「最後だから君にはすべて包み隠さず、君が知りたがっていた僕達の秘密ってのを教えてあげるよ」

そう言った白蘭様は、いまだ驚きのあまり声も出せずに硬直している私を見て楽しそうに笑顔を浮かべる、そして真実を話しながら白蘭様は大きな機械を囲んで立っているほかの主達に視線を送った。

「僕達は各国々のお金持ちのお坊チャンなんだよね、それで前になまえチャンに言った通り、僕達は望めばすべて手に入る自分の置かれた立場に酷く退屈を感じていた、新しい強い刺激が欲しかったんだ」
「そ、それじゃあ」
「そう、もう分かるよね、そこで僕はいろんな情報手段を使って僕と同じ立場にいる人間を世界中から掻き集めそこから有能なヤツ等を8人にまで絞り込み、この計画を説明した、だからこの計画のリーダーは僕、みんなはすぐに快く計画に協力してくれると言ってくれたよ、みんな僕と同じで新しい刺激が欲しかったみたいだね」

だんだんと分かってきた秘密の内容、白蘭様のここまでの話を聞いて明らかになってきたのはこの部屋の中央に位置している奇妙な機械の存在のこと、この人達がしたいことは私が考えていたバイトを殺すなんてそんな小さなことじゃない、この人達はもっと大きな強く新しいものが欲しいと言っていた、それじゃあもしかして、この人達が行っていた計画というのは。

「僕達が欲しかった新しいオモチャはこれ、人間を殺す機械だよ」
「な、なんで」
「言ったよね、僕達は退屈していた、だから退屈な世界を壊したかった、つまんないからね、5年程前から始まった僕達だけのこの極秘計画は今になってやっと最終段階に入り、僕達はこの機械を完成させるために今回こんな泊まりがけの製作方法を考えたんだ」

普段は滅多にお互い会わずに作業を行っていたんだけどねと次から次へと淡々と話していく白蘭様、白蘭様は目の前の大きな機械をジッと見つめ、何とも嬉しそうに笑みを浮かべた。

「この城は僕の別荘、ここにみんなで長期に渡り泊まって一気に最後までこの機械を完成させたかったんだけど、あいにく僕達は自分自身の身の回りのことを一度も自分でしたことがなくてね、しかもこの別荘にはコックは居てもメイドがいない、そんなとき今の時期に学生が冬休みという長期の休みに入ったことを知ったんだよ」
「それで、私達が」
「そう、バイト代は腐るほどあるからね、すぐに人はたくさん集まってきたよ、それからメイドを選ぶまでにいろんな試験をしたよね、あれはあれで僕達を楽しませてくれたよ、それで残った選ばれた人間が君達ってコト、今回なまえチャンだけに3人主がついたのは驚いたと思うけど、あの人達がなまえチャンがいいって言うもんだから仕方なかったんだ」

大変だったでしょ、ごめんねとまるで気持ちのこもっていない言葉を吐く白蘭様、私は恐る恐る少し遠い位置に立っている雲雀様のほうへ視線を向けた、雲雀様は依然として私のほうを見てはくれない、ほかの2人もいない、私は強く下唇を噛み締めた。

「バイトの子達はバイトが終わったら約束通りお金を払ってちゃんと家に帰そうと思ってたよ、でもなまえチャンは初めから僕達の計画に薄々感づいてたよね、そしてここまで来て僕達の計画をすべて知ってしまった、まあ最初からこうなるんじゃないかって予想してたから別にいいんだけど」
「白蘭、様」
「君は知りすぎたね、かわいそうだけどここでさよならだよ」

そう告げたと同時に白蘭様は懐から銃を取り出す、銃口を私へと向け微笑む彼から顔を背け必死になって助けを求めるように雲雀様のほうを見た、私が見た雲雀様、それは先程から何も変わらず無表情のまま一度も私のほうを見ようとはしない彼の姿だった。
雲雀様は助けてはくれない、今更なにを、私は何を期待していたの、雲雀様がそんなことするはずないのに。
バイバイ、そう呟き銃の安全装置が解除される音が室内に小さく響く、私は本当に死ぬんだと涙が流れそうになる目に力を込め、それを受け入れるように目を閉じたその瞬間。

「なまえー!!」

先程私がここまで来たときに使用したあの階段から何人もの足音と共に花の声が聞こえてきた、花だ、花が私を呼んでる、なんで、みんなで逃げたんじゃなかったの。
私だけでなく主達全員が驚く中、バイトをしていたみんなが全員この部屋へと訪れた、みんな肩を上下させ必死に息をしている、その中にはスクアーロさんの姿もあって、みんな走ってきてくれたんだと理解し少しだけ力が抜けた。

「キャー!ちょ、なまえに銃向けてなにする気よ!まさかこっ殺す気!?そんなこと私が許さないわよ!相手が主だって許さないから!!さっさと銃下ろしなさいよ!」
「は、花」
「あーもう!なんなんだてめえら!部外者がいちいち面倒くせーことしやがって!!オレ達の邪魔すんじゃねーびょん!!」
「だめです犬様!」

