爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第17話


『準決勝!双子対決だ!!爆豪勝己対爆豪憂!!!』
「てめェでも痛ぇじゃすまさねぇぞ」
「……」

憂は今、準決勝のステージに立っていた。目の前には双子の兄が立っている。拳に力を入れる、ここで私は兄に勝つ。

『START!!』
「オラァ!」
「っ!」

開始と同時に突撃してきた兄をとっさに前に爆破して後ろに飛ぶ。しかし、爆破の中を飛び込んできた兄に髪と腕を掴まれぶん投げられた。

「った!」
『妹とはいえ女子にその攻撃はありかよ爆豪ー!?』

場外スレスレで後ろに爆破して、なんとか勢いを止める。乱れた髪をかきあげて、勢いをつけて上に爆破で飛び上がる。

『爆豪妹!常闇戦で見せたドロップキックかー!!?』

真下に兄が見える。心の中で兄に謝りながら、最大火力の爆破を下に向けて撃った。爆音が鳴り響く、憂は足が酷く痛むのを感じた。

『やべぇ大攻撃!煙幕でなんも見えねぇ!!』

それは撃った憂も同じだった。重力で下がりながら兄を探す、すると、真下にこちらへ向かってくる兄を見つけた。攻撃を相殺したのだろう、怪我などどこにも見当たらなかった。

「叩き落としてやるよ!」
「ぐっ!」

足首を掴まれて思い切り地面に振り下ろされる。受け身を取れず、もろに地面に叩きつけられ、憂は目がチカチカするのを感じた。憂は意識朦朧になりながらも立ち上がろうと、足に力を入れる。しかし、先ほどの爆破で足はじんじんと痛み、震えていた。
ぼんやりとした視界の中でミッドナイトが側に来るのがわかった。

「まだ、…まだやれます…」

震える声でそう言う。しかしミッドナイトは首を振った。

「爆豪憂さん…行動不能!決勝戦進出爆豪勝己くんーー!!」

ゆらつく視線の中で兄のなんとも言えない苦い顔を見つけて、憂はゆっくり目を閉じた。



「起きたかい?」
「ここは…」
「出張保健所さ、立てるかい?もう決勝戦も終わって後は表彰式だけだよ」

目をさますと憂はベッドに横たわっていた。ゆっくりと体を起こすと、怪我の痛みは無くなっておりその分強い疲労感が襲ってきた。

「決勝戦は…どっちが勝ったんですか?」
「あんたの兄だよ」

最後に見た兄の顔が思い浮かぶ、憂は唇を噛んだ。

「悔しい…です、勝ちたかった…」
「そうだろうね…」
「お兄ちゃんに、認めてもらいたかった…」

その思いを口に出すと同時に、憂の目からも涙が溢れ出す。幼い頃から何でも出来て、ずっと比較され、下に見られてきた兄に、憂は対等の双子であることを認めてほしかったのだ。

「ほら、グミお食べ。そして胸を張って表彰台に上ってきな」
「…っ、はい!」

リカバリーガールからもらったグミを口に入れる。そのグミはしょっぱい味がした。



「それではこれより!!表彰式に移ります!」

憂は3と書いてある台に上る。3位、その順位は嬉しくもあり悲しくもあった。しかし、隣を見るとその気持ちも吹っ飛ぶぐらいの光景が広がっていた。
拘束されながらも目を吊り上がらせ、轟に飛びかかっていきそうな兄の姿だった。

「お兄ちゃん…」

憂は後から葉隠に決勝戦で何が起こったのかしっかり聞いておこうと心に決めた。

「三位には爆豪さんともう一人飯田くんがいるんだけど、ちょっとお家の事情で早退になっちゃったのでご了承下さいな」

ミッドナイトがカメラに向かってそう言った。何かあったのだろうか、隣にいるはずだった飯田を憂は案じた。

「メダル授与よ!!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」

太陽をバックに、その人はそこにいた。

「私がメダルを持って来」
「我らがヒーローオールマイトォ!!」

台詞が被ってしまったのは気を取り直して、オールマイトが目の前に来た。憂は緊張で固まってしまった。

「爆豪少女おめでとう!頑張ったな!」
「あああ、ありがとう…ございます」

メダルを首にかけてくれながらオールマイトは言った。憂は固い表情のままそれを受け取った。

「前にも言ったが、君は意外とガッツがある。それに応えるだけの個性もある。もう少し個性の使い方を覚えたら取れる選択が増えるだろう」
「はい…!」

オールマイトからもらったメダルを手にしながら憂ははっきりと答えた。

オールマイトは轟と、兄には無理やりメダルを贈呈し、観客に向けて言った。

「さァ!!今回は彼らだった!!しかし皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと登っていくその姿!時代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!てな感じで最後に一言!!皆さんご唱和下さい!!せーの!」

憂は拳を高く上げて叫ぶ。来年はここよりもっと上に行く、そう心に決めて。

「プルスウルトラ!」
「おつかれさまでした!!!」
「えっ」

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