爆豪くんの隣の彼女 | ナノ


▽ 普通科の彼


「勝己くん、本当に怪我なかったんだね」
「当たり前だろ」

USJでの敵襲撃事件ことは瞬く間に学校に知れ渡った。
体育祭も迫る中での襲撃だったので、体育祭の開催を不安視する声や批判的な声もあったが、だからこそ開催することで雄英の危機管理体制が磐石だと示すという考えのようだ。

「我ら経営科は、基本体育祭に参加するメリットはない!故に売り子や経営戦略等なシミュレーションなどで勘を培う場とされている!一年生も例外じゃないぞ」

先生が張り切りながら言う。経営科の中にも戦闘力が高い個性を持つ者もいるが、ほぼ皆心と似たように直接的な攻撃力や戦闘力がない個性の者が多い。ヒーロー科の試験を落ちて、来た者も中にいるが、体育祭の目玉である予選や本戦に参加する生徒はまずいない。

「心ちゃんはどうする?」
「予選に出て見て、対象をじっくり観察するのもありだよね〜」

クラスメイトの女の子と体育祭について話す。心は口数はあまり多くないが、ヒーロー科の彼氏がいるという点で他の子から一目置かれているのだ。

「私は将来事務所経営に携わりたいから、見学する、かな」
「そうなんだ〜私もそうしよう!」
「心ちゃんの彼氏はトップ争いするよねきっと!」

恋人の爆豪勝己を褒められることは好きだった。はにかみながら頷くと周りが湧いた。心はなぜだろうと首を傾げた。



放課後、いつものようにA組に迎えに行くとそこにはたくさんの人で溢れかえっていた。人垣を後ろからぼんやり眺めながらどうしようか考える。ひとまず勝己くんに迎えに来た旨をメールした。

「行かないの?」
「えっ…あなた、確か」

あのときの猫の人、と言えば彼は笑いをこぼした。

「あのときは勝手に個性使ってごめん」

首を横に振ると彼は残念そうに眉を下げた。また個性を使われるかもしれないと黙ったままでいたのがバレているようだ。

どうしよう、と気まずさを感じていると、勝己くんの声が聞こえた。

「敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭の前に見ときてえんだろ。意味ねェからどけ、モブ共」
「知らない人のこととりあえずモブって言うのやめなよ!!」

勝己くんが教室から出てきてくれているようだ。それを見つけた彼はにやりと笑って私の腕をとった。

「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ、君の彼氏」
「!」

彼に引っ張られて人垣の前に飛び出る。目の前に勝己くんを見つけて、安堵すると同時に彼に視線を遮られた。

「ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」
「ああ!?」
「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ」

勝己くんよりも幾分か身長の高い彼は勝己くんを見下ろしながら言った。

「普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴、けっこういるんだ、知ってた?」

勝己くんは意味が分からなさそうに首を傾げる。

「体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ。………敵情視察?少なくとも俺は調子のってむと足元ごっそり掬っちゃうぞっつーー宣戦布告をしに来たつもり」
「それでお前は心のなんなんだよ」

勝己くんがそう問うと………B組の人の不敵な人にその問いは遮られた。彼は笑ってじゃあねと言うと人垣に消えていった。

「行くぞ、心」

私の手を掴み、グイッと人垣を掻き分けて勝己くんは出て行こうとすると、A組のクラスメイトらしい男子が声をかけてきた。

「待てコラ、どうしてくれんだ!おめーのせいでヘイト集まりまくっちまってんじゃねえか!!」
「関係ねえよ………」
「はあーーーー!?」

勝己くんが私の手を力強く握って答えた。

「上に上がりゃ関係ねえ」

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