爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第24話


時は流れ六月最終週、期末テストまで残り一週間を切っていた。

「全く勉強してねーー!!」

上鳴が必死の形相で叫ぶ。隣にいる芦戸はなぜか笑顔だった。確か彼らの成績はクラスでも下の方だったはずだと憂は中間テストの結果を思い出していた。

「憂ちゃん中間テスト何位だったっけ?」
「えっと、確か6位かな…」
「私16位だ!やばい!」

珍しく焦る様子を見せる葉隠に憂はどうしていいか分からずおろおろとしていた。

「一緒に勉強すりゃいいんじゃねえの」

出久たちの元からやってきた轟がそう言った。クラス内ではすでに八百万の元で勉強会が開かれることになっていた。

「それ名案だね!ねえねえ、三人で勉強会しようよ!次の日曜日にでも!」
「午後からだったら俺はいいが…憂は?」
「私も大丈夫だよ。…あ、だったらうちの家でやる?」
「いいねー!お菓子持ってこ!」

楽しそうにくるりと回る葉隠に憂と轟は顔を見合わせて笑った。



昼休みになって、憂たちは大食堂にきていた。目の前には轟、隣には葉隠が座っている。他にも出久や飯田、麗日や蛙吹がいる。大人数で食べる食事に憂は自然と頬が緩んだ。

「普通科目は授業範囲内からでまだなんとかなるけど…演習試験が内容不透明で怖いね…」
「突飛なことはしないと思うがなぁ」
「普通科目はまだなんとかなるんやな………」

話題は期末試験に筆記と同時に行われる演習試験のことだった。憂は出久と同じく、筆記よりも演習試験の方が気になっていた。

「一学期でやったことの総合的内容」
「とだけしか教えてくれないんだもの相澤先生」
「あとはほぼ基礎トレだよね」

憂は頷きながら聞いていると、出久が突然痛みに叫んだ。その後ろにいたのは物間だった。

「物間くん!」
「ああ、ごめん。頭が大きいから当たってしまった。やあ、爆豪」
「B組の!えっと…物間くん!よくも!」

物間がぺらぺらとヒーロー殺しの件について喋り出す。すると先日のように拳藤がやってきて、物間の首に手刀を繰り出していた。

「憂ちゃんは物間くんと知り合いなん?」
「う、うん。職場体験前に相談に乗ってもらったの」

麗日の質問にそう憂は答えた。すると拳藤が演習試験は対ロボットの実践演習だと教えてくれていた。

「ありがとう、拳藤さん」
「いや、じゃあまたな」

箸を置いて拳藤に手を振る。すると彼女も手を振り返してくれた。



次の日曜日の午後、憂はそわそわしながら家で葉隠と轟を待っていた。服はこれでいいだろうかと何回も鏡の前を通る。あまりにも落ち着きがない憂に、兄が言った。

「何そわそわしてんだよ、うぜぇ」
「ご、ごめん」

大人しく兄の隣に座ると舌打ちが聞こえる。すると、キッチンから母が楽しそうに笑って出てきた。

「あら、今日は二人ともお友達がくるんでしょ?楽しみだわー」
「は?」
「え?」

二人の声が重なった。同時に顔を見合わせる。母の話によると兄は切島を、憂は轟と葉隠を家に呼んでいたのだ。

「ああ!?舐めプ野郎と透明野郎が来んのか!?」
「透ちゃんは野郎じゃないよ…」

掌から爆破させて怒る兄に憂は苦笑を浮かべるしかなかった。兄の怒りが頂点に達しようとした時、玄関のチャイムが鳴った。

「わ、私いってくるね!」

すたこらと逃げるように憂は玄関に向かう。ドアを開けるとそこには轟、葉隠、切島の三人がいた。

「三人とも、いらっしゃい」
「おー爆豪妹!丁度そこで二人と会ってよー」
「切島くんたちも勉強会するんだってね!爆豪くん、怒ってなかった?」
「あはは、…とりあえず、上がって」

三人に家に入るように促す。三人から差し入れをもらって、リビングに通した。

「おじゃまします!」
「あらー、いらっしゃい!狭いところだけど」

母が笑顔で出迎える。兄は未だ仏頂面をしてソファに座っていた。そんな兄に切島が恐れもなく近づく。憂は内心、切島を尊敬していた。

「おー、爆豪!どうせだから五人で勉強しようぜ!」
「ああ!?なんで俺がこいつらと!!」
「いいじゃん!」

物怖じすることなく言った切島に、憂は感動すら覚えた。兄にこんな風に言える人間を憂は母親ぐらいしか知らなかったからだ。

「な、えーっと、憂ちゃんたちもいいよな!」
「うん、私はいいけど…二人は?」
「いいよー!」
「別にいいが」

葉隠と轟も頷く。兄は舌打ちした。その舌打ちを了承だと憂は思った。そして五人での勉強会が始まった。

勉強会は主に切島と葉隠を教えつつ、憂と轟は教え合い、たまに憂は兄に聞くという様子だった。そして切島と葉隠の明るいコンビが場を沸かす。差し入れを時たまつまみながら、憂は友達と一緒に勉強するのがこんなに楽しいものだと知らなかった。

すぐに時間はきて勉強会はお開きになる。兄と一緒に三人を玄関まで見送った。

「今日はありがとう」
「こっちこそありがとー!これで筆記はばっちりだね!」
「だなー!」

葉隠と切島が楽しそうに笑う。轟も頷いていた。

「じゃあまた、月曜日にな、憂。あと爆豪」
「ついでみたいに言ってんじゃねぇ!舐めプ野郎が!!」

兄がこれ以上怒らないように、三人は帰っていた。兄はさっさと踵を返して家に入っていく。その兄の背中に憂は声をかけた。

「お兄ちゃん、今日はありがとう」
「ああ!?」
「べ、勉強教えてくれて…」
「そんなんいつでも教え殺したるわ!」

その言葉を聞き、憂は笑顔になる。きっと兄の優しさだと思って、その背中について家に入った。

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