あれから私にはまた忙しい日々が帰ってきた、毎日パイナポーのナルシー話を聞いて、ハンバーグを食べてもらえず投げ捨てられて、また髪引っ張られてフォーク刺されたり、何度も何度もいやになって逃げ出そうとも思ったけど、私は頑張った。
この屋敷に来てから二週間経った今日、私は確信した、きっといや絶対、私はこの人に出会うためにここに来たんだなと!そう、こんな素敵な方に出会うために!
その夢のような彼は毎日、お昼ご飯の時間帯にあるものを片手に持ち、必ずこの屋敷にやってくる。

「まいどー!ご注文の寿司届けにきましたー!」
「あ、ありがとう、ございます」

パタパタと玄関に向かうは大人しい印象を持つ髑髏ちゃん、少しそそっかしいところもある彼女だが、それをにこやかな爽やか笑顔で見守ってくれる寿司屋のお兄さんに私は最近、うっとりさせて頂いている。

「全部で2000円です」
「はい、えっと…あ、財布忘れてきちゃった」
「また?ハハ、お前っていっつも忘れてくんのなー」
「ご、ごめんなさい、いま持ってきま「おい!いつまで待たせんだびょん!こっちは腹へってるっつーのにこのノロマ!」

うお、きたきたきたきた!私はサッと物陰に隠れその姿をジッと睨みつけた。あれは髑髏ちゃんの主、城島様!私が毎日こっそり見に来るこの寿司屋のお兄さんの爽やか笑顔をあいつは毎回毎回壊しにやってくる、前なんて髑髏ちゃんを怒鳴りつけて寿司屋のお兄さんをかなり困らせていた。
城島様の登場に少し動揺を見せる髑髏ちゃんと寿司屋のお兄さん、そんなのお構いなしにそいつは髑髏ちゃんに近づきいきなり一発頭を殴った、ちょ、なんてことするんだこのバカ!髑髏ちゃんは繊細なんだぞ!可愛いんだぞ!まだ一回も話したことないけど!ほら、もう泣きそうじゃん!このアホイヌめっ!

「お前、なんで今日も財布忘れてんだ!ほんっと学習能力のねえバカらな!使えねえんだよテメェ!」
「う、ごっごめんなさい、犬様、」
「まあまあ、そんな怒らなくてもいいじゃねーか」
「お前は黙ってろよ!この部外者!!」

んな!ちょ、城島!!てめっ誰に向かってそんなこと言ってんだ!寿司屋のお兄さんに謝れバカ!土下座しろ土下座!
あれでも主様だと必死に思い込み今でも殴り込みにいきそうな足にギュッと力を加え下唇を噛み締める、寿司屋のお兄さんは城島様の暴言にも屈せずやめろと髑髏ちゃんを護ってくれていた、なっなんていい人なの!最高です寿司屋のお兄さん!!
寿司屋のお兄さんの素敵さに惚れ惚れしていると、城島様が乱暴にお兄さんに代金を払い寿司と髑髏ちゃんを引っ張りながらこっちに歩いてきた、私はすかさず何も見ていないとでも言うように口笛を吹いて明後日の方向に視線を移すが、なぜかギロリと城島様に睨みつけられてしまった。

「うるせーびょん!下手な口笛なんて吹いてんじゃねー耳が壊れんだろ!!」

こっ壊れるって、そんなに下手に口笛吹いた覚えないんですけど!なんとも偉そうにズンズン歩いていくその城島様の後姿に思いっきり舌を出してやった、あんなヤツ主様でもなんでもない!もう今度から様無しで呼ぼう!呼び捨てで呼んでやるよ城島!
ふんと満足気に玄関のほうに顔を向けるとそこにはまだ寿司屋のお兄さんがいて、しかもこっちを不思議そうにジッと見つめていた、えっちょ、もしかしてさっきの全部見られてた!?うわ、どどどうしよ、すっごい恥ずかしいんですけど。

「なあ、お前もここのメイドか?」
「え、あっはい!」
「やっぱいろいろ大変だろ?」
「はい!それはもうほんとに!」

や、やったー!寿司屋のお兄さんから声かけてもらっちゃったよ!凄い嬉しい!!私は無駄にスキップしながら寿司屋のお兄さんの傍まで一直線、初めて間近で見る寿司屋のお兄さんの顔はそれはそれはもう、本当に素敵で倒れそうになるのを必死に堪え、胸元のネームプレートを凝視、おお、この人の名前は山本武というんですね!よし覚えたっ!

「お、もう時間ねえな、じゃあまたな」
「はい!また明日来て下さいね!」

私の言葉にハハッと笑みを浮かべ軽やかに去って行った山本さん、ああ、あなたの笑顔だけが私の癒しですほんとに、あなたの笑顔を見れただけであの3人の世話を頑張ろうと思えるんですよ、山本さん、ぜひとも明日また来て下さい、明日は物陰からコッソリじゃなく堂々と見てますので。
もちろん、にっくき城島を睨みつけながらですが。

山本さんの笑顔に癒されのほほんとしている矢先、私の胸ポケットからクフフークフフのフー、クハフハ!この世で一番美しいのはだーれだ?と何とも意味不明な機械音が聞こえてきた、六道様が何か用事があるときこの変な機械であなたを呼びますからと私にくれたあの玩具だと思い出し、私はため息をつきながらゆっくりと足を進める。
六道様はこれで知らせてくれるし、雲雀様は前にくれた一日のスケジュール表通りに動けばいいけど、ザンザス様は何も言ってくれないから私が判断して動くしかないんだよね、ああ、やりにくい。

「君、こんなところで何してるの」

突然、背後から聞き覚えのあるあの声が聞こえ私はゆっくりと振り返る、そこにはなぜかトンファー片手にかなり不機嫌な雲雀様が立っていた、え、なんで怒って、いや、待てよ、いま何時だろって…もう時間過ぎてるー!!この時間は雲雀様のヒバードをお散歩させる時間なのに!

「仕事もしないでのんきに遊んでるなんていい度胸だね、そんなに死にたいなら今すぐ咬み殺してあげるよ」
「い、いえ!結構です!ごめんなさい!」

私の言葉など聞こえないとでも言うようにブンブンとトンファーを振り回す雲雀様、スクアーロさんがそれに気付いて止めに入ってくれるまで私は死に物狂いで逃げ回っていた。

その後の六道様。

「遅いですよ!もう僕が主演の『僕ってカッコイイ!六道骸のビューティフルパインレンジャー!』は終わっちゃいましたよ!」
「そうですか」

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