今日はクリスマス当日。何日か前から私以外のヴァリアーの皆はクリスマス旅行の沖縄に行っていて、今日の夜中に帰ってくる予定。
私はパーティーらしい服装に着替え、急いで集合場所のツナさんの家へと向かった。

「なまえー!早く早くー!」
「すみません!遅れました!」

私がツナさんの家に着くと、すでにみんなは集まっていた。私はすかさず京子ちゃんのほうへと歩み寄る。

「京子ちゃん!おはようございます!」
「おはよう!なまえちゃん!」

笑顔で京子ちゃんと挨拶を交わしていると、背後から物凄い視線を感じる私。私が恐る恐る振り返ると、そこには正直会いたくなかった人が居た。

「お、おはようございます、獄寺くん」
「…おはよーごぜーます、つーかてめえ集合時間に遅れやがっただろ」
「は、はい、すみません…」
「オレ達をだます罠でも考えてやがったな、てめえみてーな頭悪い女に誰がだまされるかよ!」
「そんなこと考えていませんよ!」
「嘘つけえ!てめえのことだ!ぜってー、」
「まーまー、朝からそんな怒鳴んなよ獄寺」

意味の分からないことを大声で吐き散らす獄寺くんの前に、山本が来てくれた。そのおかげで何とかその場からそそくさと逃げ去る私。
ちらっと振り返ると、まだ獄寺くんと言い争いをしている山本の姿が見える。

「リボーン、もうみんな揃ったからいいんじゃないの?」
「まだだぞ、雲雀が来てねえからな」

リボーンさんのこの言葉を聞いて、私達は一斉にリボーンさんへ視線を向けた。ツナさんが絶句しながらもゆっくりと口を開く。

「ま、まさかお前、雲雀さん呼んだとか言うんじゃ、」
「雲雀もファミリーの一員だぞ、パーティーに雲雀を呼ぶのは当たり前だ」
「えー!?何言ってんだよお前ー!」

叫び出すツナさん。京子ちゃんも少し心配そうな顔をしていた。雲雀さんも、パーティーに来てくれるんだ。
なんだか楽しみなような気になった私はみんなにバレないように小さく笑みを零した。

「大丈夫っスよ10代目!あいつは群れんの嫌いだからこういうとこには絶対来ないっスよ!」
「あ!そういえばそうだった!よ、よかったー、これで安心してパーティーを楽しめ、」
「集合場所はここであってるかい?」
「来たー!!」

獄寺くんとツナさんの安心も束の間、雲雀さんは私服姿で顔を出した。

「ちゃおっス、よく来たな雲雀」
「今日は楽しいイベントがあるそうだね」
「ああ、あるぞ」
「楽しみにしているよ」

リボーンさんと雲雀さんの怪しい話が終わったところで、私達はリボーンさん私用のリムジンに乗りパーティー会場へと移動した。リムジンに乗って移動中、少しだけひとりで座っている雲雀さんのほうに視線を送る。
雲雀さんは黙って顔を伏せて寝ていた。寝不足なのかな。
私は気にしないようにして、視線を前に戻した。

「す、すごい…」

私達は目の前のありえない光景に目が点になってしまっていた。リボーンさんに連れてこられた場所は何とも豪華な屋敷。
中に入ると、自分の服装が場違いな気がして少し恥ずかしくなった。

「凄い広いね!なまえちゃん!」
「は、はい!もうほんと凄すぎですよ!」
「リボーン!こんなとこどうやって借りたんだよ!」
「心配すんな、ここはオレの屋敷だからな」
「マジっすか!?さすがリボーンさん!」
「すっげーなあ」
「へえ」

みんな入るなり適当なテーブルへ座った。雲雀さんはやっぱり群れるのが嫌いらしく、ひとりで隅のテーブルに座っている。
テーブルの上には何ともいえない豪華な料理が広がっていて、私は見入ってしまっていた。
私、こんな豪華な料理ヴァリアーのみんなにいつも作ってあげてないな。今度作ってみようと考えていたら、舞台の上にチョコンと立っているリボーンさんがマイクを片手に声を張り上げた。

