メモ | ナノ


1224 追記
「メリークリスマス、だって」

もうそんな時期なのか、通りで最近寒いと思った。

テレビ画面に映る、カラフルでポップな字幕のメリークリスマスという文字。
それを見て嘲笑った彼はチラリとこちらに目を向ける。

「クリスマスプレゼント欲しい?何でもいいよ、君の願いなら僕が全て叶えてあげる」

願い?
願いなんて一つしか無い。

ベッドに繋がれた手錠、逃げる術を無くす足枷、しまいには彼が握る鎖に繋がっているのは私の首にある皮製の首輪。
私は犬じゃないってのに。

「逃げたい」
「あぁごめんね、それは駄目」

何度も逃げ出そうとした。
でも無理だった。
手錠のせいで手首は赤く腫れ、逃げようと何度も何度もドアを叩いたり引っ掻いたりして手もボロボロ。
監視カメラは私が知っているだけで三台、盗聴器は一つ。

「どうして君は逃げたがるのかなぁ?ここにいるとお金の心配も何もいらないんだよ、僕が君を不自由になんかさせないのに……君が逃げようとするから手錠も足枷も、全部しなきゃならない」

テレビから流れるクリスマスを彩る音楽。なんだか懐かしくて彼に返事をせずにベッドに頭を預けた。
アナウンサーらしき男の人の声が聞こえた瞬間、ぱちんとテレビの音が消えた。思わず頭を上げて確認すると消えて真っ暗になったテレビ画面、そしてつまらなそうな表情の彼と目が合う。

「あーあ、僕以外の声を聞かせちゃった」

表情と同様に、つまらなそうな声。

「君が僕以外は見えなくなればいいのに……僕だけ見えて、僕の声だけ聞こえて、僕の匂いだけ感じて、僕の吐いた息だけを吸って、僕だけのものになったら……どれだけ幸せだろうね」

残念ながらその幸せは一生訪れないだろうね、と心の中で笑う。

「「消えればいいのに」」

同時に放たれたのはまったく同じ言葉。

「僕と君以外」
「あなただけが」

そして、その意味は交わることは無かった。


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