今日は戦闘が無く、私は一歩も自室から出ないと決めていた。
朝になったのが分かる。いつもならとっくにシャワーを浴びて、オルガ達と朝食を食べに行っている時間帯。でも今日は、体がだるくて動けない。目を開けようとしても開かない。閉じたままの私の目には、真っ暗な暗闇が広がっている。先日の戦闘での出来事が頭の奥から離れない。気がつくと、私の両手は震えていた。自分のしたことへの恐怖からだろうか。とにかく怖い、とにかく疲れた。
閉じていた目をそのままに、また眠りにつこうとする私の耳にそれを妨げる機械音が。うるさい、今日は戦闘は無いって言ってたのに。
仕方なく重い瞼を開き無線に近づく。無線をかけてきたのはアズラエルだった。

「なまえさん?今日は随分遅い起床ですねえ、先日の戦闘で疲れましたか?」
「……」
「まあ今日は戦闘がありませんからゆっくり休んでくださいね、それで用件なのですが、」

アズラエルが何か喋ってる。何か言葉を言っているのは感じる。感じるのに、言われている内容が分からない。何も、聞こえない。

「……聞いていますか、なまえさん」

明らかに声のトーンが変わったアズラエルの声。私はハッとし、ちゃんと聞いてると呟く。

「まあいいでしょう、それじゃあさっき言った通り、今すぐ僕の部屋に来て下さいね」

それだけ言ってアズラエルは乱暴に無線を切った。私はぼーっとしたままゆっくりとそこから動き、ベッドに腰かける。何も考えられない頭で、無意識にシャワーを浴びようと行動していた。のろのろと着替えの準備をしバスルームへ移動する。私はシャワーの温度を5度程下げ、ぼーっとした脳を動かすようにシャワーを浴び続けた。

私がアズラエルの部屋に来たときには、無線がかかってきた時からすでに1時間は経っていた。冷たいシャワーを浴びたことで起きたときよりは確実に意識がはっきりしている。私は目の前にあるアズラエルの自室に足を踏み入れた。
なんだ、居ないじゃん。中はガランとしていてアズラエルの姿はどこにも無かった。まあ呼ばれた時間からかなり経ってるし、仕方ないかとため息をつく。私はすぐそばにあったソファへ身を沈めた。
静まり返っている室内をぐるりと見渡す。なぜだか、山積みになっている書類に目が止まった。あまり働かない脳でゆっくりそれに向かって歩を進める。その書類には生体CPUとタイトルに書かれてあった。なんだか聞いた事がある気がする。一枚、その書類をめくる。そこにはクロトの写真とともに、研究結果のようなものが事細かに書かれてあった。

クロト・ブエル
ステージ3
個人データ無し

ステージ3?
疑問に思いつつも次のページをめくった。

オルガ・サブナック
ステージ2
個人データ無し

シャニ・アンドラス
ステージ4
個人データ無し

これは、一体。まさか。

「おやおや、今頃何しに来たんですかねえ、君は」

いきなりの声に私は声を出すことも忘れ、すぐにその書類を手放す。
いつの間に入って来たのか、アズラエルはソファに手をつき私をじっと見ていた。

「だめですよ、勝手に人のものを見ちゃ」
「……」
「まったく、すみませんも言えないんですか?あなたは」

アズラエルは口元を歪ませ、私がさっきまで持っていた書類を取り上げた。

「まあ、こんなもの今更見たって意味ないですけどねえ」
「…あいつらは」
「はい?」
「あいつらは、なに」

あいつらは、一体。

「ただの戦争兵器ですよ」

そう言い放ったアズラエルの言葉は、覚醒しきれていない私の脳を大きく揺さぶった。

「ここにも書いてありますよね?あの子達は生体CPU、即ち僕たち地球連合の大事な戦争兵器なんですよ、あれでも一応はね。このステージというのは薬の段階、レベルのことを指しているんです」

ペラペラとどうでもいい事のように話し始めるアズラエルは、持っていた書類を無造作に書類の山へと戻す。

「まあそんなことはどうでもいいですけどね、君はもう帰っていいですよ」

書類に目を通し始めるアズラエルに、私は何も言わずにゆっくりと部屋から出て行った。

生体CPU。ただの戦争兵器。そうか、あいつらは人間じゃなく、ただの兵器なんだ。だから死んでも別に気にしない。人間じゃないから。なんなのよ、それ。ああもう痛い。痛い痛い。
まだ完治していないアズラエルから受けた傷をおさえ、その場に座り込む。きつく目を閉じ痛みに耐えた。
かつての仲間を殺した私。仲間を戦争兵器だと言うあの男。理由もなくただただ敵を殺すあいつら。戦争に勝つために私を殺そうとしているザフトの連中。
痛い、いたい。疲れた、もう疲れたよ。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -