爆豪くんの隣の彼女 | ナノ


▽ A組の彼女たち


「いってきます」

雄英高校の真新しい制服に身を包み、いつもより声を大きくして言う。今日は雄英高校登校初日。新しい高校生活が始まろうとしていた。

「おはよう、勝己くん」
「おう」

玄関を開けて門の柱にもたれかかっている勝己くんに声をかける。中学のときと同じ位置、少しだけ早い時間。
雄英高校の制服の勝己くんもかっこいいと心の中で思っていると、手を差し出された。高校生になっても隣にいることが出来る。その事実が何よりも心を笑顔にさせた。

「うん、行こう」

ぎゅっと手を繋いで、雄英高校に向かって歩き出した。




「あれ、ヒーロー科いなくね?」
「初っ端からどこにいるんだ?」

ざわざわと周りの同級生が囁き合う。
入学式、そこにはヒーロー科のA組、B組の姿はなかった。心は恋人がクラスに馴染めているかどうかを心配していたが、要らぬ世話かもしれない。彼ならきっといつも通りに振舞っているだろう。
帰りは迎えに行こう、とA組の教室の場所を頭の中で確認しながら、式の始めの挨拶をするネズミの姿をした校長先生の根津の話に耳を傾けた。



「えっと、ここだよね」

初日のガイダンスが終わり、1年A組の教室にやってきた。扉は空いており、何人かの生徒が疲れた様子で教室から出てきていた。
ひょこりと控えめに教室を覗くと、ぶどうのような髪をした小さい男子と目があった。

「あの…」
「雄英女子レベル高ーーー!!!」

心が話しかける前に、男子生徒は興奮したようにせかせかと近づいてきた。男子生徒のあまりの興奮具合に心は無意識に一歩退いてしまった。

「俺のに触んじゃねぇ、クソモブ」
「ぎゃっ!」
「あ、勝己くん…」

ぶどう頭の男子生徒をひと蹴りして、勝己くんが荷物を持って近づいてきた。
安心したようにほっと息を吐く。勝己くんは他の生徒と違い、疲れた様子はなく、怪我もないようだ。

「え!?爆豪の彼女!?」
「マジかよ!!」
「わーん!オイラも彼女欲しいー!!」

野次馬のようにわらわらと生徒が集まってきた。これがヒーロー科A組、個性の強そうな人たちだと心は一発で見抜いた。

「うっせ、近づくんじゃねぇ!」

勝己くんが男子生徒たちを足蹴にしている中で、すすっと生徒が寄ってきたのが分かった。心は目を見開いた。驚いたのは彼女が服だけだったからだ。(彼女だとわかったのは服が女子生徒のものだったからだ)

「ねえねえ、あなた名前は!?私、葉隠透!」
「四宮心です。えっと、葉隠さん」
「透でいいよ!あの爆豪と付き合ってるの?すごいねー!」

キャッキャと効果音がつきそうな声で、顔が見えていたらきっと笑っているのだろう、葉隠さんは興味津々に聞いた。
小学、中学では二人が一緒にいることが周囲の当たり前だったので冷やかされるようなことは久しぶりで、心はどうしていいか分からなくなった。

「いくぞ、心!」
「あっ、…またね、透さん」

勝己くんが無理やり手を取って教室から出て行き、心もそれに従った。
振り向くと、教室のドアから手を振る服が見えて思わず心は頬が緩み、手を振り返した。

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