僕の部下にはどうしても手に負えないほどのバカな女がいる。ただでさえ白蘭さんの気まぐれなからかいのせいで毎日腹痛に苦しんでいるというのに、あの女のあまりのバカさ加減に最近では頭痛まで起きてくるという始末。そもそもなんであんなバカがマフィアなんてとこにいるんだ。そこら辺でコンビニの店員でもしてくれていたらどんなによかったか。そしたら僕がこんなに頭を痛めたり胃を痛めたりすることもなかったのに。

というかなんで僕ばかりこんな目に合うんだ。ほかのヤツ等はなぜあのバカと話しても普通に笑っていられるんだ。到底理解できない。この前偶然聞いたアイリスと話してるあいつの会話は本当に耳を痛めるものだった。

アイリスー!髪もじゃもじゃ!今から一緒にお昼行かない?アイリスの髪ってどうなってるの?私パスタ食べたいんだよねー、あんた奢ってよ。なんかこの髪になんでも隠せそうじゃない?試しに飴を…ってうわ!ちょ、すっごいよアイリス!どんどん飴が、飴、飴が!やっぱパスタ食べたくないわ、やっぱりもっと手軽なお昼にする?って、話噛み合ってないから!!何!?なんでアイリスは髪に飴突っ込まれながらあんな普通に会話してんの!?普通ここは怒る場面じゃないのか!僕か!?僕のほうがおかしいのか!?だめだ。お腹痛くなってきた。僕には到底理解できない。

「入江様!」
「うわっ!」

ひとりで悶々と頭を抱え込んでいた矢先、悩みの種が突然背後から話しかけてきて当然いることにすら気付いていなかった僕は驚きのあまり肩を跳ねらせてしまい、しまったと思ったときには既に遅く背後からは忌々しい笑い声が聞こえてきている。イライラと眉間にシワを寄せ振り返るとやっぱり面白おかしく僕を笑うあの女の姿が。ムカツク。こんなバカに笑われるなんて。僕より全然小さいくせにって、あれ。

「…君、なんでそんなに濡れてるんだ」
「え?ああ、今日は雨すっごい降ってるんですよ、いつも部屋の中にしかいないから気付かなかったんですか?」
「僕はなぜ君がずぶ濡れになっているのか聞いてるんだけど」
「いやー、それが雨見てたらいつの間にか自分も濡れてしまっていたんですよねー、私としたことがとんだ失態です」
「心配しなくていいよ、君の存在自体が既に失態だから」
「えええ!入江様そんなひどいこと、ヘブシッ!言わなハブシッ!いでハーックション!!」
「ぎゃあああ!!変なもの飛ばすなバカ女!」

すみません、わざとじゃないんです。そう言いながら僕に向かってくしゃみを連発しやがるのはどこのどいつだ。汚い。汚すぎる。おかげで僕の隊服が言葉にもしたくないこいつの色んなもののせいで物凄いことになってしまった。ちょ、どうしてくれるんだこのバカ女。たまらず近くにあった大きめのタオルをずぶ濡れ姿の女に被せる。女は濡れた体を拭きながら盛大にそれで鼻をかんだ。まずお前は本当に女か。

「ずみまぜん入江様」
「もういいから早く自室に戻って、というか戻れ」
「うう、ありがどうございまず」

タオルを体に巻きつけ鼻を押さえながらニッコリと僕に笑顔を向けてそいつは出て行った。苦しいのになぜバカみたいに笑っているんだと、自分のすっかり汚くなってしまった隊服を見ながら深いため息を吐く。
とりあえず、次あいつに会ったときは問答無用でラリアットをかまそう。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -