先日の戦闘でやっと理解した。私はもう、彼らの仲間では無いのだと。
目を開くと私は自室にいた。目を閉じるたびに思い出す、先日の戦闘。冷たい仲間達の視線。私の言葉に、イザークは何も言ってはくれなかった。

「……バカ」

誰が?私が?
自問自答を繰り返すも、結果はすべて同じ。私は本当の仲間を無くした。当たり前か、ここは戦場なんだし。心に迷いのあるやつは死ぬ。きっと、クルーゼ隊長自らの命令だろう。私を殺せ、と。

「…イザーク」

やっぱりあんたも立派な軍人。命令されたら私だってそうするしね。これは最初から明らかだったこと。それが、戦争。
目を閉じるとうっすらと浮かぶイザークの顔。
もう、あやふやであまり思い出せない。

「イザーク」

あんたも私を殺すよね。あんたは忠実な軍人だから。たとえ、昔の仲間だとしてもそれは過去に過ぎない。一瞬でも生にしがみつこうとした私がバカだった。
イザーク、アスラン、ニコル、ディアッカ、クルーゼ隊長。私は裏切り者です。たった今から、あなた達とは敵同士になります。
イザーク、あんたは私が殺す。
だから、あんたも私を殺して。それだけが、今の私を繋ぎとめる唯一のモノ。


「ねえ、射撃のトレーニング場ってどこ?」

いつも3人が居る部屋に入るなり、私は誰に聞くわけでもなく声を発した。

「なにお前、銃でオレら殺す気?」
「ねえオルガ、場所教えてくれない?」
「こっちだ」
「僕を無視すんじゃねー!」

ぎゃあぎゃあうるさいクロトを無視して、私とオルガは射撃場へと移動する。
射撃場はザフトとあまり変わり無いように思えた。

「お前なんかにクリアできっかよ!ブワァーカ!」

いつの間にかクロトとシャニも来ていて、私は眉間にシワを寄せながらも銃を構える。スタートボタンを押すと同時に、瞬間的に出てくるターゲットの頭を的確に撃ちぬいていった。
すべて撃ち終わり銃を降ろすと、さっきまでうるさかったクロトが口をあんぐり開けてバカ面をしている。

「…なにその顔」
「て、てめー!反則技使いやがったな!」
「クロトお前、なまえに完全に負けてんじゃん、お前正確に頭撃ち抜くことできねえし」
「クロト、ダッサ」
「うっせー!撃滅すんぞてめえら!」
「ちょっと、そこのガキ」

ピクリ。
私の言葉に反応したクロトは、額に青筋を立てながら私を睨みつける。

「私と勝負しない?」

意地悪く笑う私に、クロトも負けじと口角を上げた。

「……上等だよてめえ、あとで吠え面かいたって僕は知らないよ?」
「それはあんたでしょ?」
「マジで抹殺…!」

本気でキレたのか、クロトは眉を吊り上げすぐに銃を構える。
一斉にスタートをして、頭部に当たった弾の数を確かめた。

「なーんだ、私の圧勝じゃん」

クロトはほとんどターゲットの頭部に弾を当てられずにいた。

「クロト弱すぎ。オルガかシャニ、どっちか勝負しない?」
「……待てよ」

床に手をつきうなだれていたクロトがゆらりと立ち上がる。クロトの目は完全に座っていた。

「勝ち逃げとか卑怯じゃね?次はあれで僕と勝負してくんないとさあ」
「あれ?」

クロトが指差した先には、一発でも弾が当たればすぐゲームオーバーのゲームが。
うわ、あれ苦手。

「あれはちょっと、」
「何?まさか逃げるの?逃げる気だよねえ?自分が出来ないからって逃げるなんてマジで軍人のやる事じゃないよなあ」

挑発しているのか、ニヤニヤ笑いながら私に詰めよるクロト。あいにく、私はそんな軽い挑発には乗らないんでね。
さっさと無視して行こうとする私の肩を咄嗟に掴むオルガ。

「なに?」
「ああなったクロトは止められねえ」
「じゃあ、あんたがあいつの相手すれば、」
「オレもなまえのプレイしてる姿見たいなあ」

ぬっと背後から姿を現したシャニは不敵な笑みを浮かべ、私の背中を押す。

「お、たまにはいい事すんじゃねーかシャニ!」
「別にお前に協力したわけじゃないし」

べーっと舌を出しながらシャニは私にコントローラーを手渡す。
隣に座ったクロトは楽しそうにニヤリと笑った。

「アッハハハハー!過去最強のゲーマーと呼ばれる僕の実力をナメんじゃねー!!」

狂ったようにプレイしだすクロトの手は、ゲームをやり込んでるだけにとてつもなく速い。ほら早くと促すシャニに私はため息をついてミッションを開始した。
ミッション内容はクロトと同じで、かつて仲間だったやつを殺すこと。クロトより先に殺すことで私は勝ちとなる。

「オラオラオラー!てめえらまとめて瞬殺!」
「クロトうっせーよ!少しは黙りやがれ!」
「うざってえ!撃滅!抹殺!死ねー!!」
「…だめだこいつ」

額を手で覆い、オルガはため息を零した。よくこんなにうるさくしながらプレイできるよね。私は少しイライラしながらも、難なく敵を倒して行った。
かつての仲間を殺すミッション。何これ、なんか私が殺されるみたいじゃん。

「見つけたぜー!!」

クロトの声にハッとすると、クロトのキャラクターは私と挟むように立っていた。
私とクロトの間には、ミッションで殺すべき敵がいた。

「死ねー!!!」

クロトの声が一際響く。それと同時に、クロトは敵を撃ち殺した。

「アッハハハ!ほーら見ろ!ゲームじゃ僕のほうが上だぜえ!?威張るなら僕を倒してからにしろっつーの!ブワァーカ!!」

かなり嬉しかったのか、クロトは笑うことをやめない。
私は少し滲み出ていた額の汗をふき取った。

「クロトうざーい」
「は!?シャニてめえ!」
「ゲームで勝ったぐらいでいい気になんなよ、クロト」
「オルガ!てめえらだって僕に勝てないくせにでしゃばんじゃねえよ!」
「オレは現実でクロトより戦闘能力あるし」
「オレも」
「てめえら…!」

バチバチと3人で睨み合いが続いている中、私はひとりゲームの画面を見つめていた。画面には大きく敗者の文字が。
なんで私はあの時、敵を殺さなかったの。クロトより先に敵を殺せる自信はあった。でも、殺せなかった。
だん!と台を叩いて立ち上がる。驚いて私を見つめる3人を睨みつけながら口を開いた。

「……次、オルガ」
「は?」
「私とこれ勝負してよ」
「なんでオレが、」
「オルガに勝ったら次はシャニ、シャニにも勝ったら最後はそこのうるさいやつをぶっ潰す」
「は!?」

私の言葉にぽかんとする3人を無視して、私は無理矢理オルガを席に座らせた。

「手抜いたら殴るよ」
「ったく、めんどくせえ」

それから私達は7時間以上もゲームをやった。結局、ゲーマーのクロトには勝てなかったけど。最初の1回以外、私はすべて敵に銃を放っていた。
これで大丈夫。ちゃんと、あいつを殺せる。

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