轟さんの愛人男子高校生 | ナノ


▽ 大人じゃなくても


「ただいまー」

そう言っても誰も返事をしてくれる人などいない。でももしかすると彼がいるかもしれない、そう思って毎日玄関のドアを開ける。返事はない、自分より大きい靴もない。今日もひとりぼっちだ。


彼は雄英高校ヒーロー科出身者だ。俺にはヒーローになれるような個性も動機もない。だが、少しでも彼をサポートしたいと思って、雄英高校サポート科を志すことに決めた。

「俺、雄英高校のサポート科に入りたいです」
『サポート科か、いいだろう。必要なものがあったら言うといい』

電話越しにだけど、彼は満足したように頷いてくれた。彼の声を聞いたのは何日ぶりだろう。何か熱いものが込み上げるのを感じた。嬉しさを隠すことができずに、身体中からめいっぱい花が咲いた。



無事、雄英高校に入学することができた。当然、彼は入学式には来ない。寂しい感情もあるけれども、それ以上に誇らしかったから。

「ただいま」

入学式とガイダンスを終えて家に帰った。扉を開けてはっと目につくものがあった。いつもと違う、靴がある。どくんと心臓が高鳴った。

髪を撫でつけたり、服を正しながら家にそろりと入っていく。彼はリビングに座っていた。私服だ、ヒーロースーツでもない、ただの私服。心臓がばくばくいっている。もしかして、俺のために待っていてくれたのか。

「あの、ただいま戻りました」
「ああ、式は終わったか」

そういうと彼は立ち上がり、おもむろに俺の手を掴んで歩き出した。どこかに祝いに連れて行ってくれ?のか?期待した反面、その腕はすぐに離された。ここは俺の寝室だ。

「ど、どうしたんですか?」
「酷くはしない」

ゆっくりベッドに押し倒された。彼もベッドに乗って、ぎしりとベッドが悲鳴を上げた。

「なにす、」
「安心しろ」

彼の無骨な手が恐ろしく優しく俺に触れる。いやが応にもその意味を理解した。

「いやだ、いや、どうして」
「ーーー」

彼は、言った。父の名を。




翌朝、目が覚めるとそこに彼は居なかった。夢だと思った。なんとひどいを夢を見たんだろうと安堵した。しかしそれも一瞬で、すぐにひどい痛みが体全体に走った。

「ぁ、な、」

体は綺麗になっていたが、シーツを被された自身は全裸で、身体中に赤い痣が咲いていた。

ぽろぽろと、水が目から溢れる。零れ落ちた涙は綺麗な白いシーツに沁みていく。

「うそ、うそだ」

抱かれた。あの人に抱かれた。女の代わりだったら我慢できたかもしれない、けれど、違った。彼は俺を父の代わりとして抱いたのだ。

似ていると言った、あの時の彼の言葉が静かに胸を貫いた。こういう意味だったのだ。俺を見てやしなかったのだ。

胸に溢れた感情はマリーゴールドとなって、シーツにぼとぼとと落ちていった。

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