あららたいへんしくじった | ナノ



あらら



「マルコ聞いて!最近また胸大きくなったんだよ!」
「ブッ」


 そんな報告を聞いたマルコの口から勢いよく噴き出したコーヒーが真正面に居るエースに盛大に降りかかったのは言うまでも無い。「きったねぇ!何すんだよマルコ!」エースの怒りをまるで無視してマルコは飛んでもない発言をした女の方をまっすぐに見る。引きしまったヒップにくびれたウエスト。数年前はまな板同然だったバストは今ではたわわに実り迫力満点だ。それがさらに大きくなったと嬉しそうに男ばかりの船内で騒ぎ立てるものだから、逐一報告されるマルコに刺さる視線の量は計り知れない。


「あのなぁ、そう言うもんは誰かれ構わず言うもんじゃねぇよい」
「だってお父さんが何か変わった事があったらマルコに言えって」
「……そうかよい…」


 マルコは大きく溜息をつくと椅子に座りなおした。男所帯に育ったせいかこの女には羞恥心というものがまるで無い。この船中はともかくとして、港に降りた時にそのような事を言い出すかと思うとおちおち船から降ろし土も踏ましてやれやしない。おかしなことを言って下手に男を刺激してしまったら大変だ。刺激的なのはその容姿だけに留めておいてくれとマルコはその姿を見る度思うのだった。


「…親父の言う"変わった事"ってのは成長の事じゃ無く風邪を引いた時なんかにおこる体調の変化の事なんだよい」
「まぁまぁ、別に良いじゃねェかマルコ。貴重な情報をわざわざ報告してくれてるんだからよ」
「サッチ!」
「ホラよエース、顔拭け」


 そう言って濡れたタオルをエースに投げたのはリーゼント頭が特徴的な4番隊隊長のサッチだ。この口調からしてさっきの会話は割と広範囲に聞こえている事になる。それがわかるや否やマルコは本日2回目の溜息をついた。
 エースは受け取ったタオルで先ほどのコーヒーを拭きとると思い出したように笑顔で呟いた。この発言が後にとんでもない問題に発展するとはつゆ知らず。


「でも良かったじゃねぇかマルコ、巨乳好きなんだろ?」


「ッ!!おいエースとんでもねェ事言い出すんじゃねぇ!」
「あァ、そういやベッドの下に爆乳天国だっけ?そんな名前のエロ本あったもんな」
「サッチもいい加減な事言うんじゃねぇよい!」


「……マルコ…本当なの…?」


 びくりと3人の肩が震えた。先ほどまでのふざけ合っていた空気はすっかり身を潜め、代わりに嫌な予感だけが男たちを包んだ。


「そっ、そんな事ねェよ!おれ達が口から出まかせ言っちまっただけなんだ、別にお前の事なんて見てねぇよ!な、サッチ!」
「も、もちろんだ!マルコはお前の体なんて毛程も興味無いって言ってたぜ?」
「…おいお前達そこまで言う事ねェだろうよい…」



「マルコの…マルコのばかー!!」




たいへん

しくじった

「…マルコ、何で呼ばれたかわかるなよなァ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ親父これは誤解なんだよい!」



110218//しろ
相互記念に真生さんへ
これからも仲良くしてくださると嬉しいです!