爆豪くんの隣の彼女 | ナノ


▽ 友達の彼


「お疲れ様、頑張ったね」
「なにそれ、嫌味かよ」

一回戦、心操くんは出久くんに負けた。それを見た私は、心操くんの元へと走った。こちらの姿を見つけた心操くんは罰が悪そうに目を背けた。

「嫌味じゃないよ、心操くん、頑張ったでしょう?」
「じゃあ頑張ったら付き合ってくれんの?」

その問いに首を振る。心操くんは呆れたようにため息を吐いた。

「だって心操くん、私のこと好きじゃないから」

その言葉を聞いて、彼は驚いたように目を見開いた。そして歩いて近くまで寄ってきた。

「……気づいてたの」
「分かるよ、だって私女の子だよ」

小さく笑うと彼は負けた、というように両手を挙げた。

「ごめん、からかったつもりはなかったんだ。ただ、調子乗ってるあいつに当て付けのつもりだった…」
「分かってる」

彼の言い分も分かっていた。本気じゃないということも、勝己くんに勝ちたいと思っていたことも事実だった。

「だから、今度は私と友達になってくれないかな」
「友達…?」

彼は不可解なものを見るような目をしてこちらを見た。私はそれにいつもの顔でじっと見つめて返した。

「…分かったよ」

彼は困ったように笑って、でも嬉しそうに右腕を差し出してくれた。私は今度こそ笑ってその手を握った。
今から私と心操くんは友達だ。


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