「とうとうこの日が来たわね、なまえ、準備はできてる?」
「オ、オッケー」

友達の黒川花と今日という待ちに待ったこの瞬間を2人で気合を入れて噛み締める、この人生最大のチャンスを逃せばあとはない、これからの人生を楽に楽しく生きるためにも今日は絶対にミスをしてはいけない。
私と花は持てるだけの荷物を大きなカバンに詰め込み、いざタクシーに乗り込む、行き場所は今日から冬休みの間ずっと泊まりがけで仕事をすることになった場所、私も花も緊張を隠しきれず何度も何度も深呼吸を繰り返した。

今日向かうは私と花が死に物狂いで受かったアルバイト先、私のクラスでもアルバイトが流行っていて私達も冬休みの期間を利用して何かやりたいと、出来るだけ大金をゲットできるであろうアルバイトを探していた、そして見つけたのがこの住み込みで行うバイト。
それは学生のみのもので、冬休みの期間中住み込みで世話係ができる人間を募集しているものだった、そのバイト代は何とも目を疑いたくなるほどの金額、これはやるしかない、私と花は大金を手にするべくそのバイト先にすぐさま電話をした。

そんなバイトを他の人間が見逃すはずもなく、それから何度も面接やら筆記やらを受け何とか数人の中の一人として残ることができた、花は私より断然頭がよかったが私がこの試験で残れたことは奇跡に近いほどありえないことで、2人で大金ゲットのためバイト頑張ろうねと花と涙を流して喜んだのを今でも覚えている。
冬休み中一度も家に帰ることが許されないというバイト内容と、私達が世話をするのが果たして人間なのか動物なのか、そんなことさえハッキリ明記していないこのバイトに親は大反対したが大金の話をしたらすぐに了承してくれた、さすが私の親、家を出る前に年末は忙しくて一緒にバイト試験を受けることができなかった京子に挨拶をして私と花は今、タクシーの中にいる。

顔を俯かせ必死に心臓を抑えているとふいにタクシーが止まったのを感じた、代金を払いタクシーから降りる、目の前に広がる光景を前に花と2人でゴクリと息を飲んだ。
想像以上の大きな屋敷が広がるそれは人里より少し離れた位置にある、ドクンドクンと鳴り響く心臓を押さえインターホンを押すと、監視カメラで私と花は観察されそしてゆっくりと自動的に門が開かれた、大きな扉を開け中から綺麗な鬢髪の長身の男の人がこっちに近づいてくる。

「待ってたぜえ、お前等で最後だ」
「は、はい」

来いと言われるがまま私と花はお互いに手を握り合い大きな屋敷の中に恐る恐る入っていく、長い銀髪の男の人のあとをついていきながら豪華すぎる室内の迫力にもう言葉さえ出なかった、一体私達はこれから誰を世話していくと言うのだろうか。
高そうな部屋の扉が開けられその中に私と花は通された、中には何とも高そうなソファに腰かける私達と同じ目的でここに来たであろう女の人が4人座っていて、私と花も促されるように少し離れたソファに腰かけた、この人達もあの試験に受かった人達なんだ。

「よく来たなぁ、オレの名はスペルビ・スクアーロ、これからの冬休み期間中お前達6人にはある人間の世話係をしてもらう、いいか、お前等が世話をする人間はどの方も一般人とはほど遠い常にトップの方々ばかりだ、くれぐれも失礼のないようにすることだぁ」

私と花を案内してくれた銀髪の男の人、スクアーロさんが話始めた内容に私達は冷や汗を流した、そんなに凄い人の世話をするなんて、だから屋敷もバイト代も凄いんだ、だんだんと広がる不安を押し殺すように私はギュッと手を握る。

「お前等が世話をする主は、お前等の写真と分析表を見て主が直々に選んでくれたぜえ、基本は世話係一人に一人の主だが今回は例外に一人だけ3人の主がつく世話係がいる、じゃあ主を紹介するぜえ」

きた、とうとうこの瞬間が、私と花は他の女の人達と同じく急いで立ち上がる、そして2人で息を飲んだ、一体私が世話をする人間はどんな人なんだろう、お金持ちの人でなんでもトップをとる人らしいからどんな人なのか想像もつかない、なるべく普通の人でいて欲しい。
緊張が走る中、豪華な扉から現れた面々はすべて男性だった、年齢層は幅広く見える、合計で8人、そういえば誰か3人世話をしなきゃいけない人がいるってスクアーロさん言ってたっけ、一体誰だろう。

のんきにそんなことを考える私とは裏腹にキャーキャーと騒ぐ花と他の女の人達、花はちょ、みんなかっこよくない!?となんだか酷く興奮している、うん、見た目はみんなカッコイイ、一般人とは違うという言葉に私は軽く納得した。

「あとは好きに自己紹介でもしてろぉ、また詳しいことは明日話すからなぁ」

そう言って部屋を出て行くスクアーロさん、それと同時に世話係の一人の女の人がはいっと大きな声で手をあげた、あの子はさっき花と同じくカッコイイってキャーキャー騒いでた子だ。

「私M・Mでーす!私の主様になられるお方はどの方ですか!?」
「あ、M・Mちゃん?その主っての僕だから、これからよろしくー」
「きゃああ!カッコイイー!よろしくお願いします!!」

M・Mと名乗った女の子の主は白蘭と名乗りにこやかに笑った、凄く温厚そうに見えるけどなんだか引っかかるその笑顔に私は少しだけ首を傾げる、その瞬間もう我慢できないと言った感じで私の隣にいる花が手を挙げて声をはりあげた。

「私、黒川花でっす!」
「黒川?あーんじゃオレだ、オレの名前ベルフェゴールだけどベルでいいよ、しし、これからヨロシク」
「次はオレだ、オレの名はラル・ミルチ、オレが世話をするヤツは誰だ」
「あらん、写真で見るより全然いいじゃないのー!あたしルッスーリアって言うの、これからよろしくね、ラルちゃん!」

花の主のベルフェゴールっていう人もラルさんの主のルッスーリアっていう人もなんだか引っかかる笑顔を浮かべていた、なんなんだろう一体、さっきの白蘭っていう人といい、なんだか変な感じがする。
そうこうしているうちに三浦ハルさんとクローム髑髏さんの2人も主への自己紹介を終えていた、ハルさんにはなんとも恐そうな獄寺隼人という人が、そして髑髏さんには城島犬という何ともその名の通り犬に似ているこれまた恐そうな人がついた、え、ちょっと待て、まだ3人残ってるんですけど、え、もしかして。

「クフフ、君がなまえさんですね?僕は六道骸といいます」
「僕は雲雀恭弥」
「ザンザスだ」
「え、あの、もしかして、3人の世話をするっていうの、わ、私ですか?」

冷や汗を流しつつそう問うと、六道さんという人がにこやかにそうですよと言った、そんな、なんで私が3人も、それになんだか六道さん以外の2人は無表情すぎる、ザンザスと名乗った人に至っては顔に傷があって恐すぎるんですけど、イヤだイヤだ、お願いだから誰か嘘だと言って。
そんな私の気持ちに気付きもせずに、花は上機嫌で頑張ろうねとグッと力強く親指を立てウインクをしてきた、うん、大金のためだからね、私も頑張るよ、私は力無く花に向かって小さく親指を立てた。

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