今日からまた、新しい一週間が始まった。私は大きく深呼吸をして、アジトを出る。

「ツナさん!リボーンさん!おはようございます!」
「あ、なまえおはよう!」
「ちゃおっス、なまえ」

前方に歩いているふたりを見つけ、私はすぐにふたりにかけ寄った。

「寒いですねー」
「そろそろクリスマスだからな」
「あ、そうです!もうすぐクリスマスですよ!ツナさんは誰とクリスマス過ごすんですか?」
「え!?そんなの家族とか、友達とかで」
「何言ってんだツナ、今年のクリスマスはファミリー全員で過ごすぞ」
「え!?」

リボーンさんの言葉に思わず私とツナさんの声がハモってしまった。

「それと京子も呼ぶからな」
「えっ!?」

京子ちゃんの名前に反応して、ツナさんの顔が一気に真っ赤に染まる。ツナさんもしかして京子ちゃんのこと…って、それは置いておいて、ヤバイよ!クリスマスはヴァリアーのみんなと一緒に過ごすって決めてたのに!これじゃあヴァリアーのみんなとクリスマス過ごせない!

「あ、あの、リボーンさん!それって絶対なんですか!?」
「絶対だ、変更はしねえぞ」

私はふたりにバレないように小さくため息をこぼす。

「10代目ー!リボーンさーん!おはようございます!」
「獄寺くんおはよう」
「ちゃおっス」

いきなり後ろから声を張り上げ、獄寺くんはダッシュでツナさんの隣にきた。
私は少しだけ、ツナさんの後ろに身を引いた。そんな私を鋭く睨み上げ、獄寺くんは私に向かって口を開く。

「お前いたんだ、ぜんっぜん気付かなかったぜ、おはよーごぜーます」
「お、おはようございます」

私が挨拶を交わすと、すぐに視線を前に向ける獄寺くん。彼に対して苦手意識を高めていく私は、また小さくため息を漏らした。

「おはようございます!」
「あ!おはようなまえちゃん!」
「おはよう、なまえ」

教室に入って一番に京子ちゃんと花ちゃんに挨拶をした。

「よっ!なまえ!」
「山本くん!おはようございます!」
「くんは付けなくていいんだぜ?」
「あ、そうでした」

苦笑いをする私にニコッと笑いかけてくれる山本は、ほんとにいい人だと私は心底思った。

「どけよ!野球バカ!」
「なんだよ獄寺、朝からカリカリしてんなー」
「るせっ!」

山本を押しながら無理矢理自分の席に移動する獄寺くん。私が少しだけ獄寺くんに目を向けると、獄寺くんは瞬時に睨み返してきた。
凄い睨んできてる。やっぱり、私のことまだ怪しいとか思ってるのかな。
私は顔を引きつらせながら、ゆっくりとツナさんの隣の自分の席に座った。

「なまえ、お昼一緒に食べない?」
「え!?いいんですか!?」
「うん、屋上で食べようよ」
「はい!ありがとうございます!」

ツナさんに誘われて、私は一緒に屋上に向う。ツナさんのほかにも、山本と獄寺くんそして京子ちゃんと花ちゃんも一緒でみんなで屋上に向かった。

「いただきます!」

嬉しそうにお弁当を広げて京子ちゃんが言うと同時にみんな一斉にお弁当を開けた。

「……」
「……」

た、食べにくい。
私は見事、獄寺くんと山本に挟まる形で座ってしまっていた。ちらっと横を見ると、物凄く不機嫌そうな顔をしている獄寺くんが見え、私はすぐに視線を戻す。
よりにもよって獄寺くんの隣に座っちゃった。私がため息をつくとそれに気付いた山本が声をかけてきてくれた。

「どーしたなまえ?」
「あ!いえ、なんでもないです」
「あんまり気にすんなって、獄寺は初対面のやつとどう接していいのかわかんねーってだけだからさ」
「え!?」
「は!?てめえ!何ふざけたことぬかしてやがる!」

獄寺くんはすぐに山本を鋭く睨んだが、山本はいつもの笑顔でマイペースに答えた。

「お前さっきからなまえのこと睨みすぎだぜ?」
「だ、誰もこんなやつなんか見てねーよ!」
「そーそー、なまえがかわいそうだよ」
「は、花ちゃん!?」

いきなり話に加わった花ちゃんは、ねーと私に同意を求めてくる。花ちゃん、すごい。

「獄寺くん、なまえのどこが気に食わないの?」
「全部です!」

ツナさんの質問にキッパリ答える獄寺くん。私はますます落ち込んだ。

「第一、オレはまだこいつのこと疑ってるんス!」
「え!?まだなまえのことスパイだとか思ってるの!?」
「当然です!」
「そりゃねーわな」
「野球バカは黙ってろ!」

