04


短編にある狼と赤頭巾の続き。




トキが笑わなくなった。おばあさん、両親、村の人々はもういない。俺が殺しちゃったから。
全部トキの為にしたことなのに、トキは喜んでくれない。前みたいに俺に笑顔を向けてくれない。

真っ赤な頭巾に可愛らしい笑顔がトキのチャームポイントだったのに。

「ねぇ笑って。 笑ってよトキ、嬉しい時は笑わなきゃ駄目だ」

まるで俺の声なんて聞こえてないみたいに、トキはどこか遠い所を見つめたままぴくりとも表情を変えない。

わからない。
俺はトキと二人でずっと一緒にいたいから、それを邪魔する人達をやっつけてあげたのに。
それなのにトキは喜ばない。

俺は一体何を間違えたのだろうか。トキと出会ったこと?トキへの接し方?トキは何を怒っているのかわからない。
俺はトキの笑顔が好きなのに、トキは笑わない。

「トキ、笑ってよ……教えて、俺は何を間違えたの…?」

そして俺はとあることを思い付いた。

「……トキ」

彼女の全てを知る方法。

「君を、食べたら、」

全て、わかるのかな。

君が笑わなくなった理由を。
俺がどこで何を間違えたのかを。

「君と、一つになれば」

そのしなやかで細い腕を、絹のように美しい髪の毛を、宝石みたいに綺麗な瞳を。

食べてしまったらもうトキに触れることは出来ないし見つめることも出来なくなる。
でも、それよりも獣としての俺の欲望がふつふつと湧き出て止めることが出来ない。

「ずっと一緒にいよう、トキ」

人間を食べるのは君で最後にすると誓おう。
この先どんなことがあろうと、君を喰らったこの口で他の人間を食べたりしない。君が通ったこの喉に他の人間を通したりしない。

ああなんて、なんて俺は幸せなのだろう。

   
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