「今日はクリスマスだ、存分に楽しんでいけよ」

リボーンさんはグラスを片手に乾杯と言う。私達もそれに合わせて乾杯し、豪華な料理に手を出した。

「ツナくん、今日は私も呼んでくれてありがとう!」
「あ、いいよ!別にお礼なんて、京子ちゃんが来てくれただけで嬉しいからっ」
「ツナくん、何か言った?」
「い、いや!なんでもないよ!」

隣同士のツナさんと京子ちゃんの微笑ましい光景を見て、私は自然と口元が緩んだ。
やっぱりツナさんって京子ちゃんのこと好きだよね。
のほほんとした気分に浸っていたのも束の間、前を見ないで歩いていたら誰かに思いっきりぶつかってしまった。その反動で、後ろに倒れそうになる。

「うわ!」

倒れると思った瞬間、今度は腕を引っ張られ前へ倒れこむ形になった。凄い音を立てて倒れこんだ私はすぐに誰かを自分が下敷きにしているのだと気付く。
慌てて体を起こし謝ろうとした瞬間、一気に私は顔面蒼白になった。

「…おい」
「……」
「おいって言ってんだろうが!」
「は、はい!すみませんでした!」

目の前の彼の大声で私はハッと我に返りすぐにその人から離れた。よりにもよって、この人にぶつかるなんて。
私は眉間にシワを寄せ、わざとらしく盛大なため息を漏らす彼、獄寺くんに少しだけ視線を向ける。その瞬間、ジロッと私を睨んできた獄寺くんはゆっくりと口を開いた。

「てめえ、人にぶつかっといて謝りもしねーのかよ」
「す、すみませんでした!」

私の謝罪を聞いた獄寺くんはケッと悪態をついて、私に背中を向けた。私は急いで獄寺くんを呼び止める。

「ご、獄寺くん!」

私の声に反応した獄寺くんは少しだけ振り返った。

「さっきは、その、たっ助けて下さりありがとうございました!」
「チッ」

獄寺くんは私に舌打ちだけ返し、そのままツナさんのほうへ行ってしまった。
やっぱり、相当嫌われてる。
私はため息をついて、ジュースを口に運んだ。

「なまえ、食ってっか?」
「あ、山本!もちろんたくさん食べてますよ!」
「しかしすっげー豪華だよなー」
「リボーンさんって本当に凄いですよね」

だな。と言ってはにかむ山本の笑顔に私も釣られて頬が緩んだ。ちらっと雲雀さんの方に視線を向けると、ひとりで座って寝ているのが分かる。

「雲雀さん、ずっと寝てますよね」
「あいつは寝てることが多いからなー」
「…つまらないんでしょうか」

遠慮がちに言った私の言葉を聞いて、山本は優しく私の頭を撫でてくれた。

「まあ、あいつは群れるのが嫌いだかんな、それでもパーティーに来てくれたんだから少しは楽しみにしてたってことじゃねーか?」
「そ、そうですよね!やっぱり雲雀さんも楽しみだったんですよね!」
「はは、なまえ元気になったじゃねーか」
「山本のおかげですよ!ありがとうございます!」

ニッコリ微笑む山本に感謝しながら、私は雲雀さんに話しかけようと一歩踏み出した。
と、同時に舞台からリボーンさんの声が聞こえてきた。

「おまえら、楽しんでるか?そんじゃここら辺でゲームするぞ」
「ゲーム?」
「全員強制参加だからな」
「赤ん坊、それがイベントかい?」
「ああ、これが例のイベントだ」

リボーンさんの言葉を聞いて、瞬時に起き上がった雲雀さんはニヤリと笑い待ちわびたよと言って私達のほうへ近づいてきた、いっ一体どんなゲームなんだろう。
みんなでひとつのテーブルに集まると、リボーンさんが丸い穴の開いた箱を持って私達のところにやってきた。リボーンさんは箱をテーブルの中央に置く。
それと同時に、リボーンさんは淡々と言葉を話し出した。

「これからみんなでジャンケンをするぞ」
「ジャンケン!?」

ツナさんが驚いているにも関わらず、リボーンさんは話を続ける。

「そんでジャンケンに負けたやつから罰ゲームだ、この箱の中に罰ゲームの内容が入ってる。この箱の中に手を入れるのはオレだ、ちなみに、最後までジャンケンに勝ったやつにはクリスマスプレゼントがあるからな、気合入れてやれよ」
「ちょ、ちょっと待てよリボーン!それじゃ最後までジャンケンに勝った人以外はみんな罰ゲーム受けることになるじゃんか!」
「その通りだぞ、よく分かったなツナ」
「こんなことで褒められても嬉しくないし!」
「じゃ始めっぞ、ジャンケンポン!」

