六道様となぜだか一緒に朝を迎えた私は、朝食を作る時間に起き上がるとベッドの上にいまだ熟睡している六道様の姿を目にし、大きくため息をついた、この人起きる気配がないんですけど大丈夫ですか。
そそくさとバスルームで顔を洗い着替えをして朝食を作りに部屋を出て行こうとして足を止める、振り返ってベッドの上で寝ている六道様を見て、無言で掛け布団をかけ直してあげた、それにしても寝相悪いな六道様、枕ぶっ飛んでますよ、ていうか髪がミラクルボンバー。
いつもの六道様からは感じられない幼さに笑いを必死に堪え、静かにドアを閉めて部屋を後にした。

「おはようございます!リボーンさん!コロネロさん!マーモン!」
「ちゃおっす」
「よお」
「だからなんで僕だけ呼び捨てなんだ」

厨房に行くといつも通り可愛らしい3人がいて、いなくなっていないことに安心しながら朝食のハンバーグ作りを始めた、もうここにきてからずっと作っているためすっかり手馴れてしまったハンバーグ、たぶん、今現在私の得意料理になっちゃってる気がする。
綺麗に盛り付けをして、ご飯をよそっているとマーモンが私の傍に歩いてきて、まじまじと出来上がったハンバーグを凝視する、どうしたのと問うとマーモンは難しい顔をして頭を傾げた。

「これは凄いね、最初作ったときはあんなにゴミ同然でブタのエサかと思ったのに」
「あ、はは、ブタのエサって、でも!今は凄いおいしそうに見えるでしょ!?」
「まさか、こんなのがおいしいわけないじゃないか、せいぜいよくて50点だよ」

マーモンの辛口判定にマーモンのケチと悪態をつきながらマーモンの頬をつねる、マーモンはやめろと言いながら必死に自分の頬から私の手を離そうと頑張っていた、あーやっぱりマーモン可愛いな、からかうと面白いし、それなのにいきなりいなくなるなんて言って。
じゃあ朝食出してくるからとエプロンを脱ぎ、3人分の朝食を運ぼうとするとマーモンがねえと少しだけ遠慮がちに私に声をかけてきた、こんなマーモンは初めてだと驚きながらなにと言ってマーモンを見ると、マーモンはなんだか言いにくそうにジッと私を見つめていた。

「どうしたのマーモン」
「君、ここから逃げなよ」
「え、「マーモン、メイドが来たぜ」

さっさと料理始めるぞとマーモンを呼ぶコロネロさんの声にマーモンは反応し、私を気にしながらもさっさと料理をしに行ってしまった、マーモンのあんな戸惑ったところは初めて見た、それにここから逃げろって、それはつい2日前にベル様が言ったあの言葉と何か関係があるのだろうか、それにスクアーロさんとか白蘭様の言葉も気になる。

「気にすんな」
「リ、リボーンさん」

お前はさっさと冷めない内に主に朝食持って行けと促され、私は何も聞くことができずにその場を後にする、なんだろう、やっぱりみんな私に何か隠してるんだ、それはあの3人だけじゃなくて全員の主達とスクアーロさんみんなが、私達バイトには一切何も言わずにそれは着々と進行していってるんだ、秘密に行われている何かが。
そのときふと、昨日の白蘭様の言葉を思い出した、新しいオモチャだって確かあの人は言っていたはず、新しいオモチャって、もしかして私達メイドのこと?嘘、違うそれはありえない、でも、もしかしたらってこともあるし、それじゃあベル様が言ってたこともコロネロさんが言ってたことも、もしかしたら。

そこまで考えて私の思考はある一点の不安に集中した、これは私の考えに過ぎない、けど、これが本当だとしたら、私達バイトは絶対にバイト終了を迎えてはいけない。
私が導き出した結論、それは何とも単純で誰もが思いつきそうなことだった、主達がこの城にきて求めたのは新しいオモチャ、そのオモチャは私達バイトのことで冬休みの間こうして少しだけメイドとして遊んで、バイトが終わったら全員ひとり残らず殺してしまうんじゃないだろうか。

