爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第26話


翌日、教室へ入ると演習試験不合格の四人が暗い表情で佇んでいた。芦戸にいたっては泣いてしまっている。

「皆…土産話っひぐ、楽しみに…うう、してるっ…がら!」
「三奈ちゃん…」

憂が芦戸の背を慰めるように撫でる。すると出久が口を開いた。

「まっまだわかんないよ。どんでん返しがあるかもしれないよ…!」
「緑谷、それ口にしたらなくなるパターンだ…」

瀬呂が出久を止めるように肩に手を置く。筆記試験でも危ない上鳴が切迫した表情で叫んだ。試験で赤点をとると夏休みに行われる林間合宿に行けずに学校に残っての補習となるのだ。瀬呂も峰田のおかげで演習試験を合格したため、寝ていただけの自分も赤点になるかどうか分からないと言った。

「予鈴が鳴ったら席につけ」

思い切り教室の前のドアが開く。騒がしくしていたせいで予鈴が聞こえていなかった憂は慌てて自分の席に着席する。すぐ静かになった教室で相澤先生が口を開いた。

「おはよう。今回の期末テストだが…残念ながら赤点が出た」

演習試験不合格組は悔しそうな表情を浮かべる。上鳴に至っては悟りを開いているかのような表情だった。

「林間合宿は全員行きます」
「どんでんがえしだあ!」

演習試験不合格組が叫んだ。憂は嬉しそうに笑って小さく拍手をした。

「筆記の方はゼロ。実技で切島・上鳴・芦戸・砂藤、あと瀬呂が赤点だ」

不安がっていた瀬呂も赤点のようで、瀬呂は両手で顔覆う。憂は苦笑し、心の中でドンマイと声をかけた。

相澤先生は今回の試験は生徒に勝ち筋を残しつつありどう課題と向き合うかを見るように動いたと説明した。確かに本気で叩き潰すつもりなら、生徒は一人も合格できていないだろう。

「そもそも林間合宿は強化合宿に参加だ。赤点取った奴こそここで力をつけてもらわなきゃならん。合理的虚偽ってやつさ」
「ゴーリテキキョギィイー!!」

赤点組は席を立ち上がって喜んでいた。飯田は手を上げて二度の虚偽について反論した時、相澤先生は確かにと頷いた。

「ただ全部嘘ってわけじゃない。赤点は赤点だ。おまえらには別途に補習時間を設けてる。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツイからな」
「ーーー!!」

喜んでいた五人の表情が途端に固まる。憂は回ってきた林間合宿のしおりを見て、買わなければいけないものを頭に思い描いていた。



「まあ何はともあれ全員で行けて良かったね」
「そうだね」

尾白がそう言ったのに、憂は頷いた。
林間合宿は一週間の強化合宿で、しおりの持ち物には着替えの他には水着などが記されていた。憂はスクール水着しか持っておらず、それでも良いのだろうかと考えていた。すると、隣の葉隠が思いついたように手を鳴らした。

「あ、じゃあさ!明日休みだし、テスト明けだし…………ってことで、A組みんなで買い物行こうよ!」

葉隠が笑ってそう言った。皆乗り気で、わいわいと騒がしく話す。憂は轟の言葉を聞いていた。

「休日は見舞いだ」
「ショートくん、来れないの?」
「ああ、悪い。代わりに楽しんできてくれ」

残念そうに言った憂に轟は、憂の頭に手を乗せて軽くぽんぽんと叩く。憂は気恥ずかしくなって目線をうろうろさせた。

「カァーー!!俺の目の前で青春するなー!!」

それを見ていた峰田が悔しそうに叫んだ。



翌日、行かないと言った兄を家に置いて、憂はA組の皆と木椰区のショッピングモールにきていた。初めて見るクラスメイトたちの私服に憂は自分が浮いていないだろうかと自分の服を見下ろした。

「わ、私変じゃないかな?」
「何言ってんのかわいいよー!」

芦戸に背を叩かれて背筋を伸ばす。そして二人で葉隠がいるところへ向かった。
アウトドア系の靴が欲しいと言った葉隠に憂はついていくことにした。葉隠、上鳴、飯田、芦戸とともに移動する。振り返ると、出久と麗日が二人で立っている。憂は青山に言われたことを思い出して、かっと頬が熱くなるのを感じた。その時、隣を歩いていた飯田がこちらを見て口を開いた。

「どうしたんだい、憂くん。顔が赤い…はっ、まさか発熱…!?」
「う、ううん、違うの!ほら、人混み慣れてないだけだから!」
「うむ、そうか…それなら僕に掴まっていたまえ!」
「えっ」

飯田の申し出に憂は狼狽えた。腕を差し出す飯田に言われるがままに腕を絡める。憂はさらに顔が熱くなるのを感じた。



『警察による緊急捜査が行われるため、一時閉鎖致します。お客様はーー…』
「えっ!?」

買い物をしていると店内の放送が流れた。敵が発生したのだろうか。クラスメイトたちの携帯が同時に鳴る。携帯を開いてみると、そこには麗日から出久が敵に襲われたと記されていた。
急いで警察がいる元いた場所へ向かう。すでに警察は到着していて、憂たちは出久に会うことが出来ずに、ショッピングモールを後にした。

何かがまた起こるかもしれない。憂はそんな不安が心に過ぎった。


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