爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第16話


幼馴染と友人の戦いは、激しいものだった。しかし、最後に勝利を手にしたのは轟の方だった。

「憂ちゃんもデクくんのところ行く?」
「わ、私は…」

麗日たちが席を立って出久がいるであろうリカバリーガール出張保健所に行こうと憂を誘う。憂は出久も気になったが、首を振った。

「私、ショートくんのとこに行ってくる」

そう言って葉隠に断って、席を立った。



「ショートくん!」
「憂…?」

急ぎ足で轟の元へ向かうと、彼は体操服が左側が燃えており、怪我はあまりないが、ひどい状態だった。そして彼の後ろにはNO.2ヒーローエンデヴァーが立っていた。

「ショートくんの…お父さん?」
「君は確か、爆豪…と言ったか」

声をかけられてびくりと背を縮こませる。エンデヴァーの威圧感で憂はすぐに萎縮してしまった。エンデヴァーは下から上へまじまじと憂を見た。その視線がむず痒くて、憂は轟に助けを求めるように目線をやった。

「こいつは関係ない」

そう言って轟は背に憂を隠した。しかし、憂はそれに珍しくむっとした。そして、少しだけ轟の背から顔を出して叫んだ。

「わ、私は彼の友達です!!」
「友達…だと?」
「憂…!」

友達ごっこと言われても良かった。それでも憂は轟のことを友達だと思っていた。震えながら言った憂を見て、エンデヴァーは微かに笑った。そして二人のそばを通り過ぎ、言った。

「君の活躍も見させてもらう」

去っていったエンデヴァーの背を二人で見て、そして改めて顔を見合わせた。この日、二人はまともに話してはいなかった。

「憂…」
「お疲れ様、ショートくん」
「…ああ」

そう言って笑うと、轟もぎこちなく笑い返してくれた。憂はそれだけで満足だった。



ステージ補修が終わり、飯田対塩崎の後、憂の出番がやってきた。対戦相手は常闇だ。黒い影を操る個性、八百万との戦いでは速攻だったらしい。裸足でステージにあがる、憂は目の前の常闇を見た。

『強個性対決だ!常闇踏陰対爆豪憂!! START!』

芦戸戦のように爆速で速攻をかけ、目の前で爆破する。上を飛んで背後に着地し、背を掴もうとしたその時、黒い影に阻まれた。

「っ!」
「その手は先程も見た!」
『常闇一回戦と同じく猛攻だーー!!』

黒い影の猛攻に、憂はとっさに防御する。もう一度爆破して上にジャンプした。すると、黒い影が少し小さくなったのが見えた。

「(まさか…)」

憂は爆破で常闇の上を取り、両足を揃え爆破させた。爆破は閃光弾のようになり、辺りを照らした。そしてその光を浴びて、黒い影が怯んだのが憂の目に見えた。

「ここ!」
「っ!?」

上空からすぐさま攻撃をかける。黒い影の防御が追いつかず、常闇はもろに憂の蹴りを食らった。

『爆豪のドロップキックが常闇に直撃ー!!』

着地した憂はその勢いのまま、再び爆破し、今度こそ常闇の背後を取った。そして、爆速し、場外に押し出した。

「常闇くん場外!三回戦進出爆豪さん!」
『常闇もナイスファイトだったが、個性の相性が悪かったようだな!爆豪憂ベスト4進出!次は双子対決か!?』

肩で息をしながら、ベスト4まで勝ち上がったことを肌で感じる。そう、次はあの兄との対決だった。常闇と礼をし合い、ステージをあとにする。憂は今日一番、心臓がうるさかった。


「次は、お兄ちゃんと…」
「あ?」
「ひっ!?」

控え室に戻る直前、ばったりと兄と出くわした。先ほどの戦いを兄は見ていたのだろうか、憂は胸の前でぎゅっと手を握って言った。

「わ、私!お兄ちゃん勝つから!」
「…なんだと?」
「負けないから!」

今までの人生、一度だって何かの勝負をして勝ったことはなかった。しかし、雄英に入って、憂は変わったのだ。それを兄に見てもらいたかった。

「捻り潰すわ、ブス」

そう言って、兄は憂に肩をぶつけてステージに向かって言った。憂はその背中をじっと見つめていた。


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