騒がしくなってしまったこの状況に我慢できなくなった城島がさっさと私を殺そうと私に銃口を向ける、そのときそれから私を護るように私の前に両手を広げて現れたのは城島のメイドの髑髏ちゃん、髑髏ちゃんのそんな行動に私も驚いたが、城島は酷く動揺していた。

「て、てめえは離れろよ!!」
「いやです、離れません!」
「どけ!どけってんだよ!命令だ!!」
「どきません!」
「ど、髑髏ちゃん」

城島の命令にはいつも忠実に従っていたはずの髑髏ちゃんは、ここにきて初めて城島からの命令に背いていた、私を護るために、何度叫んでも一向に私の前から退こうとしない髑髏ちゃんに、城島は耐えるように顔を歪め下唇を噛み締める、銃を持つ手は動揺していることを表しているかのように小刻みに震えていた。

「獄寺様!なんで、なんでこんなことしてるんですか!!」
「う、うっせー!てめえには関係ねえんだよ!!失せろバカ女!」
「いやです!獄寺様も一緒に逃げなきゃ私は行きません!!」
「な、なに言って、いいからてめえは消えろよ!消えろ!!」
「いやです!絶対逃げません!!」

少し離れたとこからは獄寺様とハルちゃんの激しい討論の声が聞こえてくる、獄寺様の表情も城島と同じく酷く動揺していた、ほかの主たちを見渡すとみんな自分のメイド達の姿を見ただけでさっきまでの表情とは一変し、なぜか焦りだしていた、ただ私の傍にいる白蘭様ひとりを除いては。

「白蘭様!じゅ、銃なんて下ろして下さいっ!」
「あっれ、おかしいな、M・Mチャンにはしっかり部屋で待機してるように言っておいたはずだけど?」
「そ、それは、でも!今はそんな場合じゃな、」
「あそ、じゃあバイバイだね、僕は命令を守らない下僕はいらないから」

そう言った瞬間、白蘭様は勢いよく持っていた銃でM・Mチャンの頭を殴りつけた、強い衝撃を物語る痛々しい頭部と床が当たる音が室内に響く、倒れたM・Mチャンに何度呼びかけても返事は返って来ない、M・Mチャンは完全に意識を失くし気絶していた。

「あーあ、もう計画が台無しだ、いっその事ここもろともやっちゃおうか」
「それはさせねえぞぉ」

イラついた様子で歩を進め何かのスイッチを押そうとする白蘭様の手を掴みそれを制止させるのは、ここのお手伝いさんのスクアーロさん、自身の手を掴まれスクアーロさんを睨みつける白蘭様、それでもスクアーロさんは絶対にその手を離そうとはしなかった。

「離せ、僕はここを爆破させる」
「離さねえ」
「命令だ、離せ」
「離さねえと言ったはずだぁ」
「君、「はーい!僕は白蘭君の考えに大賛成でーす!!」

白蘭様の言葉を遮り聞こえてきたのは、どこからともなく響いてきた確かなあの人の声、まさかと思い上を見上げると、勢いよく天井から落ちてきた六道様の姿が、そのまま六道様は中央にあるその大きな機械の上に着地し、何やらいろいろとその機械をいじり始めた。

「僕は君の出した案に賛成です、ですのでそのお手伝いをさせて下さい」
「ちょ、君なにして」

ガチャガチャと機械の頭上で何かをしている六道様に不安を覚えた白蘭様が六道様に声をかける、そのとき靴音がしその方向に視線を向けると、そこにはブレーカーに手を添えているザンザス様の姿があった、それを私が確認したと同時にザンザス様はブレーカーを下ろし、室内の灯りが一気にすべて消え去り辺りは真っ暗になった。
その瞬間、体が急に軽くなり床から足が離れて私は浮いている、一体なんだと理解する前に私はそのまま大きな機械に飛び乗り、もっと上へ上へと移動していく、やっとで灯りのあるところに辿り着いたと思い私を抱えている人物を確認すると、それは紛れもなく雲雀様本人だった。

「ひっ雲雀様、」
「いいから黙ってて、それに君重すぎ」
「そ、そんなこと知ってま、」

灯りのある狭い通路に雲雀様と一緒に入り、雲雀様は私を抱えたまま急ぐように先へ先へと走っていく、たぶん、ここは天井にある通路だからここから六道様がさっき落ちてきたんだな、なんてことをひとりでのんきに考えている内にいつの間にか私と雲雀様は外へと出ていて、すぐ傍に浮遊しているパイナップルの形をした変な車のようなものに2人で乗り込んだ、え、なんですかこれ。

「雲雀様、これって」
「六道骸とかいう変人が作った使えないオモチャだよ」

やっぱりそうかと小さくため息をつくと、次から次へとこのパイナポーカーへと主達やメイド達が乗り込んできて、最後に白蘭様とスクアーロさんが乗ったことを確認すると、雲雀様はすぐにそれを発進させた、え、ちょっと待って。

