「なにこれ」

リボーンさん達の言葉に疑問を感じ悶々と考えていたその翌日、朝食を終えた主達の食器を片付けていると、廊下に落ちている手帳のような物を発見した。
誰のだろうと気になりながら手帳の後ろを見ると大きくGの文字がデカデカと書かれてあるだけだった、その前にGってなんですか、持ち主の頭文字かなんかですか。

不審に思いつつ中を開くと、そこにはスケジュール表びっしりに書かれている10代目という文字と、10代目を褒め称える言葉がズラリ、ええー、なんですかこれは、10代目って誰のことですか、ていうか10代目って何かの組織かなんかのリーダーさん?だよね絶対、じゃあこれを落とした持ち主も?
パラパラとページをめくるがスケジュールはすべて10代目という人とのことばかりで、10代目とデートやら、10代目と会議やら、10代目とショッピングやら。この手帳を見終えて分かったこと、どうやらこの人はかなり、この10代目という人物が好きらしい、いや好きのレベルじゃないと思う確実に。

「あー!見つけた!!」
「え?ちょ、」

突然背後から大声が聞こえ、慌てて私が振り返ると同時に手に持っていた手帳を瞬時に盗られてしまった、え、誰ですか。
よっしゃー!見つかったー!!と天にも昇る気持ちで喜んでいるその人の顔を見てみると、なんだか見覚えのある顔だと頭を傾げる、あれ、なんかこの人ずっと前に見たような気が、あれ、なんだっけ、えーと、確か。

「獄寺様!勝手にいなくならないで下さいって言ってるじゃないですか!」
「るせー!ついてくんじゃねえよアホ女!!」

バタバタと盛大に走りながら私達のほうへ向かってくる女の子、あ、この子は知ってる、私と同じでバイトでここのメイドになったハルちゃんだ。
ここにきてから廊下などでたまたますれ違うたび少し話をしていたから、ハルちゃんとはそれなりに仲良くなっていた私は近くまで来たハルちゃんにやっほーと声をかける、ハルちゃんは私に気付くとすぐに顔一面を笑顔に変えた。

「なまえちゃん!なんだか久しぶりですね!」
「ハルちゃん、もしかしていつも話に出てた手のかかる人ってこの人のこと?」
「そうなんですよ!この人私の主だからってなんでも好き勝手やって!もうハル疲れました!」
「好き勝手やってんのはてめえのほうだろーが!10代目の写真全部捨てやがって!この手帳まで捨てて、てめえは何がしてーんだ!!」
「手帳は自分で落としたんじゃないですか!毎日毎日10代目10代目って、ハルは怒りますよ!いい加減10代目が誰なのか教えて下さい!私というものがありながら浮気なんて許しませんからね!!」

ハルちゃんの爆弾発言に誰が浮気だバカ野郎と叫ぶ獄寺様、なんだか2人ともすっかり私の存在を忘れてしまっているようで、私はそそくさとその場を退散した、なんだかなあ、なんだかんだ言ってあの2人も仲いいようにしか見えないんだよね。
みんなどうやってあんなに主様と仲良くなれるのだろうと、当初の悩みとは全然違うことを考えながら、私は食器を洗いに厨房へと向かって行った。

昼食時、いつものようにリボーンさん達と一緒に厨房で料理をして3人の主達に昼食を出し終えたあと、玄関付近で山本さんを今か今かと待っているけどなぜだか一向に山本さんが来ない、変だな、いつもならもう来てる時間帯なのに、そういえば山本さんの寿司をいつも注文している髑髏ちゃんの姿もない。
どうしたのだろうと辺りを見渡していると、あのと控えめに誰かが私を呼ぶ声が聞こえ振り返る、そこには髑髏ちゃんの姿があった、あれから髑髏ちゃんとも少しずつ話せるようになってきた私は辺りに城島がいないことを念入りに確認して、ダッシュで髑髏ちゃんの傍へと駆け寄った。

「どうしたの髑髏ちゃん、山本さんいつもより来るの遅いけど」
「あの、犬様がもう寿司は注文しないことにしたの」
「は!?なんで!?」
「あの人のお寿司は食べ飽きたって…」

