うん、とても美味 | ナノ
 

彼のくちびるは甘い。おかしばかり食べてるから、きっと甘いにきまってる。だからそっと味見してみるの。

ぎし、とふかふかの高そうなベッドがゆれた。その中心でまるくなって猫みたいに眠る彼の髪にそっと触れる。気付かれないように、そっと彼の顔をのぞきこんでみる。きれいな顔にあるすこしだけひらいた唇。わたしはその唇にそっと舌を這わせた。ぺろ、と舐めてみる。


「…なに、してるんです」「わっ、L起きたの?」「こんなに堂々と寝込みを襲われたら誰だって起きます」「だってLの唇、甘いと思って…」「…?、甘いわけ無いじゃないですか。…あ、」


Lはむくりと起き上がってわたしを見つめると思いついたようにつぶやいた。いつもの無表情、ぼさぼさの頭、甘い匂い。ゆっくりと近づく彼の甘い唇。静かに重なった唇はやっぱり甘い。チョコレートや砂糖みたいな甘さじゃなくて、味わったことが無いような不思議な甘さ。きっとこれが彼の味なのね。いつの間にか離された彼の顔はいつもと同じ無表情のはずなのにどこかすこしだけ楽しそうに見えた。


「ねえ、なんでキスしたの?」「私だけが味見されるのは癪だったんです」


うん、とても美味



〆090112