爆豪くんの内気な双子の妹 | ナノ


▽ 第11話


USJ襲撃の翌日、雄英は臨時休校となり、そのまた翌日。始業の開始のチャイムと共に教室に現れたのは全身に包帯を巻いているの相澤先生だった。よろよろと歩く相澤先生に生徒たちは安否を問う。しかし、教卓についた相澤先生はそんなものどうでも良いと言い放った。そして戦いは終わっていない、そう言った。憂はまだ敵が攻めてくる可能性があるのかと、内心ヒヤヒヤしていた。しかし、相澤先生が言った言葉は、別のものだった。

「雄英体育祭が迫ってる!」
「クソ学校っぽいの来たあああ!!」

敵に侵入されたばかりだが、逆に開催することで雄英の危機管理体制が磐石だと示すという考えらしい。警備は例年の5倍に強化するようで、憂は安堵のため息をついた。しかし、目的はそれだけではないらしい。

「何より雄英の体育祭は……最大のチャンス。敵ごときで中止していい催しじゃねえ」

雄英の体育祭は日本ビックイベントの一つで、日本に於いて今かつてのオリンピック代わるのか雄英体育祭なのである。当然、全国のトップヒーローもスカウト目的で観覧する。資格修得後はプロ事務所にサイドキック入りが定石、そしてそのプロに見込まれればその場で将来が拓けるチャンスというわけだ。

「年に一回…計三回だけのチャンス。ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ!」

その言葉を聞いて、憂は机の下で拳を握りしめた。



昼休み、体育祭で湧くクラスメイトを横目に憂は緊張しながら轟に声をかけた。隣には葉隠が尾白の元からきていてくれたので幾分か緊張は減った。

「ショートくん…あの、一緒にお昼食べに行かない?」
「行こう行こう!」
「憂、葉隠…ああ、いいぞ」

大食堂までの道のりを3人で歩く、憂は変な気分だった。隣には女の子の友達と男の子の友達。二人に挟まれて歩くのは憂はなんだか気恥ずかしくて葉隠に手を取られていなければ後ろに一歩下がりたい気持ちだった。

「憂、足はもう治ったのか?」
「あっ、うん!今朝リカバリーガールのところへ行ってきて、完治したよ」
「そうか」

安堵したように轟の表情が少し緩む。それを見た葉隠が言った。

「なんか轟くんちょっと柔っこくなったよね!」
「そうか?」
「憂ちゃんのおかげかなー」
「えええっ」

大食堂について、列に並ぶ。葉隠がそんなこというものだから、憂はびっくりして叫んでしまった。そしてすぐ自分の口をふさぐ。それを見た葉隠はケラケラと笑っていた。

「憂ちゃんと轟くんは名前で呼びやってるんでしょ?ほら憂ちゃん!私のことも名前で呼んでみて!」
「え、えっと…透ちゃん」
「うん!」

おそらく笑顔を浮かべているだろう葉隠に憂も笑顔を返す。すると、轟が別の方向を見ていることに気がついた。

「ショートくん?」
「いや、なんでもない…」

首を振る轟に憂と葉隠はそろって首を傾げた。するとすぐに順番が回ってきて、憂は轟と同じくそばを注文した。



放課後、A組の教室の前にはたくさんの生徒で溢れかえっていた。体育祭を前に、敵情視察だろうかと憂は考えた。

「出れないね」
「お前の兄は無理やり通ろうとしてるみたいだけどな」

そう言われて兄の方を見ると、同じく一年生の生徒になにやら話しかけられている様子だった。兄はそんな生徒たちを物ともせず、人混みをかき分けて教室から出て行った。

「お兄ちゃんはね、すごいんだよ。やればなんでも出来ちゃう…私とは大違い…」
「……」
「あっごめん、忘れて」

兄を見て思った言葉が口からついて出た。すぐに笑ってごまかすが、轟には効かなかったらしい。

「お前も十分すげえと思う」
「えっ」
「でもお前がそういうんだったらそうかもしれねえ。だから、体育祭で見せてみろ」

それは彼なりの宣戦布告なのだろうか、憂はぽかんと口を開けて彼を見た。そして、力強く頷いて笑って見せた。轟も少し驚いた顔をしていたが、笑みを返してくれ、一緒に教室を出た。



体育祭でまでの二週間、憂はひたすら個性を使うことをトレーニングしていた。時には兄に相談するも、すぐに跳ね除けられたが、憂は轟の言葉を思い出してなんとか耐えて、一人きりでトレーニングを続けた。

そして二週間はあっという間にすぎ、雄英体育祭本番はすぐにやってきた。

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