いつも通りの朝、いつも通りに朝食へ。でも今日は夢を見た。
赤い、赤い葉っぱが舞散る夢を。
「あ!なまえおはよう、今日は早いですね」
まだ瞼が重くて目を擦りながら廊下を歩いていたらニコルに挨拶を交わされた。
「…おはよ、今日ちょっと変な夢見ちゃってさー、久々に早く起きたよ」
「変な夢?どんな夢だったんですか?」
「よく覚えて無いけど赤い葉っぱがたくさん出てきた…」
「赤い葉っぱ?それしか出てこなかったんですか?」
「たぶん、赤い葉っぱが落ちてきてた、気がした…」
「へえ、赤い葉っぱ…確かに変な夢ですね」
「でしょ?」
私とニコルは顔を見合わせて笑った。
気がつくと目の前にはもう食堂があり、私とニコルは食堂に入って行く。
「なまえ!?今日はかなり早いじゃん、気合入ってるねえ」
食堂に入るとディアッカが話し掛けてきた。その隣にはアスランとイザークがいる。
「バーカ、今日はたまたま早く起きたんだよ」
私はニコルと隣同士でディアッカ達と向かい合わせで座った。
今日の朝食はカレー。このごろカレー多くない?なんて事を考えながらカレーを食べていく。
「なまえ、今日は戦闘があるみたいだぞ」
ふいにアスランが話し掛けてきた。
「ほんと?早起きしてよかったー、また遅れたら今度こそ隊長に殴られそうだったし」
「ふん!貴様は一回殴られた方がいいんじゃないか?」
イザークはニヤリと笑い私を見下しながらカレーを食べている。
「はあ?髪にカレー食べさせてるやつになんか言われたくないよ」
「な、何!?」
「ぷっ!」
慌てて髪を拭くイザークを見てアスラン達は必死に笑いを堪えていた。
「もう少し落ち着いて食べたら?」
「き、貴様ー!!」
顔を真っ赤にして私に襲いかかろうとするイザークを笑いを堪えながらアスラン達が止める。イザークはほんといじりがいあるなあ。
その時、戦闘用意の予鈴が鳴った。
私達はすぐ様パイロットスーツに着替えて自分達のMSの所に向かう。地球軍を撃破せよ、それが今回の任務。
アスランとディアッカとニコルが自分達のMSに乗るのを見て私もあとに続いた。私がコックピットに乗り込もうとした時。
「なまえ!」
背後から手を引っ張られた。
後ろを振り返るとイザークが居て真剣な表情をしている。
「何、まだカレーのこと気にしてんの?」
「ち、違う!」
「じゃあ何?」
瞬間、少しだけ私の手を握るイザークの手に力が入ったのがわかった。
「死ぬなよ」
あまりにも真剣な顔で、いつもなら絶対言わないセリフを言うもんだから、私の思考は一時ストップしてしまった。
「…イザーク、いきなりどうしたの?戦闘なんていつもの事じゃん」
私が不審そうに聞くとイザークは今日、変な夢を見たと言った。
「変な夢?」
「ああ、落ちてくる赤い葉っぱのところにお前が立っていた夢だ」
私が?赤い葉っぱの落ちてくる場所に?
赤い葉っぱのとこだけは私と同じだけど、私の夢には私は出てこなかった。まさかイザークも私と同じような夢を見ていたなんて。
「…へえ、変な夢だね。何?まさか心配してくれてたの?」
私がニヤリと笑いながらイザークに顔を近づけると、イザークは一瞬で顔を真っ赤にする。
「だ、誰が貴様の心配なんて!もういい!さっさと行くぞ!!」
顔を真っ赤にしながら急いで私に背中を向けたイザーク。
「心配しなくても私は死なないから」
頭で考えるより先に口が勝手に動いていた。イザークは少しだけ反応してそんな事言われなくても知っている!!と叫び自分のMSのトコに行く。私も自分の機体に入った。
赤い、赤い葉っぱの真ん中へ。
「オラァァ!!」
飛び交うビームを避けて敵に攻撃を与える。今の私達には理性なんてそんなに無くて、ただ目の前に居る敵を倒す事に全神経を使っていた。
激戦の中で見覚えのある機体が3機。確かレイダー、フォビドゥン、カラミティ。明らかにあの3機が地球軍の最重要戦力。私は迷わず3機が居る場所に飛び込んで行く。その3機の所にはイザークとアスランが居て、私は残りの1機のレイダーの相手をする事にした。
「ハアァァ!撃滅!!」
私の相手のレイダーは無茶苦茶な攻撃を仕掛けてくる。やっぱり一筋縄じゃ行かない。そんな事を思っているとレイダーにカラミティの攻撃が当たりそうになった。
「うわ!オルガてめえ!!」
「ちんたらしてんじゃねえよ!バーカ!」
「うるせえ!!バカはてめえだ!ブワァーカ!!」
今度はレイダーの攻撃が味方のフォビドゥンに当たりそうになる。
「…クロト、てめえ」
「邪魔なんだよ!バカシャニ!!」
「邪魔はてめえだろーが!!」
なんなのこいつら。味方同士で攻撃を繰り返す光景を私とイザークとアスランはポカンとして見ていた。味方じゃないの?わけわかんない。
痺れを切らした私が攻撃を仕掛けようとした瞬間、3機がいきなり動きを止めた。
「う、あぁあぁぁ」
「ちっ、時間切れかよ!!」
「くっそー!!!」
3機はおぼつかない足取りでその場を去ろうとしている。なんかよくわかんないけど殺るなら今しか無い。私はすかさず3機に向かってビームを放つ。
カラミティとフォビドゥンには当たらなかったがカラミティを乗せて飛んでいるレイダーの機体には少しだけ当たった。
「くっ、あの野郎!!」
レイダーの一瞬の攻撃に私は気付かずレイダーの攻撃は見事に私の機体を壊した。
「うあああ!!」
「なまえー!!」
アスランとイザークの声が聞こえる。じわりとした痛みが体中に走った。どんどん空から遠ざかっていく。私の機体はそのまま海の中へと沈んでいった。
落下している時、イザークの機体が私の機体の手をとろうと手を伸ばしていたのを覚えている。結局、掴む事はできなかったけど。
必死に叫ぶイザークの声。最後に聞いたイザークの声だった。薄れる意識の中、海底に沈んでいきながら赤い、赤い葉っぱが私に降り注ぐ。夢で見たものと同じ。ただ違うのは、私がいる事。イザークの見た夢、まさにその通り。
赤い葉っぱが舞散る中で、私はゆっくりと目を閉じた。