「なまえさん、君の活躍期待していますからね」

アズラエルの言葉がいやに耳に残る。私達は一斉に発進した。
ゆっくりとザフトに向かっていく。私は決めていた、イザークを見つけたらすぐに殺しに行こうと。
頭は冷静さを保っているのに、私の心臓はありえないくらい緊張していた。

「来たぞ!」
「うっひょー!強いやつはっけーん!」
「クロトウザッ、あれはオレの獲物だし」
「てめえはそこらの雑魚でも殺ってろよ!ブワァーカ!」

アスランの機体を見つけた瞬間、クロトとシャニはそれに向かって行った。オルガは陸に落とされている。目を凝らすと、アスランの後ろにイザークの機体がある事が分かった。私はすぐにイザークに近づき攻撃を仕掛ける。イザークもそれに答えるように私に攻撃を仕掛けてきた。
イザークはやっぱり強い、敵になるとそれがよくわかる。私は歯を食いしばった。それと同時に、私の中で何かが弾けた。頭が真っ白になって心臓の音がリアルに聞こえる。

「う、ああああ!!!」
「くっ!」

私は無我夢中で目の前の機体に攻撃を仕掛けた。
イザークの攻撃を避け、素早くイザークの背後に回る。それに反応しきれていないイザークの機体をいとも簡単に貫いた。

「チッ!」

私の攻撃はイザークの機体の腕を貫いただけ。その瞬間、今度はイザークが私にビームを放つ。私はそれを避け、またイザークとの攻防が始まった。
もう、なまえと呼んではくれないイザークを。もう、会うことができないイザークを。一刻も早く殺してしまいたかった。

「あぶねえ!!」

オルガの声にハッとして振り返る。気付くのが遅すぎた。ディアッカから放たれたビームが私の機体に当たり、あの時のように破壊する。
私はディアッカに向かってビームを放った。狙いも何もつけていなかったから当然それは的を外し、陸に当たる。急がないと、そう思った瞬間、私の目の前が真っ黒になった。
これは、まさか。赤い、赤い葉っぱ。私の体に何枚も何枚も張り付いて。それは、まるで。

「く、あ!」

ビキッとした強い痛みが体中を駆け巡る。それと同時に目の前はいつもの光景に戻り、何度も何度も頭で何かが弾けた。痛い、苦しい。

「う、あぁあ」

体中からいやな冷や汗が溢れ出して来る。頭が痛くて割れそうで。いつもの薬の副作用とは違うことが理解できた。

「なまえ…!」

イザーク?
虚ろな意識の中、私の手を引いて撤退していったオルガ。イザークはただじっと、その光景を見ているだけだった。


「……なまえさん、君には失望しましたよ」

それぞれのベッドで苦しむ中、アズラエルは私のベッドのそばに立ち、ため息をついた。

「敵の機体を半壊させた事はいいですよ?しかし僕が君にしてもらいたいことは、この程度の事ではないんですよねえ」
「……」
「…コーディネーターと言えど、所詮は人間ですか」

こいつはどこまでコーディネーターを化け物だと思っていたんだろう。
私は視線をそらした。

「なまえさん、僕言いましたよね?また機体を壊すような真似をしたときはお仕置きだけではすみませんからね、と」
「……」
「本当に君は、僕をイラつかせるのがお上手なようで」

アズラエルの顔が一層歪む。
その瞬間、アズラエルは私を仰向けにしてまたがってきた。

「お前はコーディネーターだろ!?化け物のくせになんで倒せないんだよ!ええ!?」

アズラエルは思いっきり私の顔を殴りつけてくる。微かに見えるアズラエルの顔は怒り狂っていた。

「なんで、なんで!僕の思い通りに動かないんだよ!お前まだあいつらに仲間意識持ってんのかァ!?ふざけるな!コーディネーターの分際で、化け物の分際で!!」

アズラエルは殴る手を休めない。私の顔や腹などを殴りつけては怒鳴りつける。

「まだあいつらを仲間だと思っているなら、僕がそれを消してあげましょう!」

最後に一発、私の頬を殴りつけアズラエルの手は止まった。口の中に広がる血の味。薬の副作用と体の痛みが意識を遠のかせた。
アズラエルはもうほとんど動けない状態の私を、研究員に指示をだしどこかに移動させる。

「なまえ、」

ふいに聞こえた、小さな声。動かない顔のかわりに目だけ動かすと、薬の副作用に苦しんでいる3人が私を見つめていた。
遠のく意識の中、最後に聞こえたのは君の声。

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