爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第28話


「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間!自分の足で施設までおいでませ!この…魔獣の森を抜けて!」

上からそんな声が降りかかる。土砂に流されついたのは魔獣の森の入り口だった。辺りを見渡すと確かに不気味で、魔獣の森というだけのことはあると憂は思った。

「雄英こういうの多すぎだろ…」
「文句言ってもしゃあねえよ、行くっきゃねえ」

視界の端で先ほどからトイレに行きたがっていた峰田が前かがみになり走るのが見えた。しかしその先には普通の動物とは思えない生物が立っていた。

「「マジュウだーー!!?」」
『静まりなさい。獣よ、下がるのです』
「口田!!」
「!?」

口田の個性「生き物ボイス」でその魔獣を従えさせようとしていた。しかし、魔獣には通じず、目の前の口田を襲おうと前足を上げていた。よく魔獣の体を見てみると、それは毛や肉ではなく土で出来ていることが憂の目に分かった。とっさに爆破で口田の前に飛び出して魔獣に攻撃する。同じ行動をしていたのは憂の他にも四人いた。



憂たちの目の前には施設らしき建物が見えた時には日は既に傾いていた。憂の足は既に個性の使いすぎでズキズキと痛んでおり、辛うじて歩ける程だった。

「やーーっと来たにゃん。とりあえずお昼は抜くまでもなかったねえ」

ぐぅーと憂のお腹の虫が鳴り響く。それを恥ずかしがる余裕もないほど憂は疲れ果てていた。

「何が『三時間』ですか…」
「腹へった…死ぬ」
「悪いね。私たちならって意味、アレ」

A組はプロヒーローの彼女たちの倍以上の時間がかかって到着した。学生とプロとの実力差がはっきりと分かってしまった。

「ねこねこねこ…でも正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ君ら……特にそこ五人。躊躇の無さは経験値によるものかしらん?」

金髪のプロヒーローが憂たちを指す。憂は左右どちらを見ても、そこに立っているのは自分を含めての五人だった。憂以外の兄、出久、轟、飯田の四人は彼女によって唾をつけられており、憂は苦笑してそれを見ていた。

「ずっと気になってたんですが、その子はどなたかのお子さんですか?」

ふと出久が彼女たちの側に立っている男の子を見て言った。男の子はマンダレイと呼ばれたプロヒーローの従甥らしく、名を洸汰と言うようだ。彼は自己紹介をした出久を無視して攻撃して言った。

「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねえよ」
「つるむ!!?いくつだ君!!」

飯田の言葉を聞かず、すぐに洸汰は施設内へと入っていった。それをみた兄はマセガキと言って笑ったが、轟に似ていると言われ、怒っていた。憂も微かに兄に似ていると感じていたが、言わずに口を閉じた。

相澤先生に指示され、バスから荷物を下ろして指定された部屋に向かう。女子は男子と違い人数が少ない為、普通の大きさの部屋だった。

「疲れたわね」
「うん…お腹すいた」

蛙吹と並んで食堂へ歩く。すると、そこにはB組の面々が揃っていた。途中で逸れたB組も同じ合宿所だったようだ。


「いただきます!」

全員で手を合わせて食べるご飯は格別に美味しかった。

「おいしいねえ、憂ちゃん!」
「うん!」

葉隠にそう答えながも、ご飯片手におかずに手を伸ばす。お昼を抜いて走り通していたA組のがっつき具合はすごく、憂もつられていつもよりたくさん食べてしまった。


夕食後、クラス毎に入浴の時間になった。女子全員で更衣室に入り、憂は端に隠れるようにして服を脱ぐ。横目で見ると、八百万の大きな胸が目に飛び込んできて憂は顔を赤くして慌てて壁の方を向いた。

体を洗い、温泉に浸かる。じんわりと体の芯から温めてくれ、憂は全身の疲れがとれるようだった。

「気持ちいいねえ」
「温泉あるなんてサイコーだわ」
「うん…気持ちいい…」

皆でゆったりと温泉に浸かっていると、何やら男風呂が騒がしい。聞き耳を立ててみると、それは峰田と飯田が言い争っている声だった。

「壁とは超える為にある!!Puls Ultra!!!」
「校訓を穢すんじゃないよ!!」

おそらく、個性で峰田が壁を登ってきているのであろうか。憂は慌てて両手で体を隠した。すると壁の上から洸汰が見えた。洸汰が峰田を阻止してくれたらしい。

「やっぱり峰田ちゃんサイテーね」
「ありがと洸汰くーん!」

控えめに手を振ると、何かに驚いたのか、洸汰くんは男風呂の方へ落ちて行ってしまった。

「だ、大丈夫!?」
「うん!大丈夫!」

男風呂の方へ叫ぶと、出久の声が返ってきて憂はほっとした。



「憂ちゃん隣で寝よー!」
「うん」

葉隠に誘われるままに布団に入る。反対の隣には麗日が寝る準備をしていた。目が合うと憂はふと期末試験のことを思い出した。麗日は出久のことが好きなのだろうか、憂は彼女から目を逸らしながらそんなことを考えていた。結局、何も話せないまま、合宿一日目は終わりを迎えた。


prev / next

[ back to top ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -