爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第2話


「ああ!?てめぇが雄英受けるだって!?」
「う、うん」

その日、夕食の席で家族に向かって報告をした。雄英のヒーロー科を受けると。お父さんやお母さんは喜んでくれ、応援してくれると言ったが、やはり自尊心の高すぎる兄は違った。

「てめぇなんぞが無理に決まってんだろ!それに、史上初雄英進学者の俺の将来設計に傷つけんじゃねぇ!他行けや!」

力任せにテーブルを叩く、いつもの癖でびくりと体が震えたが、自分を叱咤してじっと兄を見つめる。

「私ずっと、お兄ちゃんの影に隠れてたよね。私気付いたの。このままじゃだめなんだって……、頑張ってる出久くんを見て、私も決めたの。私も雄英のヒーロー科受ける!」

そう言い切って、自分を奮い立たせ兄を見つめる。兄は舌打ち一つして、夕食もそこそこに家を出て行ってしまった。



それから受験までの数ヶ月、勉強に体力作り、今までほとんど使用していなかった個性の調整を行っていた。指導者もおらず何もかも手探りだったが、やはり私は爆豪勝己の双子の妹だ。受験当日までにはしっかりと仕上がっていた。

雄英高校を訪れ、ヒーロー科の試験を受けるため、指定された席に座る。隣は兄でその隣が出久だった。憂はドキドキと緊張で心臓が高鳴っていた。

『今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』

プロのヒーロー「プレゼント・マイク」の説明に聞き入る。返事をする余裕など、今の憂にはなかった。

『こいつあシヴィーー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?YEAHH!』
「ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』だ、すごい…!!ラジオ毎週聞いてるよ感激だなあ雄英の講師は皆プロのヒーローなんだ」
「うるせえ」

隣の隣に座る出久は歓喜のあまりぶつぶつと何か言っていたが、兄に一蹴されていた。

入試要項通り、受験生はこのプレゼンの後、10分間の市街地演習を行うようだ。持ち込みは自由だが、憂の武器は両足のみだった。

「同校同士で協力させねえってことか」
「?」
「ほ、ホントだ。二人とも受験番号連番なのに会場違うね」
「見んな殺すぞ」

改めて自分の受験票を見ると、そこにはC会場と書かれていて、どうやら二人とは別々の会場らしい。兄は自分や出久を潰せないと舌打ちしたが、心の中でその配慮に心底感謝した。兄なら妨害行為すらやりかねない。

プレゼント・マイクの説明を聞き終わり、席を立つ。兄は何も言わないで先に行ってしまった。

「お互いに頑張ろうね!憂ちゃん」
「うん、頑張ろう、出久くん」

二人とも緊張を隠せない様子で目を見合わせて笑った。そして各自の会場へ向かうために別々に歩き出した。



「広い…!」

ほとんど街のような市街地演習場が受験生の前に立ちはだかる。憂は個性を遺憾なく発揮するために、ジャージに着替えた際に靴下と靴を全て脱いできており、裸足の足に真冬の地面は冷たく感じてしまった。

ギリギリまで履いておけば良かったと後悔してもすでに遅く、プレゼント・マイクの声を皮切りに一斉に受験生が走り出す。

「爆速…!」

思い切り地を蹴って、足裏の汗腺からニトロを出して爆破させた。そして受験生たちの頭上を飛んで先頭に躍り出る。

「いた!」

目の前の3ポイントの仮想敵に勢い良く両足で着地し、同時に爆破させた。ロボは爆発により地に伏した。

「3ポイント…!」

すぐに地に降りて別の仮想敵を探す。すると、背後からぽんっと背を叩かれた。振り向くとそこには優男風の男子がいた。

「借りるよ」

それだけ言って、彼は靴を脱いで私と同じように足裏の爆破で飛んで行ってしまった。

「こ、個性だだ被り…!?」

兄以外で初めて見た同じ個性に目を丸くしていたが、すぐ別の仮想敵が襲ってきたので試験に集中した。


10分間の市街地演習はあっという間に終わってしまった。思い切り個性を使うのは初めてで、裸足の足はじんじんと痛んだ。

「君の個性、良かったよ」

先ほどと同じようにぽんと背を叩かれる。振り向くと先ほどと見た男子だった。
その言葉でハッとする、もしかして、触れた相手の個性をコピーする個性なのかもしれない。確かめようと彼を探すもすでに彼の姿はなく、憂は疲れでため息を吐くのだった。


一週間後、憂と兄の元には雄英からの合格通知が届いていた。

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