈夫か?」
「えっと、さっきの」
「轟焦凍」
「轟くん」

先ほどのヒーローチームの男子だった。先ほどは敵対するチームということで恐怖しかなかったが、今はただのクラスメイトだ。落ち着いて相手の顔を見た。

「私の方こそ、思いっきり蹴ってしまって…」
「いや、それはいい。足、震えてんぞ」

ぶるぶると震えていた足を指摘され、憂は曖昧に微笑む。見兼ねた轟が、ため息を吐いてオールマイトに言った。

「先生、爆豪が足を怪我してるので保健室に連れて行ってもいいですか」
「なぬ!?それじゃあ、君に任せてもいいかい?」
「はい」

本人のいない間にどんどん話は進んでいく。憂は慌てて叫んだ。

「えっ、あの、私は大丈夫です!」
「大丈夫じゃねえだろ」

あっという間に、憂は宙に浮いた。違う。彼に横抱きにされていたのだ。男子に姫抱っこされるのは初めての経験で、憂は思わず両手で顔を覆った。

「どうかしたか?」
「な、なんでもないです」



リカバリーガールに足を見せて、治療してもらうと授業は丁度終わったところのようでオールマイトが急いで帰って行ったのを見送った。

「憂ちゃん、足大丈夫だった?」
「うん、平気だよ。個性使い慣れてないせいもあるから…と、轟くんのせいじゃないよ」

心配そうに寄ってきた葉隠に笑顔で返す。そして隣にいる轟をちらりとみた。しかしすぐに目をそらす。恥ずかしすぎて顔を見合わすのは無理だった。



「お、お兄ちゃん、待って」
「離せクソブス」

掴んだ手は痛いほどの力で払いのけられてしまった。双子の兄はこちらを見ることなく、教室から出て行ってしまった。

「大丈夫か?なんだあいつ、妹に対して男らしくねえ!」
「だ、大丈夫です…いつものことだし」

払いのけられた手がじんじんと痛むが赤髪のツンツン頭の男子に対して曖昧に笑う。
誰かが反省会をしよう、と着替えて教室に集まっていた時兄はすぐに帰ろうとしていた。他の人が引き止めるのも無視して、憂の手も振り払って行ってしまった。

その後、出久が保健室から帰ってきて、クラスメイトに取り囲まれていた。憂も心配で声をかけたかったが、あの輪の中に入ることは出来なくて外からぼーっと見つめているだけだった。

「憂ちゃん」
「えっと、尾白くん」
「いいの?行かなくて」
「えっ」

予想外のことに憂は驚いた。なぜ、出久と話したがっているのがばれたのだろう。

「ずっと見てたからさ、ほら、行ってきたら?」
「うん、ありがとう…」

彼の尻尾に背中を押され、出久の元まで走る。彼は友人の女の子と話していたところだったが、勇気を出して声を上げた。

「あの、出久くん…大丈夫?」
「憂ちゃん…うん、リカバリーガールが応急処置はしてくれたから。…それよりかっちゃんは?」
「お兄ちゃんなら、止めたんだけど帰っちゃって…」

すると、出久は入ってきたばかりだというのに踵を返し教室を出て行ってしまった。

「どうしたんやろ…」
「うん…」

しばらく二人で見守っていたが、やがて気まずい雰囲気が漂い始めた。そういえば憂は彼女の名前すら知らなかった。

「えーあの、」
「あっ、私麗日お茶子!憂ちゃんだよね!爆豪って人の双子の!」
「う、うん」

頷くと彼女は眩いばかりの笑顔をこちらに向けた。思わず憂は呻いて目を細めてしまった。

「よろしくね!」
「よろしくお願いします…」

差し出された手に手を重ねる。ぶんぶんと握手をされて、離される。憂はこんな明るくていい子に少しでも嫉妬の念を向けていた自分を恥じた。

その後、帰ってきた出久と麗日と一緒にクラスのみんなで反省会を行い、終わった後は念願の出久と一緒に帰路につくことができた。憂の入学二日目はこうして幕を閉じた。

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