爆豪くんの隣の彼女 | ナノ


▽ 優勝の彼


体育祭は、勝己くんの優勝で幕を閉じた。しかし、勝己くんはその結果に納得していないようで、ついには拘束されて表彰台に上った。


「勝己くん」

HRが終わり、A組の教室に顔を出す。するとまだ彼は拘束されたままだった。顔を怒りで歪めながらじっと椅子に座っている。

「おっ、爆豪!彼女が来たぞ」
「彼女様が迎えに来たぞー!」
「うるせー!!!」

騒がしいA組の教室に入っていく。拘束を解かれて今にも轟くんに飛びついていきそうな勝己くんに手を差し出す。

「帰ろう、勝己くん」
「……チッ」

渋々といったように手を取り荷物を取って席を立つ。周りからはヒューヒューの冷やかしの声が聞こえて、心は恥ずかしくなって下を向いた。

「おい」
「どうしたの」
「やる」

先ほどまで無理やりかけられていたメダルを取り、こちらへ渡す。慌てて受け取ると、ずしりとその重みを感じだ。

「だめだよ、これは勝己くんが持ってなきゃ」
「いーんだよ」

ぐいっと手を引かれて教室から出る。元気に手を振ってくれた葉隠さんに手を振り返した。



「…ねぇ、勝己くん」
「んだよ」

手をつないで家まで帰る。もうすぐで二人の自宅になるというときに、意を決して、私は口を開いた。

「今日、うち親がいないの」
「じゃあ俺んち来るか」

二人は幼馴染で、親も公認の仲である。だがしかし、今までこれといって何か色っぽいことがあったわけではなかったから、勝己くんは普通にお泊まりとして考えていた。しかし、私は否定した。

「そうじゃなくて…」
「あ?」

勝己くんが訳の分からなさそうに首を傾げる。

「メダルもらったから…お返しに、わ、私をあげる…」

次第に小さくなっていく声に、勝己くんはあんぐりと口を開けた。そして、ぼっと顔を赤くさせると、頬をかきながら小声で返事をしてくれた。そしてしっかりと手を繋ぎ直し、二人は家に向かって歩き出した。

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