「昨夜はどうだった?」

仕事の必要事項だけを話しさっさと白蘭さんの自室から出て行こうとした僕を止めたのは核心に触れる白蘭さんの言葉。何も言わずにゆっくりと振り返ると、デスクに向かいながらいつも以上に楽しそうに笑顔を浮かべる白蘭さんと目が合った。やっぱりこの人はただ楽しんでるだけなんだ。ため息を漏らすかわりにごく自然に眼鏡をかけ直す。

「やっぱり白蘭さんの仕業だったんですね」
「無理矢理じゃないよ、正チャンの疲れを癒してあげてって僕が頼んだらすぐに承諾してくれてさ」
「当たり前です、あいつは白蘭さんの言うことならなんでも聞くんですから」
「扱いやすい部下がいてくれて、僕も助かるよ」

笑顔を崩さず口にした白蘭さんの言葉に沈黙が訪れた。なぜか胸の中がもやもやとすっきりしない。イライラしているような。なんだこれは。僕は一体。無意識に自分の腹に手を当てる。同時にキリキリと腹が痛みだし少しだけ顔を歪めた。

「それで、疲れはとれたかな?」
「とれません」
「そう、満足できなかったんだね」
「だから、」
「正チャンがしてほしいことなんでもあの子に言っちゃっていいんだよ?正チャンの頼みごとはちゃんと聞いてあげてねってあの子には言ってあるから」

ふと、昨夜のあいつの姿が頭に浮かんだ。キリキリ。腹の痛みもなぜか増していく。痛い、痛い痛い痛い。なんでこんなに痛いんだ。
僕の異変に気付いたのか、白蘭さんの目が少しだけ細められた。そしてジッと僕を見据える。さっきまでとは違い口元だけに怪しい笑みを浮かべ目は笑っていない。僕の様子をまるで観察するかのように見つめていて。

「今日もあの子、正チャンの部屋に行かせるよ」
「な、」
「今夜は満足できるといいね」

満足なんて、一生しなくていい。

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