爆豪くんの隣の彼女 | ナノ


▽ 彼の決意


「勝己くん…?」
「いくぞ」

いつも通りにA組の教室に迎えに行くと、ちょうど勝己くんが教室から出るところだった。しかし、様子がおかしい。ぼんやりしてて、いつもの覇気がない。心配になり、手を取ろうとすると、弾かれた。ぽかん、と間抜けな顔をしていたら教室からわっと勝己くんのクラスメイトたちが現れた。

「おい、ちょっと待てって!」
「みんなで反省会しようよー!」

「い、いいの?」
「いいから、来い」

ぐいっと強く手首を引かれて歩き出した。
勝己くんが何を考えているのか分からない。心が読めないことがこんなにも不安なことだなんて、初めてだった。




強く強く握られた手首が悲鳴をあげる頃、出久くんが後ろから声を上げた。

「かっちゃん!!!」
「ああ?」
「…出久くん」

出久くんの目が勝己くんから私を捉えた。目が合い、何か私に聞かれたくないことなのだろうとなぜだか分かった。

「勝己くん、私、先に行ってるね」

大怪我をしている出久くんを見た。昔の出久くんの影はもうない。強くなったんだなぁと親のように思った。そして、がんばれ、と口をぱくぱくさせて、微笑んだ。

勝己くんは一人にするなというように手首を握ったが、次第にゆっくりと離してくれた。そして私の背を押し、私は押されるがままに歩き出した。



二人が何を話しているか分からない。後から分かってもいいし、分からなくてもいいと思う。

勝己くんに掴まれた方の手首を見る。そこは強く握られたせいで、感覚が鈍くなっており、あざになっていた。
青春だなぁとふふっと微笑んで、勝己くんに見られないようにそっとシャツで隠した。




「心」
「勝己くん」

目を赤くさせた勝己くんが後ろからやってきた。先ほどまでの覇気のない顔とは違う、いつもの、いつも以上にかっこいい勝己くんだ。


「俺は、ここで……雄英で一番になってやる」
「うん」

今度こそ、伸ばした手は相手の手に触れた。たくさんの思考が流れてくる。それ中でも一番強いものを勝己くんは口にした。

「だから、お前はずっと俺の隣にいて、俺が一番になるところ、見てろ」

勝己くんの頭が私の肩に押し付けられる。もう片方の手をゆっくり背に回して、ゆっくりとぽんぽんと叩いた。

「もちろんだよ、かっちゃん」

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