獄寺くんの物凄い剣幕にも、山本はヘラッと笑うだけである意味私は山本をかなり尊敬した。

「とにかく!オレはこいつなんて認めねえからな!」

最後に私をギロッと睨み、獄寺くんはスタスタと屋上から去っていく。

「ねえ、ツナくんボンゴレってなに?」
「うっ!ななんでもないよ!」
「なーんか怪しいわねえ」
「ほ、ほんとに何でもないんだよー!」

ツナさんが京子ちゃんと花ちゃんの質問責めに合っている時、私はかなり焦っていた。
獄寺くんはまだ私のこと疑ってるんだ。これからはもっと気をつけて行動しないと。
私は気持ちを落ち着かせるようにグッとお茶を飲み干した。

「え?」
「え?じゃないだろう、返事はどうした」
「は、はい、わかり、ました」
「すぐに行くんだぞ」
「はい」

担任が教室を出て行くと同時に帰りのホームルームが終了した。みんな私をチラチラ見て、いそいそと帰り始めている。

「なまえ、大丈夫?」
「花ちゃん、京子ちゃん」

放心状態の私の元に、花ちゃんと京子ちゃんが来てくれた。

「今から、その、風紀委員の集まりがあるんだって?」
「う、うん」
「なまえちゃん…」

ふたりして何とも言えないような顔をした。私とふたりの空間にビミョーな雰囲気が流れ始めた頃、山本とツナさんが私の傍に歩いてきた。

「なまえ、その、一緒に行こうか?」
「え!?本当ですか!?」
「おう!なまえひとりだとかわいそうだしな」
「あ、ありがとうございま、」
「そうはさせねーぜ!」

私の言葉を遮って、獄寺くんは私を見下してくる。

「呼ばれてんだろうが、早く行けよ」
「あ、あの」
「早く行けって言ってんだろーが!!」
「は、はい!」

獄寺君の剣幕に負け、私はダッシュで教室から出て行った。

「さー10代目!邪魔者もいなくなったことだし!帰りますか!」
「え!?でっでもなまえが」
「そーだぜ獄、」
「さーさー!帰りましょう!」

山本の言葉を遮り無理矢理ツナさんの背中を押す獄寺くん。結局、みんなはそこで私のことを気にしながらも帰ってしまったらしい。

「…来ちゃった」

私は目の前の扉を開けられずにいた。手を伸ばしても開けようとはできずに私は四苦八苦している。私が最後の勇気を振り絞って応接室の扉に手を掛けた瞬間、勢いよく中から扉が開けられた。
当然、私の頭に物凄い音と同時に扉がぶつかる。

「いたっ!」
「なんだ来てたんだ、来てるならさっさと入ってきてよ」

この声は。
ゆっくり顔を上げると、案の定雲雀さんが私の目の前に立っていた。

「早くしてくれない?」
「は、はい!」

私は頭を抑えながらやっとの思いで応接室の中に入る。
中には数名の風紀委員がいた。

「君達はこの書類を頼んだよ」
「はい!」

その数名の風紀委員はすぐに資料を持って応接室から出て行ってしまった。応接室内には、私と雲雀さんのふたりだけ。
私の心臓はありえないくらいドキドキ鳴っていた。

「君にはここの掃除をお願いするよ」
「え!?は、はい!」
「綺麗にしてね」
「はい!わかりました!」

雲雀さんはそれだけ言うとじゃ、僕も仕事があるからと言って応接室から出て行った。

「はー凄い緊張し、」
「そうだ、ひとつ忠告しておくけど」

行ったと思った雲雀さんがヒョッコリ扉から顔を出し、私はすぐに姿勢を正した。

「僕の机に触れたら咬み殺すよ」

雲雀さんは、じゃと言って今度こそ本当に応接室から出て行った。
私は大きく深呼吸をし、雲雀さんの机には絶対近寄らないようにしようと固く心決めた。

「よし!やりますか!」

私は気合を入れ、掃除用具を取り出す。掃除は私の得意分野だし、頑張らないと。
雲雀さんが帰ってくるまでに掃除を終わらせようと、私は急いで掃除を始めた。

「ふー、最初よりは綺麗になったよね」

1時間くらいして、一段落した私は応接室内をグルッと見渡した。ほこりひとつ落ちてない状態にしないと。
念入りによく見渡し、私は最後にソファを掃除することにした。

「ソファで掃除は終わりだから頑張ろうっと!」

私は勢いよくソファに手を着いた。その瞬間。
気持ちいい!
ソファの弾力はヴァリアーのアジトのソファ並にふかふかで、凄く気持ちいい。私はこっそりとソファに横になってみた。

「……」

アジトのと同じだー!
感動した私はゆっくりと目をつぶってみる。この居心地のいい感触はまさにアジトのソファそのもの。私はアジトのソファに横になるとすぐに寝てしまう。
私はいつしか自分が応接室に居るという事も忘れ、ゆっくりと眠りについてしまった。

「ねえ」
「うーん」
「なんで寝てるの」
「まだご飯作る時間じゃないですよー」
「は?」
「もう少し寝かせてー」
「起きてくれないかな」
「ベルーそんな事言わないで下さい…」
「は?それ以上寝ぼけてると咬み殺すよ」
「ベル、なんで雲雀さんの真似してるんです…って!今何時ですか!?」

がばっと起き上がると、目の前には雲雀さんが立って居て、ご丁寧にもトンファーを持っていた。恐る恐る視線を時計に向けると、あれから1時間も寝ていたことに気付く。
これはヤバイ。
私がゆっくり雲雀さんの方を振り返ると、雲雀さんは応接室を見渡していた。チェックしてるのかな。私はハッとしてすぐに雲雀さんの前に土下座をする。

「寝てしまって本当にすみませんでした!で、でも掃除はやりましたのでどうかお許しを!」
「掃除はやったみたいだね、綺麗になってるし」
「はい!」
「寝てたことは許してあげる」
「ほ、ほんとですか!?」

私が顔を上げると雲雀さんはトンファーをしまってくれた。よかった!掃除しててほんとによかった!

