六道様に無理矢理連れて行かれ、その数分後なぜだかいきなり六道様お手製のヘンテコ車は急停車した。ガンガンスピードを出しているくせに思いっきりブレーキを踏むもんだから、私はまたもや頭部を強打。頭を押さえ殺す気ですかと問いかければ、バカにしたように鼻で笑ってさっさと車から降りていく六道様。意味が分からず顔をあげると目の前にはコンビニが。え、普通に買い物するつもりなんですかこの人は。

「ちょ、ちょっと!もしかして行くとこってここのことですか!?」
「なに言ってるんですか、そんなわけないでしょう本当にあなたはバカですね」

ここには小腹が空いたのでおやつを買いにきただけですと、何とも庶民じみたことを言う六道様からは最早金持ちオーラは微塵も感じられない。何の躊躇もなしに慣れた感じでコンビニへと入って行く六道様は本当にお金持ちなのだろうか。すっごい嬉しそうにお菓子コーナーガン見してるし。
隣でどれにしよーかなーと目を輝かせている六道様に疑問を感じつつ、思い出したように声をかけた。

「あの、聞きたいことがあるんですけど」
「なんですか、僕いま忙しいんで手短にお願いしますよ」
「はあ、あの、ほかの2人はどうしたんですか?」
「ほかの2人?」
「雲雀様とザンザス様ですよ」

忘れたんですかと問い詰めると六道様はお菓子から決して目を離さず、呆れたようにため息をついた。え、なにか呆れるようなこと言いましたか私。だって、私がバイトしてたときはよく3人でいたような…ん?そうでもなかったかな、あれ、まあいっか。

「君なにか勘違いしてませんか」
「か、勘違い?」
「そうですよ、別に僕達仲がいい間柄ではないですからね、というかあのときが初対面でしたし。ただメイドを選ぶ時点でなぜか3人一緒になっただけで、住んでいるところも全然違いますから。いまでは連絡も取り合っていませんし、というか取り合う必要もないですね、あの2人とは根本的なところから合いませんしハッキリ言って彼等は嫌いの部類の人間ですから。ほんと僕はよく我慢してあそこで過ごしたと思いますよ、なんともわがままなあの2人にキレることなく頑張って円満に過ごしたんですから、ほら、僕って大人だし?クフッ」
「そ、そうなんですか」
「だいたい、なんでこの僕がわざわざイタリアからこんなバカ女のために日本にこなきゃいけないんですか、普通は主に会いにメイドのあなたが来るべきでしょう!」
「な、なに言ってるんですか!それにメイドとか主とか、もうそれは終わったはずですよね!?そうだ、なんで私六道様なんて言ってんだろ、バイトは終わったんだから呼び捨てでいいじゃん」
「何か言いました?」

クフフと怪しい笑みを浮かべ私を睨みつける六道様からは凄まじいほどの邪悪な気が。すぐさまなんでもないですすみませんと必死に謝ればバカはそれでいいんですよとまた鼻で笑われた。こ、このパイナポーめ、いつまでも上司面して!でも恐くて逆らえない、あーもう!
いまだお菓子選びに真剣な六道様から離れ、一度コンビニから出て逃げようとすると、あっさり捕まったので逃げることは諦めしぶしぶコンビニ内を歩き回る。一度お菓子コーナーに顔を向けると、六道様はまだ悩んでいるようで持っているカゴにはお菓子がひとつも入っていない。どんだけ悩んでるんですかと心の中でツッコミを入れ適当にお弁当を見渡す。あ、このハンバーグ弁当学校でも人気だったな、たしかにおいしそう。

人気なようでひとつしか残っていない話題のハンバーグ弁当に手を伸ばすと、横からも手が伸びてきてそれに気付いたように、弁当へ向けて動いていた手をお互いピタリと止めゆっくりと隣へ顔を向ける。

「ひ、雲雀様」

驚きすぎてほとんど声が出なかった、私のすぐ横には久々に見る雲雀様の姿が。雲雀様も私を見て少しばかり驚いているのかジッと私を見つめている。うそ、なんで雲雀様がこんなところに、雲雀様もお金持ちじゃなかったっけ?もしかして六道様と同じでコンビニ大好きとか?いや、いまはそんなことどうでもいい。問題は、

「やあ、久しぶりだね」
「そ、そうですね」

一度会計でハンバーグ弁当を購入し、それからスタスタとまた私のところへ戻ってきた雲雀様は平然と私に声をかけてきた。雲雀様そんなにハンバーグ弁当食べたかったんですね、別にすぐに買わなくても私は取るつもりなかったのに。

「そういえば、僕いまからゴールデンウィーク中ずっと暇なんだよね」
「はあ」
「行くよ」
「はあ、って、え!?」

淡々と話す雲雀様はいきなり私の腕を思いっきり掴みズンズンと歩いていく。待ってくださいと止める私の声なんて無視して歩き続ける雲雀様、お菓子コーナーにいる六道様はお菓子に真剣になりすぎてこの事態に全然気付いていなかった、ちょ、六道様どんだけお菓子選んでるんですか!こんなに叫んでるのにあのパイナポーめ!!

結局あっさりとコンビニから出てしまい、雲雀様に引っ張られて行くまま、どんどんコンビニから離れていく私達。たった一日で正直二度と会いたくなかった主2人に会うなんて今日はきっと厄日なんだ、どうかあとひとりの人には会いませんように。

その後のコンビニにて。

「よし、おやつ充電完了!さあ行きますよーって、いっいない!?一体いつの間に!?この僕があんなバカの脱走に気付かなかったなんて!!」

怒りの形相で車に乗り込んだ六道骸は、メイドを探しだすためマイカーを勢いよく走らせた。

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