▽ 彼の危機
校門を出て商店街の方へ進む。
勝己くんのお友達は私は少し苦手だった。
二人はなんともないような顔でタバコを吸おうとしている。
「お前さァ、幼馴染なんじゃねぇの?」
「さすがに今日のはやりすぎ」
「俺の道にいたのが悪い」
出久くんのことだろうか。勝己くんが出久くんにつっかかるのはいつものことだが、今日はやりすぎているらしい。
私が何度言ってもその頻度は変わらない。逆にいつもより出久くんへの当たりが強くなるから、困ったものだった。
勝己くんが買ってくれたジュースを飲み干す。すると乱暴に手から奪い取ってしまった。
「いいじゃない、出久くんの夢なんだから」
「うっせェ!ガキのまま夢見心地のバカはよぉ……見てて腹が立つ」
「「わっ」」
勝己くんはボンッとジュースの缶を握りつぶして爆破しチリを払うようにぷらぷらと手を振る。
「つーかてめェらタバコやめろっつったろ!!バレたら俺らの内申にまで火の粉かかんだろ…」
くわっと勝己くんが彼らの方を向いて威嚇する。勝己くんが人に当たるのは日常茶飯事である。仕方がない、と前を向くと、私は凍りついた。
「か、勝己く、」
「「お…おい!!」」
「?」
「良い"個性"の隠れミノ」
ドンッと体を押されて倒れ込む。二人を繋いでいた手が離された。
「勝己くんッ!」
伸ばした手は届かなかった。
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