爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第21話


異変があったのは、職場体験三日目だった。
事件だとエンデヴァーが言った瞬間、憂と轟の携帯が同時に鳴る。顔を見合わせて携帯を取った。発信先は出久だった。

「これって…ショートくん!」

そこにはクラス全員一括送信で位置情報だけが記されてあった。憂は一瞬考えた、おそらく緊急事態なのだろう、幼馴染は意味もなくこんなことをするような人ではない。

「………」
「ケータイじゃない、俺を見ろ焦凍ォ!」

エンデヴァーが怒る、しかし、憂と轟は彼に背を向けた。

「どこ行くんだ焦凍ォ!!!」
「江向通り4-2-10の細道。そっちが済むか手が空いたプロがいたら応援頼む。お前ならすぐ解決出来んだろ」
「よろしくお願いします!」

二人して場所に向かって走り出した。

「友だちがピンチかもしれねぇ」

その言葉を聞いて、憂は少し目を見開いたが、すぐに細めた。彼の友だちは私だけではないのだとそれが分かって嬉しかった。



携帯を見ながら江向通り4-2-10についた憂と轟は細道を片っ端から見ていく。見つけた時、飯田がヒーロー殺しの手にかかろうとしていた瞬間だった。隣の轟が憂より一瞬早く動く。不意打ちの氷と炎がヒーロー殺しを襲った。しかし、ヒーロー殺しはすんでのところで避けた。

「緑谷、こういうのはもっと詳しく書くべきだ。遅くなっちまっただろ」
「出久くん!飯田くん!」

飯田と出久、そしてもう一人、おそらくプロヒーローは地に伏している。憂はヒーロー殺しを見た。情報通りの姿だったが、改めて本物を見ると恐ろしい風貌だった。

「次から次へと……ハァ……」
「轟くん、憂くんまで…」
「なんで君たちが…!?それに…左……!!」
「なんでって、こっちの台詞だ」

轟がヒーロー殺しに攻撃しながら、三人を救出する。憂は氷で転がってきた出久を受け止めた。

「轟くん、憂ちゃん!そいつに血ィ見せちゃ駄目だ!多分血の経口摂取で相手の自由をうばう!皆やられた!」
「それで刃物か俺なら距離を保ったまま…」
「ショートくん!避けて!」

ヒーロー殺しの投げた刃物が轟の左頬にかする。

「良い友人を持ったじゃないか、インゲニウム」

ヒーロー殺しが轟の目の前に迫る。憂はヒーローが上に投げていた刀に気がついた。

「!!」

憂は轟に襲いかかる刀に爆破して弾け飛ばす。轟はヒーロー殺しに舐められそうになったのを炎で寸でのところで交わした。

「っぶねぇ」

轟が氷でガードする隙間から憂が爆破して攻撃する。その時、ずっと黙っていた飯田が口を開いた。

「何故…三人とも…何故だ…やめてくれよ…兄さんの名を継いだんだ…僕がやらなきゃ、そいつは僕が…」
「継いだのか、おかしいな…」

轟が大氷で相手との距離をとりながら、飯田と話す。

「俺が見たことあるインゲニウムはそんな顔じゃあなかったけどな。おまえん家も裏じゃ色々あるんだな」
「轟くん…」
「!!」

大氷はヒーロー殺しによってバラバラに切り刻まれた。

「己より素早い相手に対し自ら視界を遮る……愚策だ」
「そりゃどうかな」

轟が炎を出そうとした瞬間、ヒーロー殺しのナイフに左腕を刺された。

「!?」
「ショートくん!」
「上だ、憂!」

爆破で飛んでヒーロー殺しの目の前で閃光弾を撃つ。一瞬怯んだヒーロー殺しを、突然起き上がった出久が掴み、体勢を崩させた。

「出久くん!」
「なんか普通に動けるようになった!!」
「時間制限か」

一番後にやられたらしい出久が一番に動けるようになったようだ。出久はヒーロー殺しに攻撃され、地に堕ちる。

「下がれ緑谷!」

すぐさま轟の氷で距離をとった。出久が何故動けるようになったのか、それは血液型により効果に差異が生じるというものだった。

「わかったところでどうにもならないけど…」
「さっさと二人担いで撤退してぇとこだが…氷も炎も爆破も避けられる程の反応速度だ。そんな隙見せられねぇ。プロが来るまで近接を避けつつ粘るのが最善だと思う」
「うん…!」

三人でヒーロー殺しを見据える。

「轟くんは血を流しすぎてる。僕と怪我のない憂ちゃんが奴の気を引きつけるから後方支援を!」
「分かった!」
「相当危ねぇ橋だが…そだな。三人で、守るぞ」

三対一になって逆にヒーロー殺しの顔が冷静になった。憂は出久と一緒に飛び出す。先ほどと形相が違うヒーロー殺しに憂は背筋が一瞬震えながらも、刀の届かない範囲で爆破をしかける。素早い相手の攻撃に間合いに入ることもできなかった。先に行った出久が斬りつけられ、血を舐められた。

「ごめんっ憂ちゃん…!」
「っ!?」

ヒーロー殺しが憂の間合いに入っていく、素早い動きに避けることもできず咄嗟に両手で顔をガードすると、両手首を切りつけられ、傷口から血が噴き出した。

「う、ぐっ!!」

途端に体が動かなくなった、血を舐められてしまったのだ。手首からはどくどくを血が止まることなく溢れ出している。

「ごめん、ショートくん!」

ヒーロー殺しが轟の元へ向かった。轟は飯田に背を向けたまま叫んだ。

「なりてえもんちゃんと見ろ!!」

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