「バカのくせに、よくもこの僕をコケにしてくれましたね、クフッ」
「い、いいえ、決してそんなわけでは」

ニコニコとありえないほどの笑みを顔面に貼り付けたままの六道様は、笑っているのにも関わらず私の頭を鷲掴む手の素晴らしいほどの握力が殺意を込めていることは確かで正直恐すぎる。というかこの人絶対私のこと殺す気だよね、頭いたすぎてもう感覚ないしミシミシいっちゃってるし、ちょ、ほんと土下座でもなんでもするんで本気やめてほしい。

「ろ、六道様!どうか」
「ああ?なんでてめえがいやがんだ、この変態野郎」

ほとんど半泣き状態で六道様に懇願していた私を無視して、突然の六道様の出現にザンザス様は眉を潜める。さっきからいたのにも関わらず声をかけられて初めてザンザス様の存在に気付いたのか、六道様はザンザス様に視線を送るとなんとも嫌そうな顔をして、ゆっくりと私の頭から手を退けていった。な、なんかよくわかんないけど助かった。

「それはこちらのセリフです、日本にいないはずのあなたがなぜこんなところにいるんですか?まさかこんな小娘に会いにきただなんてそんな気色悪いこと言いませんよねえ」
「はあ?んなわけねえだろバカかてめえは、変態は変態らしく散ってろカスが」
「クフフ、どうやらさぞかしゴールデンウィーク中ヒマなんですね、一緒に旅行に行く人もいないなんて本当に寂しい人…クフ、あ、笑ってしまいすみません、クフフ」
「ハッ、なにわけわかんねえこと言ってやがんだ変態が。そりゃ全部てめえのことだろーが、ぶはっ!てめえのことてめえでけなしてるたあ笑わせるにもほどがあるぜ、くくっ」
「ほんとうにあなたはいちいち癇に障る人ですね、いますぐ僕が消してあげましょうか」
「上等だ、てめえの変態面ごとぶっ殺してやるよ」
「潰しあってくれるなら嬉しいけど、どちらか一方が残るなら僕が両方まとめて咬み殺してあげるよ」

激しさを増す口論と睨み合いの中、突然ふたりとはまったく別の声が話しに混じってきた。もしやと思い後ろを振り返るとやっぱりそこには雲雀様の姿が。明らかに不機嫌オーラ出しまくりの雲雀様は私達に近づくと、私には目もくれずほかのふたりを睨み上げている。というか雲雀様の服のところどころに血の痕があるんですけど、これってあの不良達の血だよね絶対、どうしよう、殺してないかすごく心配だ。

「まったく、次から次へと一体なんなんですか」
「それは君達のほうだよ、なんでこんなとこにいるんだい、草食動物の分際で」
「てめえには関係ねえだろ、さっさと失せやがれカスが」
「ついでにあなたも消えてくれると僕としては清々するんですけどね」
「まず君が消えなよ」
「あなたが消えてください」
「チッ、ごちゃごちゃと面倒くせえ、ようはてめえらまとめてかっ消しゃ済む話だ」
「へえ、それいい考えだね、それじゃあすぐにでも咬み殺してあげるよ」
「できると思っているんですか?クフ」

雲雀様も加わったことでさらに口論の激しさはヒートアップ。3人は完全に私の存在を忘れて睨みあっている、なんというかこのままじゃ本当に殴り合いになっちゃうんじゃないですか、それはそれで嫌だけど止めて逆にキレられたら最悪だ、そっちのほうが嫌すぎる、というかすっごい寒いんですけど、普通にしてるこの3人やっぱり凄すぎる。

「どちらからでも僕は構いませんよ、どうせ勝つのは僕なんですから」
「カスが」
「そのうるさい口から壊してあげようか」
「ちょ、ちょっと、みなさん落ち着いてください」
「あっれー!女の子はっけーん!!」

やっとの思いで声をかけたというのに、私の声はあっさりと背後からかけられた大きな声によって遮られてしまった。目の前にいる3人の主達はそれすら気付いていないようでまだ睨み合いを続けている。一体誰だろうと不思議に思いながら後ろを振り返ると、満面の笑みを浮かべ私のほうへと近づいてくるふたりの海パン姿の男がいた。

「いやー、実はオレ達ここら初めてでさ、よかったら道教えてくんないかな?」
「その、私もここに来るのは初めてなので、道とかはよくわかんないです」
「そっかー、そんじゃちょっとオレ等と遊ばない?」
「は?いや、私は」
「いいじゃん、ちゃんとオレ等奢るしさー」
「奢るってなにを?」

どんどん詰め寄られ正直焦っていた最中、後ずさったと同時に背中に何かが当たる気がして後ろを見ると、さっきまで睨み合いをしていたはずの雲雀様が立っていた。気付けばほかのふたりは海パン男ふたりを囲むように立っている。す、すごい早業、一体いつの間に。

「な、なんだお前等」
「奢るって言っても海パンしかはけない貧乏人なんだからどうせ対したものじゃないんでしょ、それなのによく堂々と奢るなんて言えたね、滑稽すぎて笑えないよ」
「う、うるせー!大体てめえらには関係ねえだろ!」
「明らかに関係ないのはあなた達のほうですよ、いまの時期に海パン一丁でなにほっつき歩いてるんですか、根本的にナンパをする場所を間違えていますよ、それにその海パン正直キモイです」
「キモイ!?」
「失せろ、カス共が」

幸い外傷を与えられることはなかったものの、精神的に多大なるダメージを受けたふたりの海パン男はよろめきながらも去って行った。3人の主達から一斉攻撃を受けた海パン男になんとなく同情していると、六道様にいきなり頭を鷲掴みにされた、ちょ、なんでまた!?

「い、いたっ、痛い、離してください六道様!」
「クフフ、よかったですねえ、普段ナンパとは縁のないあなたが極上のひとときを過ごすことができたんですからねえ」

そう言うと最後に思いっきり握り締め、六道様はすぐに手を退けてくれた。い、痛すぎる、なんで私ばっかりこんな、というかなんでまた頭やられたんだろ、六道様怒ってた?うそ、だって六道様を怒らせるようなことなんてしてないのに、たぶん、うんしてないよね、うう痛い。

涙ながらに顔を上げると、辺りはすでに真っ暗で海も暗がりであんまりよく見えない。あーあ、結局あのときのメンバー全員と一日過ごしちゃったよ。でも、少しだけみんなとまた会えて楽しかったな。

帰宅後。

「おかえりー!遅かったわねえ、というか聞いたわよ!あんた彼氏できたんだってねえ!もう嬉しくてお赤飯作っちゃったって、えええ!?」
「母ちゃんどうしたのーって、姉ちゃん彼氏増えてるー!?」
「ちがうから!!この3人は、えっと、たっただの友達なんだってば!」
「姉ちゃんどうやって3人も彼氏つくったんだよー」
「だからちがうってば!!」
「…不愉快ですね」
「群れすぎ」
「うぜえ」

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