爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第23話


一週間ぶりに、自宅に戻る。扉を開けるとそこにいたのは丁度帰ってきていたのか、兄の背が見えた。しかし、その頭は一週間前と決定的に変わっていた。

「お兄ちゃ……っぷ、くく」
「ああ!?憂てめぇ何笑ってんだぶっ殺すぞ!」
「だ、だって、その頭…!ふふっ」

兄の頭は8:2分けされており、いつもの爆発的ヘアーではなくなっていた。確か兄の職場体験先はNo.4ヒーローベストジーニストだったはずだ。

「それ、ど、どうし…ふっ、」
「ぶっ殺す!」

兄に掴み上げられても、憂の笑いは止まらずそのまま母親が怒鳴りに来るまで憂の笑いは止まらなかった。



翌日、憂は頬を擦りながら学校の廊下を歩いていた。兄の髪は洗ってもクセがついて、直らなくなってしまっていた。それを朝からまた笑ってしまって、憂は兄に殴られたのだ。

「爆豪!」
「え…あ、物間くん…?」

丁度B組の教室を通る時、教室の中から声がかかった。びくりと肩を震わせてそちらを見ると、そこには職場体験前に相談に乗ってくれた物間がいた。

「お、おはよう」
「君、ヒーロー殺しに遭遇したんだって?」
「ああ、うん。えっと、エンデヴァーさんに救けられてそれで…」

あたふたと身振り手振りで説明をする憂に物間は険しい顔をした。どうしたのだろうと憂は首をかしげると、彼は頭を下げた。

「ごめん、僕が余計なこと言ったから…言わなければ、君が巻き込まれることもなかったかもしれないのに」
「え!ええ!?…ち、違うよ、物間くんは悪くない。私が自分で決めたことだよ」

だから頭を上げてと言えば、物間はいつもの顔をしていた。憂はそれを見てほっと安堵の息をもらした。

「そうかい?それじゃあ良かった。でも怖いね、あー怖い。いつか君たちのトラブルがこっちまで降りかかってくると思うとこわ…ふっ!!」
「何朝っぱらからシャレにならんこと言ってんの」

誰かが背後からぺらぺらと話す物間の首に手刀を打ち込んだ。憂はびっくりして飛び上がった。

「ごめんごめん、こいつ心配してたみたいだから許してやって」
「え、いえ、大丈夫です」
「私拳藤。もうすぐ始業の予鈴鳴るから、教室の行った方がいいよ、爆豪さん」

時間を見ればもうすぐチャイムが鳴る頃だった、憂は拳藤と物間に礼を言って、急いでA組の教室に入っていくのだった。



「ハイ私が来た」

その日の午後、オールマイトの担当するヒーロー基礎学が始まった。この日の授業の内容は救助訓練レースだ。運動場γで5.6人4組に分かれて1組ずつ訓練を行う。オールマイトがどこかで救難信号を出すと街外から一斉にスタートし、誰が一番にオールマイトを助けに来てくれるかの競争のようだ。

初めの組は出久、尾白、飯田、芦戸、瀬呂だった。憂たちはモニターでそれを見学する。後ろでは誰が一番になるか予想をしていた。

「憂ちゃんは誰だと思う?」
「う、うーん、瀬呂くんかな」
「三奈ちゃんも運動神経いいからね!誰になるだろー」

葉隠と一緒にモニターを見る。スタートの合図と同時に一斉に皆走り出した。

「おおお緑谷!?」
「なんだあの動き!?」
「あ…っ」

そういえばヒーロー殺しと相対した時にもあのような、まるで兄のような動きをしていた。あの時は必死で憂は気がついていなかった。

「出久くん、すごい…」

ぴょんぴょんと飛んでいく出久を見て、憂は微かに頬を染めた。


結局、出久は落っこちて、一位は憂の予想通り瀬呂になった。憂は二番目の組で、出久に声をかける間もなくスタートになった。同じ組は蛙吹、峰田、霧島、耳郎、砂藤だ。

スタートの合図とともに爆破で工業地帯の上を行く。すぐにオールマイトを見つけることが出来、憂は一番になった。オールマイトに「助けてくれてありがとう」というたすきをかけられ、少し恥ずかしい気持ちになった。



「やっぱ機動力、女子だと憂ちゃんが一番ね」
「そ、そうかな」

授業が終わり、更衣室で蛙吹にそう言われ憂は少し照れた。

「あし…三奈ちゃんや蛙吹さんはいろんな場面に対応できるし…」
「梅雨ちゃんと呼んで」
「つ、梅雨ちゃん…」

照れながらそう言うと蛙吹は満足そうに笑った。


「ケロ…何か聞こえるわ」
「隣の部屋じゃない?男子が騒いでるのかも」
「それにしてはハッキリ…」

女子全員で更衣室を見渡す。すると壁に空いている穴に目がいった。その穴は男子更衣室と隣接する方の壁だ。そこから峰田らしき声が聞こえてくる。

「八百万のヤオヨロッパイ!!芦戸の腰つき!!爆豪の太もも!!葉隠の浮かぶ下着!!」

自分の名が聞こえて憂は思わず椅子から立ち上がってしまった。するとそれを制して、壁側に立っていた耳郎が穴にイヤホンジャックを差し込んで行く。

「麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァアアア…あああ!!!!」

おそらく爆音が目から流れてきているのであろう。峰田の叫び声を聞いて、憂は心の中で身を案じた。

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