た、食べ飽きた!?何言ってんだあの野郎!山本さんの素晴らしい寿司に飽きるとか何!?私なんて一生三食山本さんの寿司で生きていけますから!まだ一度も食べたことないですけど!
毎日の究極な楽しみだった山本さんが、もうこれからは昼になってもここに現れないのだと思うと一気に疲労感が体中を襲った、山本さん、私はあなたの爽やかな笑顔を一日に一回見るだけで一日を頑張ることができたんです、それなのにもうこないなんて、拷問ですよ拷問、私は一体これから何を糧に頑張ればいいんですか。

髑髏ちゃんの衝撃的すぎる発言にグッタリとしてしまった私に、大丈夫?と心配そうに顔を覗きこんできてくれる髑髏ちゃん、髑髏ちゃんの顔近い、やっぱり髑髏ちゃんほんと可愛いな、遠くから見てもかなり可愛いけどって、何考えてんの私。
変態みたいじゃないかとすぐさま考えることをやめると、昼時には必ずイヤでも聞こえてしまうあのやっかいな声が耳に響いてきた、うわー来ちゃったよ城島、すっごい髑髏ちゃんのこと呼んでるし、髑髏ちゃん焦ってるなあ、可哀相に。

「てめー昼飯も持ってこないでどこに行ってたびょん!」
「ご、ごめんなさい犬様、すぐに用意します」
「お前はいっつも行動がおせーんだよ!バカはバカなりにテキパキ動けっつの!」

髑髏ちゃんに思いっきり毒を吐きながら私の前をツカツカと素通りしていく城島、髑髏ちゃんは私に小さくバイバイと手を振り急いで城島の隣を歩きだした、そのとき少しだけ城島が私のほうに振り返り、何この汚物的な何とも汚い物を見るような目で私のことを睨みつけてきた、ちょ、おまっ、なんだそのさげすんだ目は!!

「城島!!…様!」
「あー?」
「なっなんですかさっきの目は!言いたいことがあるならハッキリ言ってくれたほうが私もスッキリします!!」

数メートル先にいる髑髏ちゃんと城島様にここぞとばかりに大声で叫ぶと、何かを考えた城島様がうろたえる髑髏ちゃんをそのままに、早足で私のすぐ目の前まで近づいてきた、う、こっこの人ってこんなに背高かったっけ。

「じゃあ言うけど、お前あいつらのメイドなら主人のこともっとちゃんと管理しろっつの、あいつらのせいで毎回話がもつれてんだかんな」
「え、ま、待って下さい、なんの話をしてるのかよく分からないんですが」
「だから、お前の主人等のせいでオレ達の「何くっちゃべってんだアホイヌ」

城島の言葉を遮り髑髏ちゃんの数メートル後ろから現れたのは、花の主のベル様、ベル様は前に会ったときとは違い至って普通、初めてここにきて自己紹介したときと同じ感じで、口元に笑みを浮かべながら私と城島の傍まで歩いてきた。

「ねえ、お前さ、今こいつに何言おうとした?」
「う、うるせーびょん!テメーに関係ねーだろ!!」
「確かにね、オレはこんなこと別に誰に知られようが興味ないけど、ほかのヤツ等はどうだろうね、特に白い髪の変なヤツとか」

ベル様の言葉に一瞬で顔を真っ青に染めた城島は、何も言わずにさっさと歩き出し髑髏ちゃんと共に部屋に入って行ってしまった、自然とベル様と2人きりになってしまったこの状況、さっきの会話からしてこの人はこの城の謎について何か知ってるはずだ、聞くなら今しかない、聞かなきゃ、この疑問と不安の根源を。

「あの、ベル様」
「んー?」
「何か、この城には何か秘密、というか隠していることがあるのですか?」

恐る恐る口にした疑問、それにベル様は一瞬だけ口元から笑みを消し去り、私をジッと見つめた後、再び口角を上げ笑みを浮かべ、私に人差し指を一本向けてきた。

「お前死んだな」

たった2人だけの空間に、ベル様の言葉だけが静かに鳴り響く、唖然と言葉を失くす中ベル様に何か言おうと口を開きかけたとき、突然胸ポケットから六道様の呼び出し音が聞こえてきてそれに気をとられている内に、ベル様はさっさといなくなってしまった、終始笑顔のままで。
この日、私の頭からベル様の言葉が消えることはなかった。

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