リボーンさんの言葉に釣られ、イヤだイヤだと言っていたツナさんや私達も素直に手を出してしまった。
誰が負けたのかな。恐る恐るみんなの手を見渡す私。
みんながパーを出している中、ひとりだけグーを出している人が。

「え、オレっスか?」
「獄寺負けたな、罰ゲームだぞ」
「ま、待って下さいよ!リボーンさ、」
「引いたぞ」

リボーンさんの問答無用な行動に、ガックリと項垂れる獄寺くん。みんなどんな罰ゲームが来るのか少し楽しみにしているようだった。

「獄寺への罰ゲームは、雲雀のトンファーを一発食らうだ」
「えー!?」
「ワオ、いきなり最高な罰ゲームが来たね」

雲雀さんはすかさずトンファーを取り出した。逃げようとする獄寺くんをどこから来たのか、マッチョな警備員がガッシリと取り押さえる。
口角を上げ、嬉しそうに雲雀さんは獄寺くんに一歩ずつ近づいていく。私達はただただ同情の眼差しを獄寺くんに送ることしか出来なかった。

「雲雀!てめえオレが回復したらぜってえぶっ殺して、」
「うるさいよ」

言ったと同時に雲雀さんの鋭いトンファーが獄寺くんに向かって勢いよく振り下ろされた。

「うげっ!」

獄寺くんの猛反抗も虚しく、見事瞬殺で終わった罰ゲーム、獄寺くんは数メートル先へ飛ばされていた。これは、絶対ジャンケンには勝たないと!
みんなも私と同じ事を思ったのか、みんなの目が本気になったのは言うまでもない。
リボーンさんは獄寺君から視線を外して、私達の方に向き直った。

「そんじゃ続けるぞ、ジャンケンポン!」

神様!どうか私を勝たせて下さい!
私は閉じていた目を、ゆっくりと開いた。

「ヤッベ、オレ罰ゲームだ」
「山本!?」
「山本が罰ゲームだな、んじゃ引くぞ」

山本は心底心配する私とツナさんに向かって『オレの罰ゲームなんだろな』とニッコリと笑っていた。
山本!こんな場面でも笑ってられるあなたをほんとに尊敬しますよ!

「山本の罰ゲームは、オレの屋敷の庭にあるプールで寒中水泳だ」
「寒中水泳!?」
「寒中水泳かー、一回やって見たかったんだよな!」
「え!?マジで!?」
「山本、警備員に見張らせるから警備員の前で50メートル泳いでこい」
「50メートルも泳がせるんですか!?」
「じゃ、行ってくるな」

山本はニコッと笑ってマッチョな警備員と一緒にプールの方へ姿を消した。残ったのは私とツナさんと京子ちゃんと雲雀さんの4人。私は今まで以上に闘志を燃やした。
獄寺くんみたいに殴られるのも、こんな寒い時期に寒中水泳するのもイヤだ!絶対勝たないと!

「じゃあやるぞ、ジャンケンポン!」
「あ、私負けちゃった」
「京子ちゃん!?」

次の罰ゲームの犠牲者はなんと京子ちゃんに決まってしまった。ツナさんは急いで箱に手を入れているリボーンさんに声をかける。

「おいリボーン!京子ちゃんは女の子なんだから難しいやつとかにすんじゃないぞ!」
「オレはこの箱の中に入ってる紙を読んでるだけだからな、引いたぞ」
「うわー!待てよ、リボーン!」
「京子の罰ゲームは、警備員が投げたナイフを避けるだ」
「えー!?」
「ナイフは一発だけだ、京子頑張れよ」
「う、うん!」
「京子ちゃん!危ないですよ!」

私の言葉を聞いて、大丈夫!私頑張るからと京子ちゃんは言った。
頑張るって言っても。チラッと警備員に視線を送ると、何ともたくましい体で顔はSランクの犯罪者並だ。指や首をバキゴキ鳴らしながら、京子ちゃんと距離をとる、3メートルくらい離れたところで警備員はナイフを構えた。
もしナイフが当たったら京子ちゃん死んじゃう!
ハラハラと挙動不審になっている私にお構いなく、ナイフは京子ちゃんに向かって放たれた。

