爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第29話


翌日の合宿二日目朝の五時半、A組一同は眠い目を擦りながら合宿所の外に出てきていた。

「お早う諸君」

そこで憂たちはこの合宿の目的について聞かされた。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備として、全員の強化及びそれによる仮免の取得が目的らしい。

「というわけで爆豪。こいつを投げてみろ」

相澤先生が兄に渡したのは体力テストの時のソフトボールだった。兄の入学直後の記録は705.2m。どれだけ伸びているか成長具合を見るつもりのようだ。

「んじゃ、よっこら…くたばれ!!!!」
「(……くたばれ…)」

爆風によって飛んでいったボールを見守る。憂は思ったよりも飛ばなかったような感じがした。

「709.6m」
「!!?」

兄の記録は入学当初より数メートルしか伸びていなかった。約三ヶ月間、様々な経験を経て確かに憂たちは成長しているが、相澤先生によればそれは精神面や技術面、体力的な成長がメインで、個性そのものはそこまで成長出来ていなかったらしい。

「今日から君らの個性を伸ばす。死ぬ程キツイがくれぐれも…死なないようにーー…」

相澤先生がにやりと笑う。憂は背筋が痺れるような感覚に陥って、人知れず口角を上げた。



憂は今、お湯の入ったドラム缶に両足を足をつけて爆破を繰り返していた。汗を大量にかきながら周りを見てみれば、大声を出している者、ひたすら回っている者、食べながら鍛えている者様々だった。憂は自分と同じようにドラム缶風呂に入っている轟を見た。水着はこのために必要だったのかと中学時のスクール水着をTシャツの下に着ていながら思った。

「爆豪、何をしてるんだい」
「あ、物間くん。えっとこれは汗腺が広がった状態で爆破をし続けて爆発の規模を大きくするんだって…」

A組に遅れてB組も来たらしい。差し出された物間の手に触れて、物間に憂の個性をコピーさせる。

「ま、精々頑張ってね。後期からB組の番だから、A組には負けないからね」
「ふふ、こっちだって負けないよ!」

笑ってそう言うと物間は少し頬を赤らめてると顔を背け、B組の男子たちの方へ戻って行ってしまった。なぜだろうと首を傾げていると向こうににやにやしながらこちらを見ている取蔭たちがいて、憂は慌てて個性の限界突破に挑戦した。



「さァ昨日言ったね『世話焼くのは今日だけ』って!!」
「己で食う飯くらい己で作れ!!カレー!!」
「イエッサ…」

グタグタに疲れている一年ヒーロー科を見てラグドールが手足をばたつかせながら笑う。憂は何でもいいから適当に食べたい気分だったが、それを先に阻止するかのようにカレーの指定が入る。憂の隣に立つ飯田がハッと気がついたように口を開いた。

「確かに…災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環……さすが雄英無駄がない!!世界一旨いカレーを作ろう、皆!!」
「お、おー…!」

委員長の飯田の指示に従い、班分けされ、憂は野菜を切る係になった。

「憂ちゃん上手いねー!」
「そ、そうかな」

規則的なリズムで野菜を切っていく。葉隠に褒められて憂は照れくさくて頬を赤らめた。

「轟ー!こっちも火ィちょーだい」
「あ、三奈ちゃん私が…」
「いや、いいよ」

そう言って左を使った轟の横顔を見る。火を見ながら微かに笑っており、憂もそれを見て笑った。

「憂ちゃん?」
「あ、ごめんね…!」

麗日に言われて自分の担当の場所へ戻る。憂は轟の優しげな笑みが忘れられなかった。


「いただきまーす!」
「いただきます…!」

全員で勢いよくカレーをかきこむ。味はともかく、全員で作ったカレーは今の状況では何よりも美味しく感じた。隣の八百万が食べながら個性の説明をした時、八百万の向こう側の瀬呂がうんこのようだと言い、耳郎に殴られていた。

「う、うん…」
「八百万さん、大丈夫だから…カレー食べよう?」

蹲って顔を覆う八百万の肩に手を置いて席に戻るように促した。



入浴を済ませて、部屋に戻る。どっと疲れが襲ってきた憂はすぐ布団に横になった。

「トランプ持ってきたんだー!ゲームしようよゲーム!」
「おーいいね」

元気が有り余っている芦戸がそう提案する。体勢を変えて皆が集まっている方に向くと、憂はふと思い出したことを口にした。

「三奈ちゃん、補習じゃなかったっけ?」

そういうと芦戸の楽しそうな顔が一瞬で固まる。いやだいやだと言いながら、芦戸は八百万に引かれて補習部屋に連れて行かれていた。

「余計なこと言ったかな…」
「いいんじゃない?どのみち補習はあるんだし」

耳郎がそういうと、トランプをシャッフルし始める。ワクワクといった様子でそれを見守る葉隠に、憂は微睡みながらそれを見守った。


ふと気がつくと部屋は真っ暗で芦戸も帰ってきているのが分かった。憂はトランプの途中で寝てしまったらしい。なぜか全裸で寝ている隣の葉隠の布団をかけると憂は再び眠りについた。


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