「僕の机には触れてないよね?」
「はい!もちろんです!」
「ふーん」

雲雀さんは机を軽くチェックした後、私の方に視線を向けた。

「じゃ、もう帰っていいよ」
「はい!」

私が心の中でガッツポーズをすると、雲雀さんが私を呼び止めた。

「なまえ」
「は、はい!」
「おつかれ」

雲雀さんは言葉と同時に、何かを投げてくる。私は慌てながらもそれをキャッチした。
あったかい、ココアだ。

「ありがとうございます!」

頭を下げてお礼を言ったとき、少しだけ、雲雀さんが笑ったように見えた。

「し、失礼しました」

パタンと扉を閉めた私はゆっくりと玄関へと向かう。初めて、雲雀さんに名前呼ばれた、それに笑ってくれた。
なんだか嬉しくなり、雲雀さんからもらったココアをギュッと抱きしめた。


「実は、みなさんに言わなきゃいけないことがあるんです」

ヴァリアーの夕食で、私は言いにくそうに話を持ち出した。

「なーに?どうかしたのなまえ?」
「その、実は」

心配そうに尋ねてくるルッスーリアに私は申し訳なさそうに言葉を発した。

「実は、クリスマス旅行に行けなくなりました」
「そ、それはほんとなの!?」
「はい、ごめんなさい…」

私の発言に、みんなは心底驚いていた。ボスも私の言葉に反応し、スクアーロはガチャーン!とフォークを皿に落としている。

「何でだよ、なまえ」
「その、クリスマスはボンゴレのみんなと過ごすことになってしまって」
「うっわ、マジ?」
「はい…」

ベルは少しだけため息をつき、コーヒーを口に運んだ。

「なまえがいない旅行なんてつまんないな」
「ごめんなさい、マーモン」
「なまえは悪くないんだから謝らないでよ」

マーモンは優しく私に声をかけてくれた。

「ボスー、なまえは行けねーみたいだけど沖縄旅行行くのかよ?」
「変更は無しだ。旅行には行く」

ベルの問いかけにすぐに返事をしたボス。
私はできるだけ、みんなが心配しないようにニッコリと笑ってみせた。

「みなさん、楽しんできて下さいね!」
「何か買ってくるね」
「ありがとうございます!マーモン!」
「うしし、しかたねーからオレも買ってきてやるよ」
「ベルありがとうございます!」
「私も買ってくるわよ!」
「オレも…」
「ルッスーリア!レヴィ!みなさんありがとうございます!」

なまえがいなきゃつまんねーよと言って少しだけ拗ねた顔をするベルに私はまたお礼を言った。みんな、ほんとにいい人ばっかりだな。

その夜。私はマーモンに絵本を読んであげるため、マーモンの部屋に向かっていた。今日は何読んであげようかな。
そんな事を考えていたらマーモンの部屋の前に誰かがいるのが見えた。不審に思いながらもその人を見ていると、こっちの視線に気付いたのか、その人はゆっくりと私に近づいてきた。近づくにつれ、顔がはっきりと見えてくる。あの人は。

「ス、スクアーロ」
「よう」

すぐ目の前にきた人物はやっぱりスクアーロで、上から見下ろされる感覚に私は少し動揺した。

「どうしたんですか?」
「お前、旅行来ねえんだろぉ」
「は、はい」

旅行に行けなくなったことを思い出した私は少しだけ視線を下に向ける。

「…お、お前に」

スクアーロは顔を真っ赤にしてやっとで言葉を口にした。

「お前に、クックリスマスプレゼント買ってくるからなあ、ま、待ってろよぉ」

驚いた。まさかスクアーロが私にクリスマスプレゼントをくれるなんて。
私はなんだか嬉しくて、スクアーロに初めて笑顔を向けた。

「ありがとうございます!旅行楽しんできて下さいね!」
「おう」

私の顔を見て、さらに顔を真っ赤に染めるスクアーロ。私が首を傾げていると、スクアーロは私の手をギュッと握ってきた。

「スクアーロ?」
「なまえ、オレ」
「なまえ、こんなとこで何してんの?早く僕の部屋においでよ」
「マーモン!今行きますね!」
「う゛お゛ぉい!」

マーモンの部屋に向かう私に、スクアーロはまだ何か言いたそうにしていた。私はごめんなさいと言ってスクアーロに頭を下げながらマーモンの部屋に向かう。
途中、スクアーロの方を振り返ると、スクアーロはがっくりと項垂れていた。

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