「あーーーーっ!寒ィ!」 ぶぇーっくしょん!と豪快なくしゃみをしたエースはそのままずるずると鼻水をすすった。冬島近くのモビーディックの広々とした甲板の上でデッキブラシ片手に感じる寒さは誰だって同じだけど、エースはほとんど自業自得じゃないかと思う。いつものハーフパンツにあのハット、そして上半身は裸。それにマフラーを装備。なんというか、すごく……前衛的だ。 「上着着れば良いと思うんだけど…」 「部屋まで行くの面倒臭ェだろ」 それに早く終わらせてオヤジと島降りるんだー、とはしゃぐエースの声を背にごしごしとブラシで甲板を擦った。わたしもあのくらいオヤジに対して素直に接する事が出来ればいいのだけど、どうもうまくいかない。恥ずかしい、照れくさい、好き。全部の感情が混ざり合って上手に呼吸する事すらままならなくなってしまうのだ。吐く息が白い。島はもうすぐだけれど、わたしは今回もまたナースの姉さん達と一緒に出掛けるんだろう。たまにはオヤジと一緒に、出掛けてみたい…なんて言えるはずもないけれど。 「オヤジ!島に着いたぜ!」 「あァそうか。楽しんでこい」 「なっ、オヤジは行かねェのか!?」 「今回は気分が乗らなくてなァ」 部屋から出るのとほぼ同時にそんな会話が聞こえてきた。甲板まで出てその様子を見ると、丁度バタバタとまるで駄々をこねる子供のように暴れるエースがマルコとサッチに連行されていく所だった。わたしはというと、久しぶりの島なので持っている数少ない服の中で割とマシなものを選んで着替えが終わったところだ。それにも関らずオヤジが今回船に残るのを聞いてしまったので、一気に着替えたのを後悔している。 「お前ェは島に行かねぇのか?」 部屋にUターンしようとした丁度その時。上からオヤジの声が降りかかってきた。 「っ、オヤジ!いつから私が居るのに気付いてたの?」 「グララララ、おれを見くびるんじゃねぇよ。どこに居たってお前等の場所くらい把握できらァ」 「さすがだねオヤジ!あー…うん、今回はやめておこうかなって」 「その割には随分めかしこんでるじゃねえか」 「こ、これは!その…!」 さすがに、オヤジの傍にいたいから行くのやめました、なんて恥ずかしくて言えるわけがない!顔を真っ赤にして柄にもなくこんな服を着てしまった事を後悔していると、またオヤジの笑い声が降ってきた。 「じゃあ今回はおれの酒の相手をしてくれねェか」 「オヤジの!?でもわたしお酒注ぐの上手くないよ?」 「何言ってやがる、こんな別嬪と酒が呑めりゃァそれだけで最高じゃねぇか」 120123 しろ 彩さんへ 18万フリリクありがとうございました (白ひげで甘いお話) |