俺の幼なじみである凪の腹を蹴りながら、上がる口角を必死に堪える。 床は噎せている凪の涎だらけで、あとで掃除をしなければならないと億劫になった。 「おら、まだ落ちんなよ」 気を失いそうな凪の前髪を掴み上げ、開きっぱなしの口へ噛み付くようにキスをする。既に抵抗する気力もない凪の舌を捕まえ、呼吸もままならないくらいの激しいキス。 そろそろ酸素が足りなくなったのだろう、オレの胸を両手を置いて突き出す。ようやく離れたと、ひぃひぃ言いながら酸素を取り込んでいる。 凪の中に酸素が入ることに苛ついたのですぐにまた口を塞ぎ、俺の口で空気を送ってやる。と言ってもそれで足りるわけがなく、すぐに顔を左右に振って俺から離れた。 「っは、はぁ…」 「はい休憩オワリー」 どす、と凪の腹を殴る。服を捲ると赤黒い痣が出来ていた。 「……っ、は…」 「おいおいまだお仕置きは終わってねぇぞ?……なぁ…お前さ、なんでこんなことになってるかまだわからねぇの?」 切々になりながらも凪が言ったのは「知らない」の一言。カチンときたので腹を二発殴ってやると苦しそうに噎せていた。 「お前がオレ以外の男と話してたからだよ」 四六時中と言っていいくらいオレと凪は一緒にいる。 凪の行動は全て把握済みだったのだが、授業中少し目を離した隙にこいつは隣の席の男と話をしていた。 オレ以外とは一切口聞くなって言ってるのにな、なんで言うことを聞かないんだ。 「あれは、わた、私が消しゴムを落として…拾って貰っ」 「あ?じゃあ今お前が使ってる消しゴムにあの男が触れたってことか?」 「……っ」 「わかった、後で捨てておく」 オレ以外の人間が触れた消しゴムなんて汚いからな。新しい消しゴムを買ってやるか。我ながら優しすぎる。 「んで?お前は言うことねぇの?」 「……はぁ…はぁ」 「すみませんでした、ほらこれで許してやるよ」 涙一つ溢さず顔を歪める凪に苛立ちが増す。こいつはオレにどんなに罵声を浴びせられ暴力を振るわれても涙は勿論、泣き言も言わない。 可愛らしく泣きながら許しを乞われれば、オレも鬼じゃないからこんな仕打ちをせずに済むのに。 昔からあるこいつの強情な部分が邪魔で仕方ない。 「わ、私は!ハジメと男の人と話しただけで怒られる様な関係じゃ無い!」 「アー?」 「付き合ってもない、ただの幼なじみだ!私が誰を好きになろうと話そうと、ハジメには関け、がっ!!」 「はいはいうるせー黙れよ本当」 殴って蹴って、それでも凪は俺を睨むように見上げる。その目が苛ついて仕方なくて、オレは凪の顔を両手で掴み、自身へと引き寄せる。 「目、潰すぞ」 「…や、やめ」 「じゃあその目やめろ」 口角から一筋流れる血を舐めとり、鼻で笑うと凪は悔しそうに眉間に皺を寄せた。 苛つくけどその表情、すごく快感なんだよなー。これを見たいが為に凪に暴力を振るっていると言ってもいいくらいだ。 凪の笑顔よりも苦痛に歪んだ表情が好き。だがそれを伝えるとオレを喜ばせたくない為に我慢しそうだから言わない。 「今日はこの辺で終わりな」 「……っ」 「お前がイイコにしてたらこんなことしないで済むんだぜ?な、嫌ならオレの言う事黙って聞いとけ」 最後に凪の唇に噛み付いてから、仕置きを終えた。 明日は何を理由に仕置きをしてやろうかなーなんて考えながら、いい笑顔でその場を去った。 オレは性格が歪んでしまう程におまえを愛してるのにな。どうして伝わらないんだろう。 title いのちしらず 戻る ×
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