コロネロさんのこのバイトが終わってもしまだお前がいたらという意味深な言葉と、ベル様の死という言葉、そして今日のマーモンの逃げたほうがいいという言葉、それらすべてから私の考えはほぼ確実だと確信したときいくつかの問題点が頭をよぎる。
このことをバイトのみんなに知らせてここから逃げようなんてしたら、白蘭様に殺されるかもしれない、あの人は確かに邪魔をするなと言った、それにあと気になることはスクアーロさんの言葉、あの人はここに来たら夢が叶うと言っていた、そしてそれは私達のバイトが終わったときに本当に叶うかもしれないと嬉しそうに語っていて。

スクアーロさんがバイトのみんなが殺されて夢が叶ったと喜ぶのは何か違う感じがする、それにスクアーロさんがそんなことを望んでいるとは思えない、それじゃあスクアーロさんは一体何を望んでいるの?あーわかんない、わかんないわかんない、考えても答えが見つからない。
普段使わない頭をフル活用したため少しだけ痛む頭を押さえ六道様の部屋をノックする、六道様は私が朝食を作っているときに自室に移動したらしく部屋の中から声が聞こえ中に入るとボンバーだった髪が綺麗になっていて服もいつも通りきちんとしていた。なんて早業。

朝の六道様の髪を思い出し笑いを堪えながらすぐに朝食を渡して部屋から退出する、そのまま続けて雲雀様の部屋をノックすると雲雀様からの声が聞こえ、私は失礼しますと言って部屋に入った。
雲雀様のデスクにいつものように朝食を置くと、雲雀様は食器に手を添え自分のほうへと持っていく、一旦読んでいた書類を隅に置き朝食のハンバーグを一口食べてくれた。

「ねえ」
「あ、はい、すぐ行きます」

注意される前に私はそそくさとドアへと近づいていく、数歩歩いてから何か思い留まりピタリと止まった足、雲雀様も、雲雀様も当然ここの秘密を知っているはず、昨日は六道様に聞いても何も答えてはくれなかった、たぶん雲雀様に聞いてもそれは同じだと思う、けど。
ギュッと手を握り締め、後ろを振り返る、私の異変に気付いたのか食事をしていた雲雀様の手が止まり視線が私のほうへと向く、私は少しの期待を胸に思い切って雲雀様に問いただしてみた。

「あの、お食事中すみません」
「なに」
「こ、この城について、私に何か教えてくれませんか」
「君には関係ない」

一瞬で断られてしまった、思っていた通りの答えにたじろぎながらもその場を動かずジッと雲雀様を見つめる、そんな私に雲雀様も何か感じ取ったのか鋭い視線を私に向けたまま、淡々と言葉を口にした。

「聞こえなかった?君には関係ないと言ったんだよ」
「はい、でも」
「僕は何度も同じことを聞かれるのは嫌いだ、さっさと隣の人に朝食を出しにいったらどうだい」

断固たる雲雀様の態度に私は言葉を失くす、やっぱり雲雀様は何か知ってる、でも教えてはくれない、私達バイトには秘密なんだ、でも、それでも聞かなきゃ、このバイトが終わる前に聞きださなきゃ、そうしないと、私は、私達は。
突然押し寄せてきた不安に押しつぶされそうになりながら必死になってそこを動かずに雲雀様を見つめた、そのときいきなり視界が揺らめき自分の目から涙が流れたのを感じた、私はすぐに顔を伏せ手でその涙を拭い去る、なんで泣いてんの私、なんでこんなときに涙なんて、これじゃあ雲雀様に聞き出せない、でも。
どうしても、不安だった。

「わ、私」
「……」
「わた、私、死ぬって、言われて」
「誰に言われたの」

雲雀様の問いに止まらない涙を拭うことで必死になっていたら答えることなんてできなくて、ただただ子供みたいに泣きじゃくっているとガタンッとデスクから立ち上がった雲雀様が私のほうに歩いてきているのを感じた、どうしよう、早く泣き止まないと、早く、早く早くはやく。
そんなことを思っていた私の手に乱暴に押し付けられたのは、この前私が泣いたとき渡してくれたハンカチとはまた違う柄のハンカチだったけど、これもかなり高級そうだった、急いで返そうとしたけど雲雀様は命令だよと言って私からハンカチを受け取らない、私は言われるがままお礼を言って、そのハンカチで涙を拭いた。

「君は死なない」

一瞬耳を疑った雲雀様の言葉、少しだけ顔を上げると雲雀様が私を見下ろしていて、その目はいつもと同じく強く鋭い眼光をしている。
雲雀様の言葉ひとつで、私の涙はピタリと止まっていた。

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