「京子ちゃん!」

その瞬間、ツナさんが走り出した。が、床にこぼれていたジュースに足を滑らせツナさんは勢いよく顔面を床に強打する。その時飛んだツナさんの靴が見事ナイフに当たり、間一髪で京子ちゃんにナイフは当たらなかった。
一部始終を見ていた私達はポカンとしていたものの、すぐにツナさんの方へと駆け寄った。

「凄いです!ツナさん!さすがですよ!」
「ツナくんありがとう!」

ツナさんは顔面を強打したため、鼻血が出ていた。

「ツナ気絶してんな、仕方ねーから治療室に運んでくれ」
「はい!」

気絶したツナさんはそのまま付き添いの京子ちゃんと一緒に治療室へと運ばれて行く。
残ったのは私と雲雀さんのふたりだけとなった。

「これで最後だな、行くぞ」
「は、はい!」

私は右手に今までの中で一番祈りを込めた。
神様、どうかお願いします!勝たせて下さい!

「始めるぞ、ジャンケンポン!」

神様!!
負けた!?勝った!?どっち!?
私は閉じていた目を開き、お互いの手を見た。

神様のバカー!!
私は見事、雲雀さんの出したグーにチョキを出して負けていた。一瞬にして気力の抜けた私は一気に脱力する。

「負けたのはなまえだな、罰ゲームは、雲雀のトンファーを一撃食らうだ」

え!?よりにもよってそれですか!?

「ま、待ってくださ、」
「なまえ、これもボンゴレファミリーとしての修行だぞ」

修行!?打たれ強くなるための修行ですか!?いや、それよりあの雲雀さんのトンファーを食らったら。ちらっと気絶している獄寺君に視線を向けると、頬が真っ赤に腫れているのが分かる。い、いやだー!
私が逃げようとした瞬間、またマッチョの警備員に取り押さえられ身動きの取れない状態となってしまった。前方に目を向けると、ゆっくりと雲雀さんが近づいてくる。
痛いよね、絶対痛いよね!?ボスー!もうほんとに私死ぬかもしれませんよー!
私の思いとは裏腹に、雲雀さんはトンファーを振り下ろした。瞬間的に私はギュッと目をつぶる、同時に物凄い音が耳元から響いてきた。

…えっ?当たった?ゆっくりと目を開くと、トンファーは顔のすぐ横に突き刺さっていた。
唖然としていると、雲雀さんはトンファーを壁から抜き、私と視線を合わせずに一言だけ呟いた。

「手がすべった」

それだけ言って、スタスタとリボーンさんの方へ歩み寄る雲雀さん。私はただただその場に立ち尽くしていることしかできなかった。

「雲雀、お前が優勝だぞ、クリスマスプレゼントにこれをやる」
「なにこれ?」
「家に帰ってからのお楽しみだぞ」
「ふーん」

リボーンさんは雲雀さんにプレゼント用の箱を渡し、波乱万丈のクリスマスパーティーは幕を閉じたのだった。


「ただいまー」

ヴァリアーのアジト内に入ると、中は静まり返っていた。まだみんな旅行から帰ってきてないのかな。私はみんなの帰りを待とうと思い服を着替え、広間のソファに腰かけた。
今の時間帯はいつもだったらみんなで夕食を食べてる時間だよね。早く、みんな帰ってこないかな。

「…しし、なまえこんなとこで寝てんぜ」
「僕達の帰りを待っててくれたのかな」
「あらあら、そんなことしなくてもいいのになまえったら」
「寒そうだ」
「誰が部屋に運ぶ?」
「チッ、めんどくせえ野郎だ、そこら辺の毛布でもかけてりゃいいだろ」
「でも寝にくそうだぜ?」
「そうよー」

深い深い、夢の中。自分の体が宙に浮かんだ気がした。
ゆっくりと、優しく。私はふかふかのベッドに運ばれて、暖かい毛布を掛けられる。
メリークリスマス、なまえ。
耳元で呟かれた言葉に私は幸せな気分になった。
今年のクリスマスは、楽しかったよ。

雲雀家。

「…なにこれ」

雲雀の手には箱から出された並盛の学校フィギュアと校歌のCDが。

「最高じゃん」

雲雀はどこか嬉しそうに、それを見ていた。

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