「雲雀様!まだ六道様とザンザス様が!」

横にいるこの浮遊車を運転している雲雀様に必死に声をかけるが依然反応を示さず、あの城から大分離れた位置まで来てやっとこの車は停車した、城のほうを見ると城がかなり小さく見えることに気付き随分離れたところまできたんだと理解する、その瞬間、何とも大きな音をたてながら城が爆発した。
ずっと遠くに広がる光景、それは真っ赤な炎に包まれ黒い煙を大量に出しているもう原型さえ留めていない城の姿、私達はそれを唖然としながらジッと見つめていた、誰も何も言わない、白蘭様もその光景から目を離さず驚いたように目を見開いている。

「す、ごい」
「ですよね、あんなに改造したのに僕もこんなになるとは思いませんでした」
「改造って、え!?」

僕が改造してこれなら、僕が改造せずそのまま爆破させていたら確実にあそこの町も被害に遭っていましたねと誇らしく語るのはこのパイナポーカーの製造者、六道様。そしてその後ろには同じく私の主のひとりのザンザス様が。
浮遊していたパイナポーカーをゆっくりと地上に下ろし、私達は車から降りる、いまだ燃え続けている小さく見える城を見つめ、私は白蘭様に視線を向ける。
白蘭様は爆破されて跡形もなく消えてしまったあの機械を見ながら、大声で笑い始めた。

「あっはは!なにこれ、すっごい威力じゃん、やっぱり僕って凄いかも」
「おい、楽しかったかぁ?」
「うん、楽しかったよ、思ってたよりもずっと」

あの人達のおかげでねと言ってふいに私と3人の主達のほうへ顔を向けた白蘭様、そんな白蘭様の表情は本当に嬉しそうで、今まで見てきた笑顔の中で一番綺麗な笑顔だと思った、もしかして白蘭様、今本当に笑ってる?いや、それよりも、もしかして。

「スクアーロさん、あの」
「あ?ああ、もう分かったかぁ?そうだ、オレはこいつの世話係してんだぜえ、どっかの大富豪の坊ちゃんってのもこいつだぁ」
「なにこいつって、僕は主人だよスクアーロ」

スクアーロさんの言葉に少しだけ膨れっ面をする白蘭様、なんだかこれが本当の白蘭様な感じがする、そう思いスクアーロさんに視線を向けるとスクアーロさんは小さくオレの夢は叶ったと呟いた、やっぱり、スクアーロさんは白蘭様の本当に笑った顔が見たかったんだ、それがスクアーロさんがずっと願ってきた夢。

「まあこれで僕等の退屈は少ししのげたわけだし、僕はそろそろ国に帰りますよ、親が泣いて会いたいって電話してくるんでね、まったく困ったものです」
「気持ち悪い親だね、まあ計画は実行されなかったけど僕もそれなりに楽しかったし、僕も家に帰るよ」
「面倒くせえ」
「あの、ちょっと聞いてもいいですか?」

さっさと帰ろうとし始めた主達の雰囲気に焦りながら慌てて声をかける、私の声に反応した3人の主はいつものように無愛想な顔で私のほうに振り返った。

「なんで、その、この計画をやりたかったはずなのに、あの機械を破壊してしまったんですか?」

私の問いを聞いた3人の主は、それぞれ顔を見合わせ何も言わずに3人同時に私に1本の人差し指を向ける、え、なっなに、私?私が原因ってことですか?

「わ、私ですか?」
「そうですよ、自覚ないんですか?君はほんとに使えないバカなメイドですね、その調子じゃ僕達がどんなに苦労したか分からないでしょう」
「なっ!そ、それは」
「いちいち面倒くさいしね、バカだし」
「ちょっと!」
「うるせえよ」
「すみません」
「クフフ、でも楽しかったですよ、バカなあなたと過ごしたあの期間は。また退屈になったらあなたを使って遊びたいので、あなたに会いにきてもいいですか?」
「いやです、二度と来ないで下さい」

六道様の言葉に完全否定を示す私を見て、相変わらず素直じゃないですねと独特な笑みを見せる六道様、いや、これがほんとに私の本心ですから、誰がまたあんた達みたいな大変なヤツ等と会いたいなんて思うんですか、もうイヤですよ、こりごりです、また会いたいなんて、そんなの全然思ってな、い。

「それじゃあ最後にひとつ聞いてもいいですか?」

ほかの主達やバイト達が話をしている中、私も3人の主達に最後の質問を投げかける、3人はなんだと不審そうに私を見つめ私の言葉を待っている、私は3人の顔を見渡し、口を開いた。

「なんで自分達のメイドに、3人とも私を選んだんですか?」
「なに、聞きたいの?」
「はい、聞きたいです」

私の答えを聞き雲雀様はまた2人と顔を見合わせる、どんな返事が返って来るのかなぜだか少し緊張しながらジッと待っていると、3人はニヤリと不敵な笑みをつくり、声を合わせて答えを口にした。

「おもしろい顔してたから」
「失礼ですよ!」

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